小説
風邪ひきさんたちのお話。
BASARA
TOA
TOV
OP
忍
OP
ただみんなが風邪ひいておかしくなってるだけのお話。
受け入れない方は、ゆるりと退散を!
BASARA 佐助
「おかしい。佐助が呼んでも来ぬ。」
異常に気がついたのは、今日の朝。
いつもうるさいくらいに母親のような世話を焼く佐助が現れない。
起きろと布団をひっぺがされることもなく。
(おかげでいつもより二時間も多く寝ていた。)
朝ご飯を用意してくれることもなく。
(おかげで朝を食べ損ねた。)
十時のおやつも存在せず。
(甘いものが足りぬ!)
そして、呼べばすぐに現れるはずなのに姿を見せない。
忍務を与えてはおらぬし、御館様のところにもやっていない。
おかしい。
あの俺の忍びが姿を現さないことは、おかしい。
しかしながらこの現象に少なからず覚えがあるのも確かで。
いつもであれば佐助があげてくれる布団。
引きっぱなしのそのそばで、天井に向かって大声を張り上げる。
「さあすけええええ!!そろそろでてこんかああああ!」
たとえ姿を現さぬとも、近くにいるのは確か。
あの忍びが俺のそばから消えることはないのだから。
しかしながら返事はない。
それならば最終手段といこうではないか。
「・・・でてこないというのならば仕方ない。職務怠慢の名目で給料を天引きするしかないか。」
「ちょ、ちょっっとまっってよ旦那っ!!」
がさがさがさ、常にはない音を立てて、すぐそばに降り立つ俺の忍び。
その声はかすかによどみ、隠されている顔も若干赤い。
「なんだ、おるではないか。」
「いるよ!俺様が旦那のそば、はなれるわけないでしょ!」
ならば、呼べばすぐにでてこい。
口をついてでそうになったそれをあわてて飲み込む。
代わりに手を伸ばし、忍びにふれようと、したけれど。
「・・・さわっちゃだめだよ、旦那。」
距離をとられるあからさまな拒否。
しかしながらその意味が分からないほど無知ではない。
「佐助。風邪を引いたなら正直に申し出よ。」
ため息と共に告げれば、視線をさまよわせて。
きっと、次があっても、この忍びは俺には告げぬのであろう。
「我が忍びが苦しむのを、みて見ぬ振りなどできはせぬ。」
逃げるな、視線で告げれば賢い忍びは逃げはしない。
「わ、」
ふれて、熱を感じて、そのまま布団へ忍びを転がす。
体調のよくないこいつに負けるほど弱くはない。
「こんな時くらい、世話を焼かせてくれ。」
どうせ常であればこんなことさせてはくれぬのだから。
ただでさえ甘えるという感情を知らぬのだから。
「・・・」
ふてくされたようにこちらをみない忍び。
女中に持ってこさせた手ぬぐいを冷水に漬けて、額に当てる。
「それにな___」
もったいぶるように言葉を切れば、ちらり、促すように視線を向けられる。
「おまえがいなくなったなら、誰に甘味をかって来させればいいのだ?」
笑って告げれば、きょとりと表情を崩して、そして仕方がないと苦笑した。
「だから、早くよくなれ。」
主人の布団で寝れるものかと逃げようとする忍びを押さえつけて、掛け布団をかける。
そうすればようやっと忍びはおとなしくなって。
「移っても知りませんよ。」
まだもだもだとつぶやく彼に思わず笑う。
あまりみることはない自分の忍びの弱った姿。
みれるのは自分だけという優越感。
「うむ。うつらぬ。」
布団を軽くたたいて答えれば、疲れたように返される。
「ああ・・・バカは何とかって言いますもんね。」
「それは知らぬが・・・。お前に責がいくようなことはせぬよ。」
「・・・ごめんね、旦那。すぐによくなるから。」
ゆっくりとしのびが瞳を閉じた。
大事な大事な従者の一人。
俺の忍び。
早くよくなって、いつもみたいに笑ってほしい。
TOA ジェイド
グランコクマへ向かうアルビオールの中。
いつもと違う空気を漂わせる一人の人物がいた。
「・・・おい、ルーク。ジェイドどうしたんだ?」
「俺に聞くなよガイ。俺の方こそ聞きたい。」
その人物を遠巻きに、こそこそと話し合う二人の青年。
「本当に、大佐、どうなさったのかしら。」
「心配だわ・・・」
女性陣二人が恐々とつぶやきあう。
「きっとすごくいいことがあったんですね。」
「イオン様、たぶんそうじゃない・・・。」
ふわふわと笑う導師。
それに対して彼の守護者はつっこみを入れる。
マルクト帝国軍に所属し、死霊使いの異名を意のままにしているジェイドカーティス。
話の中心となっているはずの彼は、話にはいることはなく、普段では考えられないほどの満面の笑みを浮かべていた。
「昨日までは普通だったよな。」
「むしろお昼ご飯食べるまでは普通だった気がする。」
ガイの問いかけにアニスが答える。
「・・・今日の料理当番はナタリアじゃなかったよな。」
「何の確認ですの?ルーク。」
自分の食べたものを思い起こしながら、あの手料理ではなかったはずだとルークが確認して。
「いつものジェイドと変わらない気がするんですが・・・?」
「たぶんいつもより笑顔がまぶしいような・・・。」
イオンの言葉にティアが言いよどんで返事を返す。
「・・・放っておきたいんだが。」
ガイのもっともな言葉にルークが同意を返す。
「まあ、ガイ。仲間を見捨てるなんて、なんて薄情なんですの?」
「見損なったわ」
「こんなおもしろそうなこと放っておくの??」
が、女性陣の鋭い視線によって、うなずくのをやめた。
「ジェイド、どうかした___」
びし
意を決して、皆の期待を一身に背負い、キムラスカの王位継承者はゆっくりと話題の人物に近づき___
「・・・ジェイド?」
あっさりと玉砕した。
伸ばした手は何をつかむこともなく、ただ空をさまよう。
この手では何もつかむことはできないのか。
思わず落ち込む。
「ルーク!がんばってください!」
「応援してるよ!」
イオン&アニスの声援を糧に、再度試みる接触。
「なんですか?ルーク。さわらないでください。」
二回目の玉砕。
しかしながら、今度は違和感に気がついて。
「・・・なあジェイド、手、熱くないか?」
一瞬だけふれた手は、確かに自分のものよりも高温で。
いつもびっくりするくらい冷たい体温をしているのに、これは異常だろう。
「どういうこと?」
「ジェイド、体調が悪いのですか?」
ティアがイオンがあわてたように距離をつめてくる。
だというのに。
「気のせいです。」
ティアが、イオンが伸ばした手すら満面の笑みで、簡単に振り払って。
「さ、みなさん。私にかまわず体を休めなさい。グランコクマからはまた動きっぱなしになりますからね。」
ぱんぱん、と両手がたたかれて。
解散、とばかりに告げられる。
「ジェイ__」
名前を呼ぶのを遮るように笑みが深まる。
紅の瞳が、黙りなさいと、指示を出す。
常にはない理不尽な感じ。
いつもならここでひくであろうに、ルークの頭の中にはその選択肢もなくて。
「ティア、ナタリア、ベッドを整えてくれるか?アニス、何かからだが暖まる者を。ガイ、一緒にジェイドを運んでくれ。」
「僕はどうしましょうか?」
「あー・・・イオンは、ミュウを頼む。」
「わかりました。」
「頼まれましたですの!」
各に指示をだして、ガイと共にルークはジェイドを持ち上げる。
否、しようとした。
べしり
げしり
それはもうあっけないほど簡単に、ガイは、ルークは地に伏せて。
「私は大丈夫だと言っているでしょう。」
満面の笑みで、簡単に男二人を落とす。
本当に体調が悪いのか、不安になってくる。
「・・・っていうか、本当に体熱いぞジェイド!」
地に伏せていたガイが、ふれた体温に驚いて飛び起きる。
「ルーク、一緒にかかるぞ。」
「わかった、頼む。」
二人が、ゆるりと姿勢を低くして。
「え、大佐でも風邪とか引くの?!」
「菌の方が逃げていきそうですね。」
アニスとイオンのこそこそとした言葉をバックに、まるで決闘のような雰囲気が漂う。
「やれやれ・・・こりないこたちですね。インティグネ___」
「わー!!ジェイドそれはやばい!!」
「ティア!譜歌を頼む!」
「え、ええ!任せて!」
どうにかこうにか、眠らせたジェイド。
熱を計れば四十度近い高温で。
今の今まで気づけなかったことに落ち込んで
今の今まで気づかせなかったことに思わず感心した。
TOV ユーリ
「なあ、エステル・・・」
「ちょ、ちょっとまってくださいっ!!」
囁くような、甘い声。
「いいだろ?リタ」
「なんなのよっあんたっ!!?」
射止めるような真摯な瞳
「触れていいか、ジュディス。」
「あら、積極的ね。」
火傷をしたかと錯覚するような、体温・・・
「ってちょっとまってまってまってまって!!!!」
「んだよ・・・。」
吐息のようにこぼされるため息に、思わず息をのむ。
「なんなの、青年!その色気はよろしくないでしょう!!
というか、熱いんだって!!熱があるんでしょうが!!」
「ああ?」
気だるげに流し目を向けられてちょっとどっきどきする!
「イケナイ扉開いちゃいそうになるでしょうが!!」
カロル君は医者を捜してラピードとまちにでている。
いなくてよかった!!
硬直して動けないエステルの手をつかみ、真っ赤に染まったリタの肩にもたれ掛かり、ジュディスの髪に触れている。
どこのハーレムよ!!
「なんだ、おっさんも、はいりてえのか?」
ふっ、と愉しげに笑われた。
べ、べつに青年のポジションがいいな、とかおもってないんだから!
「熱があるんでしょうが!じっとおとなしくしておきなさい!」
叫べば不思議そうに首を傾げられた。
「こんなにおとなしく、じっとしてるのに?」
いや、そうなんだよ、動いてはいないんだよね!!
「なあ、エステル。」
「そ、そうですね!今日のご飯は釜飯が食べたいですね!」
嬢ちゃん、てんぱるにもほどがあるでしょう・・・。
何一つ返事になってない。
「そう思うだろ、リタ。」
「〜〜〜っ、おっさん、早く助けなさいよ!!」
涙目でこっちをにらんでくるリタっち。
おお、貴重。
・・・じゃなくて!!
「青年、本当にそろそろちゃんと布団にはいって___」
「一緒にベッドにはいるか?ジュディス。」
「あらすてきなお誘い。」
あうとおおおおおおお!!!!
「 ストップフロウ!! 」
悪化させた気がしなくもないけれど、それよりもなによりも、危ない展開に持ち込まれることはなくてほんっとうに安心した。
ついでに次の日、青年はほとんどこの日のことを覚えていなかった。
頼むからもう風邪引かないでちょうだい・・・。
OP ルフィ(盃兄弟)
「ううううう・・・・」
「まったく、ルフィは弱えなあ!」
真っ赤な顔で布団にくるまる義理の弟。
原因は恐らく、昨日森の中ではまった池だろう。
間の悪いことに、俺もサボもいないときにはまりやがるから、気づくのが遅くなったわけで。
気づいたときには一時間近く、この寒い気候の中水に浸かりっぱなしになっていた。
「エースー・・・!」
苦しい、と訴えるように俺をみる。
涙とかいろんなもんでぐっしゃぐしゃの顔。
見るに耐えないはずなのに、思わず持っていたタオルでその顔をふいていた。
「今サボが栄養のつくもん取りに行ってるからもう少し待ってろ。」
ばさばさとルフィのからだに俺らの布団も掛ける。
重い、とか聞こえたのは気のせいだ。
「ただいまー。色々とれたぞー!」
にっこにこと笑顔で戻ってきたサボ。
両手にはしとめた獣と薬草のたぐい。
「よっし!肉!さばいてくるわ。ルフィは任せた!」
獣を受け取って、外へと向かう。
病人料理はわからねえけど、とりあえず、肉を食えば大丈夫だ!!
まってろ、ルフィ。
すぐに精の付くもんつくってやかるからな!!
俺が持って帰ってきた獣を受け取ってエースは外にでていった。
それを笑って見送って、ルフィを見ればそこにはこんもりとした布団の山。
「うううう、おもい・・・」
どうやらそこに埋もれているらしいルフィ。
エース。
暖めなきゃいけないのは確かだけど、これはやりすぎだ。
思わず苦笑いになる。
ひょいひょいと顔まで埋まっていたルフィを救出してやれば死にそうな顔をしていた。
「サボー・・・」
情けない顔。
でも俺たちの義弟。
俺たちが守る存在
「なに死にそうな顔してるんだよ。ただの風邪だ。すぐによくなるから。」
ふわふわのくせ毛を手のひらでかき回す。
猫みたいに目をすがめる。
先ほどつんできた解熱効果のある薬草をすりおろすため、ルフィから手を離す。
が、
「ルフィ?」
「サボ、手がきもちいい。」
ルフィにつかみなおされて。
ぎゅう、と額に導かれた。
「ルフィー」
名を呼んで、ぱたぱたとあいている方の手で布団をたたけばもぞり、からだをうごかして。
「もうちょっと・・・。」
そのまま布団に潜り込む。
「仕方ないなあ。」
今日だけはこの片手をルフィ、お前に貸してやろう。
「・・・サボ。」
「なんだ、エース、うらやましいのか?」
帰ってきたエースがさりげなくルフィのもう片方の手をつかんだ。
「今日だけは俺たちをルフィに貸してやる。」
空いてる手で、優しくルフィの髪をなでるエース。
その表情は愛しさで溢れていて。
少し前までは決して存在しなかったであろうその感情。
全部全部、お前のおかげだよ、ルフィ。
いつのまにか、うつら、うつらと船をこぐエースを見て笑った。
忍 きり丸
「きりちゃん、顔が赤いよ?」
「風邪?」
乱太郎と、しんべヱに布団に放り込まれて、早・・・どれくらいだろうか。
誰もいない部屋の中、ただ静かに時が過ぎるのを待つ。
体はだるくてしんどいのに、なぜか眠気はなくて。
世界で、たった一人、自分だけのような錯覚をした。
ぎゅう、と体を丸まらせて、世界から逃げるみたいに目をつむる。
お願い、独りにしないで
「きり丸。」
やさしい声
暖かなぬくもりが、頭に触れる。
なだめるように、撫でられて。
「大丈夫だから、ゆっくりお休み。」
やさしく、やさしく、俺のぽっかりと空いた穴を埋めるみたいに声が響く。
「もう、一人じゃないから。」
温かい、それが、ゆっくりと頭から離れる。
おねがい、おねがい、はなれていかないで
思わず手を伸ばして、つかむ。
そうすれば、緩やかに笑う声。
「ちゃんとここにいるから。」
おやすみ、きりまる
その声を最後に、ゆっくりと、今度は怖くはない闇の中へと落ちていった。
「土井先生・・・」
「きり丸、大丈夫??」
「熱、ひどいの?」
心配そうに入口から中を見てくるは組の子たち。
眉を寄せて、自分たちが痛そうな表情をして。
魘されているけれど、どうしたらいいかわからない。
そういってきり丸のところに来てみれば、ただの子供がいて。
弱いところを見せるのを、いつもは嫌がって、強がる。
大人ぶって、笑う。
理解のいいふりをして、あきらめる。
そんな子供が、今はただの幼い子供で。
いかないでと、願うように手をつかみ。
そばにいてと、請うようにすりよって。
幼きときの、自分によく似た子供。
それでも、この子は自分ではない。
この子には、仲間がいる。
「大丈夫だ。きっとすぐによくなるから。元気になったらまたみんなで遊べばいい。」
子供たちに笑い返して、そう言ってやれば、ほっとした顔があふれる。
ほら、きり丸、大丈夫。
君は独りじゃない。
こんなにもやさしい子たちがそばにいる。
「大丈夫だよ、きり丸。独りじゃないから。」
言い聞かせるように繰り返す。
はやくよくなって、そうして、また、笑っておくれ。
OP マルコ
「よい。」
白髭海賊団、四番隊隊長、サッチ。
今、廊下にて起こる事態についていけないまま、ただ流されるように生きている。
「よいよいよいよい」
「よいよいよいよいよいよい」
カバディのポーズで、カバディの音頭で、カバディの代わりに”よい”を連発しながらじりじりと近づいてくる男に。
俺は捕まらないことで必死だった。
「・・・なに、してんだ・・・?」
心底理解できない、そんな声色と共に現れたのは二番隊隊長、エース。
じりじりとかに歩きで後退する俺と、それをじりじりと追いかけるマルコ。
その言葉はなにも間違っちゃいない。
間違っちゃあいないが、なんか、エースにいわれたというだけで理不尽だ。
「なに、してるように見える?」
答えを返せばエースは控えめに返事を返す。
「・・・新種の、鬼ごっこ、か?」
「真顔のマルコにこんな状態で追っかけられることが、か?超こええよ。」
ついでにこの間、ずうっとバックミュージックは”カバディ”ならぬ”よいよいよい”だ。
マルコの顔は真顔で異常にまなざしが厳しい。
まじこええ。
どうしたい、どうしたいんだ、マルコ。
その返事は帰ってこない。
「ええ、と・・・じゃましちゃ、悪い、よな。俺、いくわ・・・。」
あの空気を読まないと評判のエースが、空気を呼んだ、だと・・・!?
だがしかし、今はしなくていい!!
「待て、エース!頼む。誰かほかの隊長を呼んできてくれ。できれば古株がいい。注文を聞いてくれるならイゾウがいい。」
カバディならぬよいよいで距離をつめるマルコから距離をとりながらエースに頼む。
まじで本当に後生だから。
「わ、わかった。」
深刻さを感じ取ってくれたのだろう。
エースはうなずいて走り出す、はずだった。
誰が思うだろう。
マルコの標的が、いつの間にか俺からエースに変わっていただなんて。
走り出したエースの背中を、いつの間にか不死鳥に変わったマルコがつつき出すなんて。
誰が想像しただろう。
「うわあああああああああ!!!」
エースの後ろ姿に、ただただ合掌することしかできなかった。
その後不死鳥に追いかけられたエースはたまたま通りがかったイゾウによって救出され、そのまま医務室へ放り込まれたマルコはナースたちによって立派な風邪を申告された