小説
(2012年 12月9日変更)
拍手ありがとうございます。
全部で9種類。NOT夢です。
今回は海賊、バサラ、テニス、忍、から参戦です。
「 ○○ してくれて、ありがとう」シリーズ。
目次
1 ここ。
2 海賊(エースからルフィに)※頂上決戦後 死ねた?
3 海賊(ルフィからエースに)※頂上決戦後 死ねた?
4 バサラ(幸村から佐助に)
5 バサラ(小十郎から政宗に)
6 テニス(仁王から柳生に)
7 忍 (三郎から雷蔵に)
8 忍 (二年生から四郎兵衛に)
9 忍 (迷子から作兵衛に)
10 忍 (きり丸から○○してくれたみんなに)
ありがとう、その言葉を伝えたい。
そんなお話。
海賊は頂上決戦後なので、まあ、そういうお話です。
とりあえず書きたかったきりちゃんをかけて私は満足です。
いやいやいや、むりだよ、ごめんこうむる!の方はお気になさらずこの拍手ページに来たことをそっと心の秘密の箱に鍵をかけてしまって置いてくださるとうれしいな。
もちろんいつものように全力でクイック&ターン&トリプルアクセルをして帰ってくれてもかまわなくてよ!
海賊 エース→ルフィ
生まれ落ちたその時から、俺は誰にも望まれない存在だった。
誰に聞いても父親というその存在は悪以外の何物でもなく。
俺という存在を否定する言葉ばかりが世界にあふれて。
何も好き好んであれを父に持ったわけではない
望んで生まれたわけではない
だというのに、俺という存在はどうやらこの世界の上では不必要なもののようで。
俺の存在している理由など、どこにもないのだと。
そんな俺に、お前は叫んだんだ
「だって、ほかにたよりがいねえ!!」
泣きながら叫んだんだ。
俺に向かってその小さな体で。
顔面を涙でぐちゃぐちゃにしながら。
「俺は一人になる!!一人になるのはいてえよりつれえ!!」
一人になることを恐れて、いたいよりも一人になるほうが怖いと、つらいと、全身で叫んだんだ。
俺がいないと困るのかと問えば、なんの恐怖も震えもなく、ただまっすぐな瞳のままでうなずいたんだ。
俺がいないと困ると
俺がいないとさみしいと
俺がいないと嫌だと
俺に生きていてほしいと、俺が生きていることにあたりまえだと叫ぶ。
俺の存在を、ずっと浮いたままだった存在理由を、
地面に足を付けることを許すように。
「・・・お前は俺に生きててほしいのか?」
「あたりまえだ!!」
その瞬間、その小さな存在が俺の存在理由になって。
どんなに振り払っても危険な目にあっても、ただただ必死に俺にくらいついてくるその姿
泣いて泣いて泣いて、顔面をいろんなものでぐちゃぐちゃにしながら、それでも俺をまっすぐと見つめてくるその二つの目。
俺が必要だと、叫ぶその姿は、確かに俺を求めてくれていて
サボは俺にとってたった一人の親友で、兄で、友人で
あのころの俺にとって唯一肩を並べて背を向けあって戦える存在で
けれども、ルフィというその存在は
俺を必要だと笑うその小さな存在は
俺にとっての太陽で、光で、世界で
俺が守るべき大事な弟になった。
俺にとってあの時にルフィにあわなければ俺はあのまま何にも希望を見いだせず、世界をただ嫌悪して生き続けただろう。
サボ以外何も、だれも、信じられなかった俺に、無数の光と道を示してくれたんだ。
たった一人の俺の弟。
サボとはまた違う大事な存在。
サボがいなくなってしまっても、ルフィという存在が俺を支えてくれた。
愛しい大事で大切でかけがえのない弟。
海賊として世界に飛び出してからも、俺の中であいつの存在は大きくて。
白髭という偉大な父を持てたのも
1600人もの兄弟を手に入れたのも
家族という場所のぬくもりを知ったのも
すべてを辿れば弟のおかげで
何度救われたかわからない
あの能天気な笑顔
無条件に俺を信じるその姿
やられても逃げないまっすぐな姿勢
俺の名前を呼んでくれるあの弱い存在
俺が守っているようで気づけば俺を守ってくれていたお前
それは すべて、ルフィという存在のおかげで
ずっと俺を見守ってくれていたであろう親友よ
俺の存在を許してくれた父親よ
家族のぬくもりを教えてくれた兄弟たちよ
そして俺に存在意義を与えてくれた愛しい大事な大切な弟よ
どうかどうか届いてほしい
お れ を あ い し て く れ て あ り が と う
腕の中、愛しい大事なぬくもりを抱いて、この命がどうかどうかずっと続きますように
遠い世界からもずっとずっと見守っているから
どうかお前はこの世界で、お前の望む世界に生きていってほしい。
大事な愛しい弟よ
あいしてくれてありがとう
※※※※
頂上決戦後
愛されていたことを覚えていてほしい
必要とされていたことを知っていてほしい
自分がルフィを必要だと思ったように、ルフィにも自分が必要だときちんと理解していてほしい
この兄弟の関係性がとても好き
海賊 ルフィ→エース
たった一人、あの場所でたった一人の頼りだった。
あれについていかないと、俺は絶対に一人になると思った。
じいちゃんに放り出されて、そこで出会ったあいつ。
そいつは初めから俺が近づいていくと嫌そうな顔をして、俺がついていっても走り出すだけで。
でも、助けに来てくれた。
別に俺が死んでも構わないはずなのに、それでも、俺を助けてくれた。
そいつは、エースは俺なんかよりずっと強くかった。
俺が必要かどうかとかなんか当たり前のことを言ってくるから、ただ素直に答えたんだ。
必要だって。
そしたら怒り出すし、意味わかんなかったけど、
でも、初めて笑ってくれた。
太陽みたいにあったかい笑顔で。
サボと一緒に、俺の前を走って。
いつも意地悪されてばかりだったけど、それでも守ってくれて。
俺もああなりたいって、そう思ったんだ。
サボが一番に俺たちの小さな世界を飛び出して。
エースもそれに続くようにいなくなって
そうして俺の番。
エースがどんなふうに生きているのか、わかんなかったけど、それでもおんなじ海で生きている、それだけでいつ出会えるかとわくわくしたんだ。
大事で大事で、大好きな兄ちゃん。
強くて強くて、厳しい兄ちゃん。
ずっと、ずっと、同じ世界で生きているはずだった。
いつも守られてばっかりだったから、今度は守りたかった。
こんなに強くなったんだって、自慢したかった。
ようやっとあの場所から連れ出して、一緒に逃げようって。
あったかい、炎をだすエースはすごくかっこよくて。
やっぱりかなわないなあ、って思って。
想像もしなかった。
したくもなかった。
目の前で俺をかばって崩れ落ちる体も
耳元で苦しげにつぶやく声も
ゆっくりと消えていく命のかみも
俺がいなかったらエースは脱出できたかもしれない
俺がいなかったらエースは逃げられたかもしれない
一緒に死んでしまいたかった。
こんなに苦しいのなら、いっそのことこのままいなくなってしまいたかった。
それでも、エースは俺に言ったんだ
愛してくれてありがとうって
そうみんなに伝えてくれって。
俺の代わりに伝えてって、そうエースが俺に頼んだんだ。
最後の最後にエースが俺に願ったんだ。
そんなの、かなえないわけにいかないじゃんか。
エースが言うみんなっていうのは、あの白髭のおっさんたちのことで。
エースの大事な、仲間たちで。
俺にとってのゾロたちのような大事な存在で。
ああ、俺、やっぱり死ねない、ってそう思った。
薄れていく意識のなか、うかんだのはいっぱいいっぱい一緒に過ごしたエースとサボのこと
大事で大好きな兄ちゃん
この世界で俺の大事な兄たちは、もう俺のそばにはいないけれど。
それでも、どっちも大事な兄で、大切な存在なんだ。
だから、どうかどうか、
なあ、サボ。
俺、強くなったんだ。
エースと背中を合わせて戦えるほど。
まだまだ守ってもらう存在だけど、それでも強くなった。
これからもどんどん強くなるから。
だからそこから見ててほしい
なあ、エース
俺はエースがいたからあの場所で生きれた。
たくさん死にそうになったけれど、なんだかんだで何度も助けてくれて、守ってくれて。
だから、さ。
生まれてこなきゃよかったなんていうなよ。
あのころはエースがいない世界なんて想像できなかったけど、それでも一個だけわかってた。
エースがいなかったら俺はすごく悲しくてさみしくて仕方がないって。
それだけは分かってた。
目の前のエースに届かないとわかっていたけど、手を、伸ばした。
あのな、エース
ずっと言いたかったんだ。
あのな、
う ま れ て き て く れ て あ り が と う
大好きな兄ちゃん
バサラ 幸村→佐助
忍
主の影となり、時には盾となる存在。
自分を殺し、ただただ主のためだけに生きる道具。
否、生きているということですら真実ではないとされることも多々あって。
それが、忍
でも、俺にとっての忍は
大事な大事な友であり、仲間であり、親友であり、よき理解者で。
「旦那。俺様は旦那にとって道具でありたいんだ。」
笑いながら感情のない瞳で俺に告げる俺の忍。
そんなことはない、その言葉を忍が発するたびに俺は怒る。
それでも俺は俺のために存在していると告げるあいつが、どうしようもなく大切で。
道具だとそう口にするくせに、それに起こればうれしそうに困ったように笑う。
そうしてため息をつく。
そんなあいつが
「旦那はやさしすぎる。」
泣きそうに、それでも泣かぬ、俺の忍。
だが、俺は思うのだ。
お前のほうこそやさしすぎると。
戦いでは常に俺の勝利のために暗躍して
日常でも何にでも対して警戒をしてくれて
腹が減ったと呟けばため息をつきながらも何かを作ってくれて。
主だと、距離をとってるくせに、主従以上の面倒を見てくれる。
道具であろうとするくせに、感情を隠しているくせに、
俺を突き放すことはせず。
お前はやさしすぎるのだ。
俺が傷つかぬように
俺が壊れぬように
手をまわして、俺が気付かぬうちに事を終わらせて。
自分自身ぼろぼろのくせしてすべてを隠して、俺を守る。
そんなお前に気付かぬふりして、俺は、笑う。
お前のすべてを見ていないふりして、俺は、何も知らないふりして。
なあ、佐助
お前は俺にもったいないくらいの忍だ。
こんな俺でごめん。
すべてを見て見ぬふりをする俺を許してほしい。
すまない、佐助。
それでも、お前に伝えたい。
こんな俺に、こんなどうしようもない俺に
つ か え て く れ て あ り が と う
なあ、佐助
バサラ 小十郎→政宗
たった一人、俺にとっての主。
幼き頃より生まれ持ったその瞳のせいで忌み嫌われて。
母に嫌われ隔離され
父に構われることなく生きてきた。
俺という存在に目をかけることすらなく、死んだように生きていた。
俺の声に耳を傾けることはなく、すべてをあきらめて生きていた。
生きているのに死んでいた、そんなあなた。
けれどもたった一人の、俺だけの主。
「俺はあなた様に生きてほしいのです」
俺のその言葉はあなたに届いたのだろうか。
ゆっくりとこちらを見た濁った瞳。
それは確かに俺を見て、ゆらり、揺れた。
世界に色が付くかのように、瞳がゆっくりと俺を映して。
一つ涙がこぼれたとともに、その口から嗚咽が漏れだした。
「小十郎、僕を、殺して」
初めて、あなたが俺に願ったのはそんな言葉だった。
あなたの瞳をえぐり取ったその瞬間から
俺はあなたの右目になった。
あなたが見えぬものは俺が見よう
あなたがみたくないものは俺が見よう
私は一生あなたと共にあろう。
幼きあの頃、自らの瞳を殺してほしい、そう願った政宗様。
ただただあなたに伝えたい。
生 き て い て く れ て あ り が と う
俺の大事な主、政宗様
テニス 仁王→柳生
ペテン師
何の因果か、そう呼ばれるようになった俺。
別にそうなることを願ったわけではなく、自由気ままに生きていればそんな異名を付けられた。
その名前は勝手に生きている俺にはお似合いのもので。
そう呼ばれるようになったその時からその名に従い生きるようになって。
笑顔でうそをついて、
困った顔をしながら人を陥れて、
俺を表に見せぬようにして、
そうやって生きていた。
けれども、たまにはペテンをするのも疲れたと思ったりもするわけで。
「やあ〜ぎゅ」
「どうかしましたか?仁王君。」
相棒である柳生に後ろからへばりつく。
嫌そうな顔はせず、困ったように表情を変えて。
「・・・まーくんは疲れたなり。」
「そうですか。」
ぬくもりを感じながらぽつり、呟けばふわり、笑う気配。
「仁王君。今日の練習はお休みしますか。」
いつもはまじめな柳生が少し楽しそうに言葉を紡ぐ。
「・・・サボるのはダメなんじゃろう?」
いつもは許してくれないくせに、そう呟けばさらに楽しそうに笑う声。
「今日はどうせ筋トレだけですし、たまには幸村君たちも許してくれるでしょう。」
テニスは好き。
練習は嫌い。
勝つのは好き。
負けるのは嫌い。
ペテンは、好き?
本当は___
「やあぎゅ、まーくん、ひよこ饅頭が食べたいなり。」
「そうですね。久しぶりに東京にでも遊びに行きますか。」
いつもいつも、笑ってしかけるペテン。
驚く顔も困ったような顔も、されるのは好きだけど、嫌われるのはやっぱり怖いわけで。
それでも、やさしい俺の相方は笑ってそれを受け入れてくれて。
こんな俺なのに、こんなどうしようもない俺なのに、
なあ、やあぎゅ、
こんな俺を
し ん じ て く れ て あ り が と う
ペテンは、嫌いじゃないけど好きにもなれないんだ。
忍 三郎→雷蔵
私がまねる人物は、私なんかよりもずっとずっとやさしい人。
私だったら自分の姿を使われることをよしとはしない。
私以外が私になろうとするのは、許しはしない
けれども、私がまねるその人は、簡単に私を受け入れて、
自分を模されているにも関わらず少し困ったように笑うだけで。
一年の時、初めて会った君は、私を見てとてもきれいに笑って。
仮面をつけた私に、簡単に手を差し伸べて。
一緒にいようって、声をかけてくれた。
私が呼べば返事をくれる。
困っていれば助けたくなる。
大雑把な性格も、迷い癖も、それも全部、君の個性。
大好きな友。
大切な仲間。
だからこそ、私は君になりたかった。
だからこそ、私は君をまねしたかった。
ふわり、太陽みたいなまぶしいものではなくて、
タンポポみたいな柔らかな笑み。
それは私にとってとてもまぶしいもので。
ああ、なんて素敵な笑顔だろうか。
どんなに君に
なろうとしても
絶対に私は君にはなれない。
雷蔵のようになんの裏もなく笑うことなどできない私には。
雷蔵のようにやさしくすべてを受け止められない私には。
まねることを、忍びのすべとして叩き込まれた私は、何をおいても、まねることだけは誇らなければならなかった。
その人物になりきれないことは、私にとっての落ち度で
あってはいけないことだった。
けれども、
思ってしまったんだ。
私は君にはなれないけれど
私は誰にもなれないけれど
雷蔵、君だけは、
私を私とわかってくれる
君になりきれないことは私にとっての落ち度ではないと、
それは私の個性だと、楽しそうに笑って告げた雷蔵。
その言葉にどれくらい救われたか、きっと君は知らない。
だからこそ、私は今日も君になる。
まねられない笑顔を、自分の笑顔に変えて、
ねえ、雷蔵
わ ら っ て く れ て あ り が と う
臆病な私は、それでも君になり続けるよ
忍 二年生→四郎兵衛
ぽやっとして、なんというか見ていたら力が抜ける。
何も考えていないようにほけほけと笑いながらいつもそこにいる。
でも、俺たちは確かにそんな存在にいつもいつも、助けられているんだ。
ろ組に所属する俺たちはなんというか、仲が悪いわけじゃない。
むしろいいほうではあるんだけれども、困ったことに、俺も久作も左近もこう、言いたくないけど意地っ張りなわけであって。
つまり何が言いたいかというと、素直になれないから喧嘩ばっかりするんだ。
すごく簡単なことで、すごく単純なことで、勝手に言いあって、勝手に喧嘩しだして。
別に喧嘩したいわけじゃないし、言い合いしわいわけじゃない
でも、正直になんてなれなくて。
そしたら急にあらわれるんだ。
「あれぇ?左近に三郎次、久作もいる〜どうかしたの??」
ほけほけした顔をしながら
ぽやぽやと周りに花を飛ばしながら
言い合っている俺たちのところに。
なんだかその顔を見たら言い合っていた理由なんてどうでもよくなって。
今までの自分たちがばからしくなってきて。
「え、どうしたの?」
俺が白いほわほわの髪をぐしゃぐしゃに撫でれば
左近が四郎兵衛の広いおでこを叩いて。
久作がため息をつきながらも小さく笑って。
たった一人、クラスが違う。
そんなことはあんまり関係なくて。
ふわふわ笑って俺たちの近くに現れてくれる。
ささくれだっていた俺たちの心をやわらかく溶かしてくれる。
なあ、四郎兵衛。
恥ずかしいから俺たちはあんまりこういうこと言わないけど、ずっと思ってるんだ。
あのな、四郎兵衛
そ ば に い て く れ て あ り が と う
俺たちずっと思ってるんだ。
忍 迷子→作兵衛
「左門!三之助!!」
俺たちを呼んでくれる、その声が、大好き。
俺たちを想ってくれてるって、そうわかるから。
「お前らなあ!!」
俺たちを怒る、その表情も好き。
俺たちを心から心配してくれてるって、気づけるから。
「まったくもう・・・。」
あきれたようなため息も、嫌いじゃない。
ひかれる手が、とても温かいから。
俺たちはどんな作兵衛もだあいすき。
知らない景色で、一人きりになっても。
二人で、よくわからないところにたどり着いても。
怖いなんて思わなくて。
だって、待ってれば作兵衛が来てくれるって知ってるから。
声を荒げながらも、作兵衛が捜しに来てくれるってわかってるから。
綺麗な夕日が見える丘。
今日も二人で作兵衛を待つ。
まだかな、まだかな、
このきれいな景色を、作兵衛にも見てほしい。
このきれいな世界を、作兵衛にも覚えていてほしい。
こうやって二人で見つけたいろんなすごいもの、きれいなもの。
ここからいなくなっちゃう前に、たくさんたくさん見つけて、共有して。
想い出という素敵な箱にしまいこんでいこう。
忘れぬように
失ってしまわぬように
笑顔が消えても、もう一度笑えるように。
ねえ、作兵衛。
あのね、
見 つ け て く れ て あ り が と う
ほら、また、作兵衛の声が聞こえる。
忍 きり丸から、みんなに
母がいない
父がいない
それがマイナスかどうかなど、わからない。
ただ、生きる上で少しだけほかよりも生きにくい、それだけ。
いてほしい、思ったことは何度もあったけれど、
どうせ不可能だってわかってるから。
期待なんて、しちゃだめだって知ってるから。
だから、
ずっとずっと、一人で生きてきた。
俺にとって
やさしい人は、とても怖い。
こんな何も持たない、役に立たない子供に、やさしさをする理由がわからない。
絶対に何かを考えていると、思ってしまう。
売られるのか、殺されるのか、はたまた欲の吐け口か。
やさしさの裏にあるものをさがしてしまう。
そんな中、ただ、生きていく手段として、
忍という道を選んだ。
今までためた大事な小銭を袋に詰めて、これからのすべてをここで吸収するために。
ぬるま湯のような、ゆるいその空間は、初めて、俺に安心という言葉を教えてくれた。
殺すための術を学びに入ったそこは、人としての感情を、教えてた。
そうして出会った、かけがえのない仲間たち。
乱太郎にしんべヱ。
大事なは組の仲間たち。
委員会の先輩。
俺に世界を教えてくれる尊敬すべき存在。
それから、
土井先生
家においでと笑ったその人は、疑う気も失せるような、やさしい人。
どこか抜けていて、なのに強くて
俺を、俺たちを守ってくれる存在。
まるで、父のような、母のような、兄のような。
ずっと、一緒にいたい。
そう思ってしまう、人。
でも、忍となる俺は、そんなことを願うことなど許されない。
一人で生きる以外の方法を知らない。
生きていく、それは、自分がただ生き抜くため。
人を、守るためだなんて、思えない。
ああ、でも、そうなる存在だからこそ、伝えてもいいかな。
口に出してなんて、言えないけれど、
ずっとずっと、思ってるんだ。
愛してくれてありがとう
でも、それよりもきっと、
生 か し て く れ て あ り が と う
生というものがどんなに儚いものか、わかっているから。
だかこそ、俺を生かしてくれたすべてに、ありがとう
おれはひとりではいきていけなかっただろうから