小説



クロスオーバーです。
忍のたまごと海賊さんです。

1 エース幼少→忍たま(エース視点)
  (ギザギザナイフのような鋭さのエース)

2 小平太とエース(エース視点)


3 小平太から見たエース(小平太視点)


4 白髭海賊団エース→成長忍たま(エース視点)
  (マルコさんも一緒)

5 きり丸とエース(きり丸視点)


6 成長は組と再開しました(エース視点)


7 成長は組が頂上決戦前のモビーデックへ。(庄視点)
  

8 司令塔庄左ヱ門(庄視点)


9 プロ忍六年生だって弟の危機には参加しちゃうよ!原作変(エース視点) 


完璧に趣味に走った結果となっております。
サッチにも白髭にもエースにも先に逝かれてしまったマルコがどうしてもやるせなくて書いてみただけのもの。
そのわりにマルコが少ないのは気のせいです。
久しぶりに忍たまを書いたので口調が定まらない。

海賊ではエース、マルコ
忍たまでは小平太、きり丸、庄
贔屓気味。
あと気づいたら帰ったり来たりしてます。
あまり深く考えちゃだめだと思ってます。


うわ、だめ、無理、な人は、このページを開いたことを心の箱にそっとしまって会計委員の皆さんと匍匐前進で逃げてください。
もちろんいつものようにクイック&ターンをしてバックステップでも大丈夫です。

















幼少エース









いらない、いらない、俺なんか、いらない

どうしてこの世界に生まれてしまったのか

どうしてこの世界で生きているのか


理解できない、知りたくもない、もう、全てを壊してしまいたい。



そんなときに出会った二人。

俺の大事な家族で、友で、親友で、仲間で、兄弟で、

俺の全てを助けてくれた、俺にとってなくてはならない二人






その二人に出会えたことこそが、俺の存在理由







「どこだ、ここ・・・?」


知らぬ世界

見たことのない景色、


どうして俺はこんな場所にいる?


先ほどまで後ろを走っていた二人はどこに行った?



何で俺は一人なんだ?




ぞくり、背中に走った悪寒



あたりの気配を探れども、望む二人の姿は見えず。



「サボ!!ルフィ!!」


呼んだ名前に、返事はない。



だめだ、これは、だめだ。



足に力を入れて、今まで進んできた方向に足を向ける。

戻らなければ、あの場所に、二人のそばに、俺の居場所に


「っ?!」


飛び出した茂みの先、見たことのない服を、まとった、数人の少年が、いた。

「え!?」

「乱太郎!」


あたりそうになったのを、身をよじって回避する。

何とか着地してそちらを振り返れば、そこには全部で11の少年が居て。


俺と同じ年くらいの、少年たちが居て。


目があったその瞬間、彼ら、10人は一斉に何かを懐から出して、構えた。



ああ、ここでも、一緒、か


武器を構えたというならば、容赦はしない。


俺がぶつかりそうになったその人物だけが、惚けたようにこちらを見ていたけれど、そんなの、どうでもよくて。



「っ、きりちゃん!」

「っ!」

紺に近い髪を持つそいつに、息を詰めて、飛びかかる。

誰かの名前なんて、認識する、暇もなく。

手に持ったままだった鉄パイプをそのまま、ふりあげて、

「金吾!」

「まかせて!」

金色の前髪を持った少年に防がれる。

そいつは、思った以上にきれいな立ち筋で、俺に刃を向けるけれど、


俺の力の方が、上で。


「わっ!」

押しやって、そのまま鉄パイプを、振り降ろす、その瞬間、













「私たちの大事な後輩に、何、してるんだ?」










ぞくりと体に走った寒気


あわててとった距離。

今まで居たその場所に刺さるのは一つの刃。


「先輩!!」

同時に降り立つ六つの緑。

それは皆が皆、鋭い眼光を携えて、俺を、射ぬく


俺に刃を落とした男の瞳が、愉しそうに、揺らめいた。


「っ、」


瞬時、向かってきたその男をとっさによけて、ついで振り降ろされそうになった刃を鉄パイプで防ぐ。

きん。という鋭い音が、あたりに響いて、次に、ボカリ、と何かをたたく音が広がった。


何事かとそちらを見れば俺に刃を向けていた男が地面に倒れ伏している。

その後ろにはびっくりするくらい綺麗な髪をなびかせる男、・・・・・・・・・女?がいて。


「小平太、よく見ろ。」

「・・・あれ?子供?」


俺をしっかりと視界に入れた瞬間、小平太と呼ばれた男の表情は一転した。


「怪我してない??」


近づいてきた薄茶色の髪を持った男がそう尋ねる。

伸ばされた手をとっさに避ければ困ったような表情を返されて、なんだかこっちが悪いことをしている気分になってくる。


「すまん!私たちの後輩に何かしたのかと思って思わず攻撃してしまった!」


にかり、それはそれはいい笑顔で小平太はそう叫んだ。

なんという理不尽。


「お前たち、怪我は?」

「大丈夫です!食満先輩!」

「ありがとうございます!」





けれども、守られる存在である少年たちが、ひどく、まぶしい存在に思えて。



ぐっ、と手のひらを握りしめて、踵を返す。

探さなければ、俺が俺でいられるあの場所を。



「・・・なんだよ。」

「おい、どこにいく。」


足を踏み出したその瞬間、捕まれた腕。

振り向けばそこには目つきの悪い男と顔に傷を持つ男が俺の手をつかんでいて。

「・・・人探し。」

答えたのに、手を離される気配は、なくて。


「どんな奴だ。」


再び問われた質問に、簡単に答える気はなかったのに。

その人見に宿る、久しく見ることのなかったいたわりの色に、口は勝手に言葉を紡いだ。

「なあ、帽子をかぶった俺と同じくらいの子供、見てねえか?」


その言葉に目つきの悪い男はしばし考えて、そうしてつぶやいた。


「残念だが見てねえな。」


ならばここにいる必要性は感じない。

つかまれた腕を振り払い一歩足を踏み出す。


が、ゆるり、次は前に回られて。

先ほど女かと思ったがその声の高さは体格はどう見ても男で。


「人探しは私たちの専門でもある。」


切れ目の瞳が俺を、射抜く。


「どうだ、頼ってみないか?」


それはそれは、まるで面白いおもちゃを見つけたかのように、彼は笑う。



頼る、なんて、俺は知らない。





「お前はまだ庇護されるべき存在だろう?」





そんなこと知らない、そんな時期なかった。



勝手なことを言うな。






「俺は今まで一人で生きてきた。これからも一人で生きていける。」




そんな庇護されるような弱い存在ではないんだ。







グッと睨みつけた俺の視線をなんでもないように男たちは受け流す。






ぐぎゅる



と、突如なる俺の腹。

そういえば二人と離れるその前は食べ物を探していて。

だからこのタイミングでなるのもおかしくはないのだが、それでもしかし、この状態でなってほしくはなかった。



「おなか減ってるの?」


ふくよかな水色が問う。

それから視線をそらして、どうやってこの空間から逃げるかと考える、が。






「っなんっ!?」



ぶわり、突然変わる視界。

目の前にはなぜか緑色。


「ま、細かいことは気にするな、だ!さっさと戻って食堂のおばちゃんのご飯を食べるぞ!」


担ぎ上げられた体はあっさりと彼の肩に収まって。


抵抗しようとした行動は、彼の腕に防がれて。


開こうとした口は突然のスピードにふさがずを得なくなって。






いったいどういうことだ。




あれよあれよと過ぎ去る景色に呆然と、ルフィとサボの姿を探した。



















幼少エース










「エース、何してるんだ?」


小平太はにかり、といつものように明るく笑う。

その笑みは、ひどくあったかくなるようなもので。

ぐしゃり、撫でられた髪。

そのぬくもりは、素直に、愛しいと、思えた。



「エースは私たちにとって弟みたいだ。」


ぐしゃぐしゃになった髪の下、思わず赤くなる顔を隠して、小平太の言葉を聞き流す。


それは、とても、うれしい。

俺を、まるで家族のように思ってくれることが。



でも、同時に悲しい。

俺は、世界で一番ひどい犯罪者の子供だから。



「俺は生まれてこない方がよかったんだ。」


小平太の手を振り払って。思わず漏らしたその言葉に、ふわり、小平太の瞳が和らぐ。

「そんなこと、いうもんじゃないぞ。」




何も知らないくせに。




思わず叫んだその言葉に、小平太の表情はさらに柔らかくなる。

「ああ。私はお前のことなど何も知らない。けどな、」



「お前が生まれてきてくれたからこそ、私はお前に、エースに会うことができたんだ。それは、私にとってかけがえのない出会いだった。」


そんなこと、あの世界では聞いたこともなかったのに。


俺が生まれてきたことが、小平太、あんたの幸せにつながったのか?


そうだとしたら、俺は、少し、ほんの少しだけだけど、生まれてきてよかったかも知れないって、思えるかも知れない。



「エース、海賊になるんだろう?」


少しだけ、話した俺の夢。

それを小平太は覚えてくれていて。


まるで俺に存在してもいいと、言ってくれているみたいで、どうしようもなく、うれしくなった。


「エースならきっといい船長になれるな。俺が保証する。」


ゆるり、あった視線。

愛しくて仕方がないとでもいうように、その瞳はやわらかさを帯びていて。




「私の未来は、この学園で学ぶ皆の未来は、明るいものではないけど。お前はまっすぐに太陽に向かって生きてほしい。」




太陽みたいに、ひまわりみたいに、まぶしい笑みで、小平太は日陰を生きると鮮やかに笑う。



俺には生きろと、言うくせに、自分は自ら戦地へ赴く。






なんで、この学園の人たちは、こんなにも優しいのに、



こんなにも悲しいんだろうか。








小平太、俺だってな、お前に生きていてほしいんだ。








きっとその言葉は、口にしてはいけない言葉。










小平太視点














その少年は、ひどく荒んだ瞳をしていた。

すべてに絶望して、すべてを信じることをせず。



だから、愛してやりたいと思ったんだ。



いずれこの場所から消えてしまうのならば、それまでの短い時間を、どうか愛されていると知ってほしかったんだ。


後輩たちへ向けるのとは違う、その感情。


一年生たちは、この学園にいる彼らはいずれ、心を殺すことをしなくてはならない。

けれども、この少年は違うから。

私たちの未来は黒く塗りつぶされたものでしかないけれど、この少年の未来はまだまっさらな色をしているのだから。




「エース」


名前を呼べば不機嫌そうな顔をして振り向いて見せる。

それでもその表情に隠された喜びはじわり、にじんでいて。


「・・・これをやる。」

長次に差し出されたボーロに一度目を煌かせて、でもすぐにそれを隠してそっぽを向く。

「くれるってんならもらってやる。」

人から物をもらう、その行動になれていないのだろう。

初めのころは本当に戸惑って、警戒を見せていた。


「そのまま姿勢を落とせ!」

「そんなんじゃ俺らから一本はとれねえぞ!」

「っ、もう一回だ!」

身軽な体から繰り出される多彩な攻撃は、時折私たちをも翻弄する。

それでもさらに上を目指すエースの姿勢は好ましく、文次郎が、留三郎がよく相手をしていて。


「ほら、ここもけがしてる!」

伊作の手当てをどこかくすぐったそうに、申し訳なさそうに、うろうろと視線をさまよわせて受けるその様子は見ていてほほえましく。

終わった後、本当に、本当に小さな声でありがとうと呟かれればもうすべて許してしまえる気がして。



「ほら、これをこうすればいい。」

仙蔵が何かを教えるたびに、それを必死に吸収して、できた瞬間の小さな笑顔はとてもとても温かいものだった。

そんな小さなことが、私たちの心をいやしてくれた。


「エース。」

ぐしゃり、そのくせ毛の髪を撫でてやれば一度泣きそうに表情をゆがめる。

そんなことをされる資格はないと、される意味が分からないとでもいうように、ぐっと唇をかみしめて、どうすればいいのかと佇む。

おとなしく、甘えればいいのに、それはこの少年にとって許されることではないかのように。

だからこそ、私はもう一度手を伸ばすのだ。

その体を抱きしめて、ぎゅうぎゅうと逃がさぬように力を込める。



お前は愛されていいのだと。

私たちはお前を愛しているのだと。











暗い世界に現れた光。


私たちにとってあるはずのなかった出会い。



それは、これから先の闇をまぶしく照らすかのよう。








エース、お前は愛されていいんだ。

必要とされているのだ。




少なくともお前が存在していてくれたことで、私たちに与えられた影響は大きい。




ころころと転げまわる一年生たちを、うらやましそうに、眺める姿。

お前もそれに混じっていいのだと。

お前もまだ、許される年頃なのだと。



元の世界に戻ってしまえば、そこがどんなところなのか、私たちにはわからない。




けれども、今だけは、今この時だけは、お前は許される存在なのだと。







エース、エース、どうか気づいてほしい。










お前は愛されるために生まれてきたのだと。




























白髭エース









「ここ、どこだよい。」



マルコの第一声はそれはそれはあたりまえななもんだった。

けども俺は、この空気を、この世界を、知っていて。


懐かしいと、感じた。






__エース___










小さなころ、まだあの二人を得て間もないころ、気が付けば存在していた世界。



数日の滞在しかしなかったけれど、それでも、大事な友を、俺を弟と呼んでくれる人たちを手に入れた、そんな世界。



愛されていると、愛されていいのだと、教えてくれたこの世界。










「エース。ここにいろい。ちょっと見てくる。」


俺が言葉を発する前に、ふわり、蒼を纏ってマルコは空へと向かう。

その姿は、この世界でもとてもとても美しいもので。

海に嫌われ、蒼を感じることのできない俺たちは、別の青に焦がれて。


それを自由自在に飛び回るその姿に、素直に焦がれるものだ。




「っよいっ!?」



突如走った気配。

向かうのはマルコ。

飛んでいったそれは、あっさりとマルコを貫通して。

その衝撃でマルコは地面へと投げ出される。



「マルコ!」


悪魔の実を食べていたとしても、それでも痛みは走るわけで。

しかもこの世界は俺たちの世界ではない。

それがどのように影響するのか、俺にはわからない。


「よしっ!これを売れば・・・うへへへへっ!」


蒼が落ちた方向へと走っていれば聞こえてきた声。


それは聞いたことのあるもので。




「きり丸。それ、俺の家族なんだ。売らないでいてくれると嬉しいんだがな。」


「へ?・・・エース、か?」





呼んだ名前、それはいつぶりに口にしただろうか。

記憶の中の姿よりもずっと大きく成長したその子供は、釣り目の瞳を大きく見開いて、確かに俺の名前を呼んだ。






























きり丸視点










蒼い鳥



それを売ればいくらになるだろうか。


けれどもそれよりも、奇跡みたいにきれいな色を、手にしたいとそう思ってしまったんだ。



六年間、長いようで短いその時間を、俺はこの学園で過ごして。


その間に手に入れた知識や情報は生半可なものではなく。


目の前のそれを生け捕りにする方法などいくらでもあった。



落とした蒼を目に入れた瞬間、なぜか泣きたくて仕方がなくなって。

似ても似つかなかったというのに、記憶の中、なぜか浮かんだのは幼き頃少しだけ共にいたエースの姿。




だからこそ驚いたんだ。




突然現れたエースに




この蒼い鳥を、家族だと笑って告げたエースに。







初めて会ったエースの第一印象は、


昔の俺と同じ


そんなものだった。


この学園に入る前。

庇護してくれる存在は当の昔にいなくなり。

自分以外信じることができない、そんな世界。

俺にとって俺を守るのは俺だけしかなくて。


だからこそ、力を手に入れるためにこの学園に足を踏み入れた。


この学園で得たものは小さいようで大きく、かけがえのないものだった。



頼ってもいいのだと、信じてもいいのだと。


甘えてもいいのだと、弱さを見せてもいいのだと



すべてを許してくれる存在に出会えた。



友というかけがえのない存在を得て

先生という家族にも似た存在を見つけて

先輩という庇護してくれる存在を知った。






俺はこの学園でにはいって初めてこの世界を愛しいと思えたんだ。






だからこそ、エースのことを他人事とは思えなかった。






俺のように何も信じられない、頼れない瞳を持って。

すべてに刃を向けなければ生きれないのだというかのように。





気付いてほしかった。


先輩に庇護されることに戸惑うエースに


知ってほしかった


同い年の存在に頼られ少しだけ笑うエースに


感じてほしかった


その実に向けられるたくさんの愛情を








ほかの世界から来たと、信じられない言葉を聞いたときだって、信じたいと思わせる君に




「俺の大事な家族なんだ」




その存在はエースにとってかけがえのないものなんだろう。

その存在はエースの世界を変えてくれたものなんだろう。





「マルコさん、だっけ?」



乱太郎たちとの久しぶりの再会に笑いあうエース。

それを温かく見守るマルコさん。


彼を呼べばその眠たげな瞳がこちらに向けられて。




「エースの、家族になってくれて、ありがとう。」



俺にとって大事な大事な友達の一人。


俺たちがこれから先、否、今までも犯した罪を丸ごと受け止めてくれるくらいの懐を持ったエースだからこそ。


幸せになってほしかった。


エースが、ああやって笑ってることが、彼の幸せの、何よりの証拠。





「___こっちこそ、感謝するよい。」




俺の大事な弟を、愛してくれて。



いつくしまれていると、愛されていると、気づける言葉、


存在を肯定してくれる存在






それが、エースの世界にも存在していることが、ただ、うれしかった。























白髭エース











「エース!」




あの頃俺と同じ年だった一年生。

俺のほうが先に成長してしまったようだけれど、それでも、こちらを見るやさしい瞳は変わらずに。

しっかりと俺の名前を呼んでくれた。

水色だった装束は、いつの間にか深い深い、緑の色に。

それは、俺にとってこの世界の兄たちが身に着けていた色。


つまり、彼らも黒く塗りつぶされた世界へと足を踏み入れる直前で。



やさしいだけの瞳ではなくなった。

乱太郎

その手は、あまたの人を助け、そして、同時にあまたの命を奪ったのだろう。

庄左ヱ門

その頭脳は、尊敬の念を受けるだけではなくなり、同時に相手にとっての脅威となりえたのだろう。

しんべヱ

その笑顔は、こちらを安心させてくれるだけだったものは、確かにその裏に深い深い闇を宿して

きり丸

その器用さは様々な人から重宝され、同時に疎まれるものとなっているのだろう。

伊助

その手が染める色とりどりの色は、何よりも多く赤が勝っているのだろうか

虎若

鉄砲に恋い焦がれるだけの年齢ではなくなり、今はそれを実際に奪うために使ってるのだろう

団蔵

一年生の頃、お前は村をとるか、このまま進むことをとるのか、迷っていたな。
もう、道は決めたんだろうか

兵太夫

そのからくりは人を助け、人を殺し、人を傷つけ、人をいやしつづけているのか。

金吾

俺の力を受け止めたその刃 今は力なきものに向けることもあるのだろうか

喜三太

様々なものたちをいつくしんだお前は、実際にそれらを戦いに使っているのか。

三治郎

見えないものを、聞こえないものを、お前は聞くことができると笑っていた、今はそれらにさいなまれてはいないだろうか。





俺の知っている友たちは、確かに成長してそこにいた。


俺を呼び、俺に触れて、確かに笑っていた。



「俺の知っている忍びとは全然ちがうよい」


マルコがあきれたように、笑う。


ああ、でもな、マルコ、やっぱりこいつらは、忍びなんだ。

笑って、笑って笑って、そうして、その後ろでどれだけのうそをついているのか、俺たちにはわからないだろう。






ぴりり、突如としてあたりに広がる鋭い空気。

ちらり、目配せをしあった彼らは乱太郎、庄左ヱ門、兵太夫を残してすぐさま姿を消した。



「エース、ごめん。もう少し話していたかったんだけどね・・・」


乱太郎の困ったような笑顔。

後、真剣な瞳。



それは、あの船の上、敵襲の時に感じるもので。




・・・敵襲、だと?



「庄左ヱ門、何が、起こっている?」


「・・・この学園は今、誰もが欲しがる情報を持っている。それを狙う輩がたくさんいるんだよ。」


くつり、小さく笑う声。

そこには艶やかに笑う兵太夫がいて。


「まったく、この場所に手を出そうとするなんて、いい度胸だよね。」


その笑みは、その言葉は、あの深緑の、この世界での兄たちにそっくりで。


「ちょっと煩いかもだけど、気にしないでね」


にっこり、すべてを覆い隠すように庄左ヱ門が、笑む。




ああ、こいつらは本当に、俺たちを巻き込まずにおこうとそう思ってくれているようで。



ちらり、マルコと目を合わせればそれはどうやら簡単に理解されて。



「ま、一宿一飯の恩義、っていうのがあるからねい。」


マルコが気だるげに立ち上がる。

俺と同じ考えのそれに、思わず笑いが込み上げる。





「ここは俺とエースに、まかせておけよい。」



ふわり、青い炎を、赤い炎を身にまとい、笑う。





俺にとってもこの場所は大事な箱庭だからな。


手を出されたら黙ってられるわけがない。

























庄左ヱ門視点










「・・・潮のにおい。」

しんべヱの言葉にあたりに意識を向ける。

ざわめく気配は多数。

見知った気配はなし。


「みんなとりあえずけがは?」

乱太郎の声に互いが互いの体を確認する。

幸い怪我などはないようだが状態が理解できないことにはどうしようもない。


「・・・なんか、エースみたいじゃね?」

小さな呟き。

団蔵の言葉にすべてがストン、と納得できた。

ああ、そういうことか。


「じゃああんまり気にしなくてもいいねえ。」

喜三太がふにゃり笑ってその場に座り込む。

懐から出したお茶を音を立てて飲む姿はもう、ここがどこでもいいというかのよう。


「まあ、いつもエース気づいたら帰ってるみたいだしね。」

三治郎の言葉にうなずきながらも頭の中ではこれからを考える。

エースの世界だと仮定したところで平和なところとは言い難いだろう。

だとすれば、やることは決まっている。


「伊助、きり丸。ここに残って僕と作戦会議。しんべヱ、喜三太、食料の調達を。金吾、乱太郎、あたりの偵察を。虎若、団蔵、兵力の確認を。兵太夫、三治郎、あたりの警戒を。」


出した指令に皆はすぐさま行動を開始する。


伝令に使うのは喜三太が常に連れ歩く生物たち。

使う文字は団蔵の解読不明なもの。



「とりあえず状況判断、すべてはそれからだね。」



僕の言葉に伊助が、きり丸が、嗤う。



「庄ちゃん!ちょっとやばいかも!」



時間をかけず、静かに音を立てず戻ってきた乱太郎の表情がこわばっている。




告げられた言葉は想像もしないもので。






__エースの処刑__



これはこれは、知らないふりなどしている時間はなくなった。



















庄左ヱ門視点










ゆるり、降り立ったその部屋。




「その話、詳しく教えてくれますかね。」


_エース_

その名前を聞けばじっとしてなどいられなくて。

ゆるり、気配を消したままその部屋へと忍び込み、言葉を、発した。


そこにいた屈強な男たちが一斉にこちらを振り向いた。

「なんだお前ら!」

手に手に持つ武器が、刃が、僕たちに向かう。

「金吾、虎若。」

僕に向かう刃を金吾が、銃に対しては虎若が。


「俺たちの司令塔なんっすよ。手、出さないでもらえます?」

きり丸が一歩前に出て艶やかに笑う。



きり丸越しに見る、一番奥の席。

微動だにせず僕たちを見るその鋭い瞳。

その瞳が告げる言葉を、僕たちは理解していて。

しかしながらその答えを持ってはいない。


きり丸の挑発に簡単に乗る男たちは手荷物武器を振り上げて立ち上がる。


ねえ、あなたなら止めてくださいますよね。



見つめあう視線に、ふわり、笑って見せる。



「・・・やめろ、お前ら。」

「マルコ隊長!」


あっさり、その言葉が彼の口から出た瞬間、一応、ではあれど彼らは動きを止めて。


立ち上がり、ゆるり、こちらに足を向けて。


確かに一歩一歩、僕たちに近づく。


きり丸が俺の隣に並ぶ。


「久しぶりだな、おめえら。」


金色の髪を揺らし、その人は、小さく笑った。



「お久しぶりです。マルコさん。」


あの世界で一度だけ会ったこの人。

エースが家族だと、そう紹介してくれたこの人。


「あの時はお世話になりました」


学園へと訪れた未曾有の危機。

それを救ってくれた異世界の存在。


そこで知った、彼らの持つ悪魔の実の能力。


そして、彼らの強さ。



「今度は僕たちに助けさせてください」


足手まといになるかもしれない、役にたてないかもしれない。



それでも、あの世界での六年間は決して無意味なものではなく。


この世界ではないものが、技術が、確かにあの世界では存在していて。



「大事な、友なんですよ。」


















頂上決戦エース








___今度は私たちが助けに行くから。___




「・・・うそ、だろう?」




まさか誰が思うだろうか。

その言葉が現実になりうるなんて。




「エースを、殺されるわけにはいかないんだよね。」

兵太夫が何かのスイッチを押したその瞬間、あたりに響いた爆発音。

いつの間にそれらを仕掛けたのか、それすら俺にはわからなくて。


「俺たちの大事な友人なんだ。」

オヤジへの刃を一身に受け、そうして受け流す。

泣き虫の金吾はもういない。


「まだまだ聞きたいこと、たくさんあるんだ。」

伊助の手から、ふわり、落ちる閃光はあっさりと海軍の視界を奪い、動きを奪う。

笑顔から発せられる威嚇は、誰にも止められはしない。



「いい加減気づいてよ。エース、君は君だけのものじゃないんだってね。」

あきれたような言葉は三治郎のもの。

手に持った大槍を振り回し、あたりの敵をなぎ倒す。



「ほおら、蛞蝓さんたち。お仕事のお時間ですよ。」

様々な生き物をどこからともなく呼び寄せて、喜三太はふんわりと笑う。

彼が持つ愛情にこたえるように彼らはうごめいて。


「エースとはしたいこと、たくさんあるんだぁ」

しんべヱは戦場には似合わぬ姿で、その体格で俊敏に相手を地面に落とす。

音もなく、それでも確かに相手の戦力をそいで。



「俺を残して死ぬなんて許さねえよ?」

きり丸の手に握られたくないが、ただ宙を舞えば、あっさりと海軍は倒れ落ちて。

そのまま彼は、妖艶に、笑う。



「俺と一緒にまた馬鹿なことしようぜ!」

団蔵が、にやりと笑う。

そのそばには多くの海軍が地に伏せていたが。




「エース、動くなよ!」

虎若の手にもつ銃が一筋の煙を出す。

その正確さは寸分も狂わず俺の横にいた海兵へと飲み込まれて。



「言っただろう?エース。次は僕たちが助けに行くって。」

庄左ヱ門がすべてを理解していたかのように佇む。

そのそばにはマルコがいて。



「返してね、私たちの大事な仲間を」


乱太郎が扇を広げれば、ふわり、風に乗ってきらきらとした粉があたりに広がる。

それはあの世界で幾度も目にした乱太郎の十八番。







まっすぐに切り開かれた、あの船への道筋。

駆け出すにはあと一つ、この鎖が切れればいい。








「大事な弟を。」





声が、響いたその瞬間、拘束されていた俺の体はあっさりと自由を取り戻す。


思わず向けた視線の先、あのころよりもずっとずっと大きくなったあの世界での兄たち。


深緑だった衣は、黒に変わっていたけれど、俺を見る瞳は相も変わらず愛しげで。



「何もんじゃお前たち!!」

響くじいちゃんの声。


それは、まったくもって俺の足かせにはならず。

「俺らの大事な弟なんだ。」

じいちゃんからの拳を受け止める留三郎

「すまないが返してもらう。」

「・・・悪く思うな。」

センゴクからの攻撃を受け流す文次郎に長次

「ほら、まっすぐに進んで!」

背中を押す伊作

「周りの敵は任せろ。」

道を切り開く仙蔵。


こんな場所だというのに、兄たちは死なないと、無駄な自信があって。

なぜか、無条件で信じられて、背中を預けることができて。


「エース!」


叫ぶルフィの手を取り、走る。

あの船へと、あの場所へと。



「白髭は負け犬じゃ。」


思わず止まる足。

オヤジをけなすその言葉を許すわけにはいかなくて。


「エ――――ス!!」



俺を貫くはずだった拳。










「言ってるだろう?私たちの弟に、手を出すな、と。」









それは、覇気も使えないはずの小平太に遮られて。



爛々と輝くひとみに宿る獣。

それは俺たちすらも食い殺さんばかりに小平太の中にとどまって。





「エース、走れ!!」


小平太の声が背中を押す。

振り向くことは許さぬというかのように。


「愛してるからな!私たちの弟!!」



その言葉が俺を、いつだって進ませてくれた。

俺をいつだって救ってくれた。

俺がこの世界で生きることを許すかのように







俺の中にはいつだって彼らの存在があった。


愛してるだと?

ばかやろう、それは俺の言葉だというのに。




心のどこかで、確信があった。


彼らに会えるのはこれで最後だと。


不思議な、不思議なあの世界への旅が訪れることは、もうないのだと。




だって、彼らはもう皆、あの場所を卒業してしまう。


だって、彼らはもう皆、闇の世界へと足を踏み入れてしまっている。




俺にとってあの世界の大事な兄たちは、友たちは、これから先、どんな表情で笑うのだろうか。





共に飯を食べ比べあったしんべヱ
怪我をすると一番心配してくれた乱太郎
俺の心に一番に気付いてくれたきり丸
三治郎の笑顔はいつも俺を元気にしてくれた。
馬鹿みたいなことで笑い合った虎若
兵太夫の罠には一緒にかかったな、団蔵
喜三太の蛞蝓には初め驚いたっけ
伊助と共に飲んだお茶は忘れない
金吾との剣術は楽しかった。
それを笑ってみていた庄左ヱ門



俺とたくさん手合わせしてくれた文次郎
甘いものをたくさんくれた長次
怪我をすると怒ってくれた伊作
頭を撫でてくれることの多かった仙蔵
何度も俺の名前を呼んでくれた留三郎
俺を愛していると叫んでくれた小平太






これから先、暗くよどんだ道が待ち受けていようと、あの世界での兄たちが、友たちが見守ってくれていると思えば、何一つ怖くはない。







「ありがとう、大好きだ!」







愛しい友よ、愛しい兄よ、



俺を、あいしてくれて、ありがとう










皆のおかげで俺は、この世界の家族と共に、まだ、生きていけるんだ。



















※※※※
六年生がどこにいたかって?
弟の危機には世界だって飛び越えちゃうよ!


















エースとマルコが愛しい・・・


ありがとうございました!!