小説
いつも以上にあてんしょん!!
クロスオーバー
ひっちゃかめっちゃか
あんまり深く考えちゃいけない
とりあえず
海賊のエース
魔法のセブルス
を助けるためだけのお話。
海賊最新巻ふきんまでほんのりネタバレ。
ぽた
1 ロー幼少トリップ
学生セブルス
2 ロー少年トリップ(海賊成り立てくらい)
双子入学くらいの教授セブルス
3 双子ローの存在を知って、異世界を知る
魔法使って異世界に
4 双子白髭のところへ
5 双子サッチ助ける
6 双子頂上決戦 エース助ける→行方不明
7 マルエサッチが魔法世界へ
最後の決戦あたり 皆を助けながら双子を助ける
8 ロー2年後トリップ
最終巻(セブルスを治すよ)
9 大円団
※※※※※※
ロー幼少トリップ
学生セブルスと
命の恩人だったんだ。
俺を、もう先のない俺を、助けてくれた。
助けようと、かけずり回ってくれた。
優しくて、つよくて、どこか抜けていて、
大好きな人だったんだ。
なあ_____
ばちり、
たゆたう思考の中、突然意識がさめた。
むくり、起きあがってあたりを見渡せど、そこは全く持って見知らぬ世界。
囲まれているのは、堅くてくらい壁。
時折窓が、絵画が見えるような、そんな意味の分からない場所。
「・・・どこだここ。」
俺の言葉に応える者は誰もいなく___
「誰だおまえは。」
否、いたようだ。
堅い、ごり、とした感覚が頭に突きつけられている気配。
何事かとゆっくりと振り向けば、そちらには上から下まで黒いローブを纏う俺よりも年上の少年。
目つきは鋭く、顔色は、悪い。
「おまえこそなにもんだ。」
突然に突きつけられた悪意に答える必要性は感じない。
そう思い吐き捨てるように言葉を放つ。
そうすれば、彼はゆるり、瞳を細めて。
「おまえ、ホグワーツの生徒じゃないだろう」
低い声。
男の警戒心をありありと表すその声。
だがなによりも聞きなれない言葉が気になって。
「・・・ホグワーツ?」
つぶやく。
「・・・ここはホグワーツ魔法学校だ。」
それに答えるように正式名称と思わしきものが発せられて。
魔法、だと?
意味が分からないそれにゆっくりとその男を眺め回す。
そして、その手に持たれているものに、気づく。
先ほど俺の頭に突きつけられていたのは、どうやらこれだ。
棒、だ。
まごうことなき、棒だ。
「・・・それはなんだ。」
「杖だ。これで魔法を使う。」
俺の言葉にこれまたすぐに返事が返る。
魔法、それは、何でもできそうな響きを帯びていて。
不可能を可能に変えるような、そんな色をしていて。
体が、ふるえた。
「魔法、だったら、人が生き返ったりするのか?」
脳裏に浮かぶ、優しいあの人。
思わず、男に詰め寄るように近寄れば、男はかすかに後ずさった。
「・・・無理だ。」
けれど告げられるのは無情な一言。
「死者を生き返らせることは、できない。」
念を押すように、男は告げる。
「魔法は、万能じゃないんだ。」
その声に含まれる響きは、どこか寂しく。
その男の後悔をにじませるようだった。
俺と同じで、取り返しのつかないような、そんな間違いを犯してしまったかのような。
ずくり、と胸が疼く。
まだ真新しいその傷。
それは、決して癒えることはなく。
たぶん、この男もそんな傷を抱えているのだろう。
まっすぐと、男をみる。
先ほどよりも幾分か柔らかみを得た瞳。
顔色は相変わらず悪く、髪の毛も元気がない。
くたびれたようなローブに、緑のネクタイ。
手に持っているのは、魔法薬学、と書かれた教科書と棒。
魔法使い、だなんて。
信じようもない、意味の分からない存在なのに。
あのとき、すべてを失った俺からしたら、たとえこれが嘘でも真実でも構わないような、そんな気分に陥って。
「俺は、ロー。トラファルガー・ロー、だ。」
ゆっくりと、自分の存在をこの場所に刻みつけるように、名前を告げる。
ゆるり、男の瞳がかすかに揺れた。
瞬時の後、小さくその口が開かれる。
「僕はセブルス。スリザリン寮のセブルス・スネイプだ。」
それに答えるように男、否、セブルスも名前を告げた。
先程とは違い、かすかに口元に笑みを浮かべている。
その様子に、じわり、今度は胸に安心感がひろがった。
全く持って訳の分からないところにいるわけだけれども、その中で、知り合いができたという事実が、少なからず安心を生み出して。
どちらからともなく出した手を、そっと握りあった。
ざわり、突然あたりにざわめきが広がった。
「・・・まずいな。」
セブルスが小さくつぶやく。
「何だ?」
俺の問いかけにセブルスはちらり、俺らがいる通路の先を見る
「授業が終わったから、皆が来る。」
スネイプが答えて、俺の腕に、触れた。
あのとき、
あの人がいなくなってから、
一度たりとも触れることのなかった
体温に、
不覚にも体がふるえた。
「こっちだ、来い。」
それはまるで俺を守るかのように。
手を、引かれるがまま足を動かす。
「どういう状態かわからんが、おまえが望むなら匿ってやる。」
ぽつり、放たれた言葉。
それは少しだけぶっきらぼうに。
でも、じわり、胸に、しみた。
温もりに解される
あの人とは違う、まだ幼い手で。
※※※※※※
2 ロー少年トリップ(海賊成り立てくらい)
双子入学くらいの教授セブルス
セブルス視点
「スネイプ教授!不審者です!!」
地下の教室。
授業終わりの片付けをしていれば、突如駆け込んできたスリザリン生。
息を弾まして、困ったように眉を下げて、そんな言葉を発するものだから、一つため息をついて立ち上がる。
「どこだ。」
不審者。
そんなものがこの学園に現れるはずはないのだが、何事にも例外というものはあるわけで。
脳裏によぎった、隈がひどい、幼い少年。
それを首を振ることで振り払い、生徒に続いて足を進める。
向かった先、何かを取り囲むように生徒たちがいた。
「スネイプ先生!」
私を見つけた生徒が(もちろんスリザリン寮だ。)声を上げる。
瞬間、何かを取り囲んでいた生徒たちが一斉に脇へ動く。
その向こう、囲まれた”何か”の存在を露わにした。
見えたのは一人の男。
黄色い色の服を纏って。
袖から見える腕には入れ墨があって。
なによりもその人物を不審者たらしめるのは、その腕に抱える大きな剣。
生徒たちに身振りで下がるように指示をして。
ローブの中に入れていた杖を構えてゆっくりと足を進める。
コツン、足音が響いた瞬間、その男が、ゆっくりと顔を上げた。
見えた耳にはいくつものピアス。
もこもこの帽子。
その下からのぞくのは鋭い瞳。
瞳を縁取るひどい隈。
”_セブルス_”
よぎるのはあのとき。
一週間だけこの場所で共に過ごした幼い友人。
私と同じ、胸の奥に深く深く、痛みを抱えて。
過去を変えたくて、苦しみ続けた。
突然現れたときと同じように、突然姿を消したあの子。
「・・・ロー?」
ぽつり、口からでた名前。
それに対して男はゆるり、首を傾けて。
かすかに瞳を開いて
「・・・セブルス?」
確かに私の名前を口にした。
ロー、どうしてここに。
その言葉を発せようとしたのに
にやり、ローは口角をあげて、
「・・・老けたな。」
とのたまいやがった。
「うるさい。」
ばこん、と手にしていた教科書でローの頭を叩く。
「ローお前は成長したな」
あのとき私よりもずっと小さかった背。
立ち上がったローは驚くほど高くて。
あのときすでに目つきが悪かった表情はさらに険しいものに。
入れ墨をみると自分の腕が、うずく。
「ああ、大丈夫だ。」
周りの生徒たちの怪訝そうな表情にため息をつきつつ言葉を探す。
「どこからどうみても不審者でしかあり得ない表情と態度と姿だが__」
「セブルス、言い方に悪意を感じるぞ?」
横やりを入れてきたローを無視して。
「__これの身元は私が保証しよう。」
私の言葉にローはぴたりと動きを止めて、口元をいびつにゆがませて困ったように、でも確かに小さく笑った。
※※※※※※
3 双子ローの存在を知って、異世界を知る
魔法使って異世界にいくよ
「なあ聞いたか、兄弟。」
「もちろんだとも、兄弟。」
同じ顔
同じ髪
同じ声
互いに目をきらめかせて、
違う口から言葉をもらす。
二人の目線の先には、獅子寮の天敵の薬学教授。
それからその前にいるもこもこ帽子の居候。
突如現れたその男、薬学教授の知り合いとか何とか。
校長の許可を得て、この学校に居候中の身であった。
皆が何者なのか、と興味津々ではあったが、あの薬学教授がそばにいることが多く。
さらにはあの人相である。
もちろん、この双子も例には漏れず、しかしながら人一倍の好奇心。
ばれぬように追いかけ回して先回りして、そうしてようやっと手に入れた、秘密。
「「異世界って本当にあるんだ!!」」
そうして二人は持ち前の頭脳を全く違った方向に動かした。
求めるのは異世界への渡り方。
未知なるものへと手を伸ばすために。
そして彼らは見つけだす______
※※※※※※
4 双子白髭のところへ
あれやこれや、試した結果、僕たちは思った以上に簡単に異世界とやらへ行くことができた。
そしてその世界で始めに出会ったのは、きれいなきれいな蒼い鳥。
ジョージと共に、それぞれの箒に乗って。
自分の世界じゃない世界の空を飛ぶ。
この世界がなんなのか、どういうところなのか、何一つわからないけれど、それはそれでおもしろくて。
下は海。
その青さは僕たちの世界と違いはなくて。
そんなときに見つけたのは宝石みたいにきれいな蒼。
それは僕たちを見つけたのかぐんぐんと距離をつめてきて。
あっと言う間に近づいてきたそれに、僕らは身構える暇もなく。
その色に、見惚れた。
「なにもんだよい、お前等。」
同時に発せられた人間の言葉に思わず目を瞬かせて。
ジョージをみる。
まあジョージも同じようにしているわけだが。
「どう思う、ジョージ。」
片割れに意見を求めれば、向こうもこてり、首を傾けて。
「俺たちは鳥の言葉がわかるようになったのか?」
同じようにこてり、首を傾ける。
「それとも?」
目を合わせて、にやりと笑って。
「「これが人間の言葉をしゃべったのか!」」
鳥にびしり、と人差し指を突きつけた。
「・・・安心しろい。」
その鳥は、鳥らしからぬため息を一つついてそう言った。
次の瞬間、ぶわり、蒼い炎が、あがって。
その鳥を包み込んだ。
「「・・・わお!」」
現れたのは、一人の男。
鳥と同じ眠たげな目つき。
ジョージと二人、感嘆の声を上げる。
ゆらり、最後の炎を消し去って、男はゆるりとこちらをみた。
「「鳥のアニメーガス!」」
「・・・なんだそりゃ。」
僕たちの言葉に男は怪訝そうに瞳をすがめる。
「なにって、違うの?」
「魔法でしょ?」
僕たちの言葉に今度は向こうがきょとん、として。
「魔法・・・?これは悪魔の実の能力だよい」
次に僕らがきょとんとする番だった。
※※※※※※
5 双子サッチ助ける
白髭の親父さんの船に乗って幾日かが過ぎた。
はじめは怪訝そうな表情だった船員たちも、僕たちをゆっくりと受け入
れてくれて。
いつだっておおらかに笑っている親父さん
僕たちを始めに見つけてくれたマルコ
おいしい料理を作ってくれるサッチ
太陽みたいに笑うエース
和服美人のイゾウ
優しくて強い”家族”たち
そんな人たちに囲まれて、充実した毎日を過ごしていたんだ。
___あの夜までは。
フレッドと一緒に探検と称して練り歩く船内。
次は甲板へ行こう、一致した意見に従い満天の星空の下へ。
そこで目にしたのは、
4番隊隊長、サッチ
そして、その後ろ、刃を、ふりおろす、
ティーチの姿
「「っ、プロテゴ!!!」」
叫んだのは僕か、フレッドか。
とにもかくにも、僕らが放った魔法は、見事にサッチを守ってくれて。
「なんだっ!?」
ガチン、見えない壁と刃がぶつかる音。
サッチが驚いたように振り向いた先、刃をかざすティーチがいて。
「「サッチ!!」」
叫んでばたばたとサッチに駆け寄る
ティーチは巨体に似合わず颯爽と僕らから距離をとる。
この世界の情勢はわからない。
それでも、僕らを受け入れてくれた、優しさをくれた彼を傷つける相手を正義だと感じるわけもなく。
「ティーチ!お前っ!!」
サッチが叫ぶ
サッチの視線はティーチの手にある一つの実。
それは確か、悪魔の実、と呼ばれるもので。
ティーチは、にやり、笑って、
簡単に、口に入れた。
「スティービュファイ!!」
「ステューピファイ!!」
フレッドと交互に魔法を放つ。
しかしながらそれらの魔法は確かにティーチに当たったのに、まるでなにもなかったかのように吸い込まれて。
「ゼハハハハ!!」
響く笑い声。
彼の体を真っ暗な闇が包む。
ティーチはそのまま船の外へと降りていく。
そこは海。
能力者が一番おそれる水のはずなのに。
慌てて下をのぞき込めばそこにはいつの間にあったのか、一つの船。
「家族ごっこはもう十分だ!」
それに飛び乗ったティーチはそんな言葉を投げ捨てて。
「まて!ティーチ!!」
「「サッチストップ!」」
叫ぶサッチが海に飛び込もうとするのを必死に押さえる。
騒ぎに気づいたクルーたちが勢いよく外に飛び出てきて。
サッチを止める僕たちに加勢をしてくれた。
そして、
サッチを抑えるのに必死だった僕らは気が付けなかった。
家族思いのエースが単身でティーチを探しにいったなんて___
※※※※※※
6 双子頂上決戦 エース助ける→行方不明
太陽みたいに、笑う奴なんだ。
馬鹿みたいによく食べて、よく寝て。
僕らのことを弟みたいにかわいがってくれて。
だからこそ、死なせたりなんか、しない。
戦いがあふれる戦場。
僕とジョージは箒にのって、空から戦況を把握する。
時折向かってくる攻撃にはプロテゴを唱えて。
倒れる仲間にはエピスキーを。
敵には遠慮なく攻撃の魔法を
そして、向かうのはエースがいる処刑台。
そんな場所、エースには似合わないから。
途中で弟だと叫んだ麦わら帽子を見つけて、箒に引っ張り上げる。
乗せたままエースのところへ。
「「「エース!!」」」
叫んだのは三人同時。
「ルフィ、フレッド、ジョージ・・・!?」
驚きに目を開くエース。
その後ろ、体を大きくしていく海軍。
「プロテゴ!!」
「アグアメンティ!!」
叫んで、守って。
引っ張って。
そして、エースを引っ張り出す。
「助けに来たよ、エース!!」
「早く帰ろう、あの家に!」
ルフィとエースをそれぞれの箒に乗せて、向かうのは白髭の船。
後はさっさと退散する。
それだけ
それだけ、だったんだけど。
覚えているのは紅い炎。
エースに向けられたそれに、必死で呪文を唱えて。
呪文によって守られたエースを、みて、安心、
し、
て、
気が付いたら、僕とジョージは、ホグワーツの廊下に、座り込んでいたんだ。
※※※※※※
7 マルエサッチが魔法世界へ
最後の決戦あたり 皆を助けながら双子を助ける
「マルコ」
「僕たちも戦うからね」
俺の後ろ、今にも前に出ようとうずうずする二人の双子。
「あんまり前にですぎるんじゃねえよい。」
後ろ手に二人の頭に手をやって、くしゃり、一度だけ撫でる。
そうすれば二人はきょとん、とした後恥ずかしそうに笑い合って。
「マルコって」
「ビルみたいだ!」
くすくすと笑う二人。
それはこの戦場にはあまりにも似合わない。
「でも大丈夫!」
「「僕たちには魔法があるからね!」」
びし、と一転何の変哲もない棒を俺に突き付けて二人は言った。
魔法
それはこの世界には存在しえないもので。
だが、この二人によって何度も目にしているためそれは俺らの家族の中では常識になっていて。
「頼りにしてるよい」
その言葉にふたりはにっこりと笑った。
そう、笑っていたんだ____
「「アクシオ!!」」
箒に飛び乗って二人は颯爽と前線へ向かっていった。
襲いくる敵には遠慮なく攻撃呪文を唱えて。
時折倒れる仲間には癒しの術を
そして、守りの呪文を口ずさむ。
気づけば双子は弟と共にエースのもとに。
エースを連れて、弟を引っ張って。
俺たちのところに戻ってきた。
否、戻ってくる途中、赤犬の、攻撃が、
エースを、
双子、を___
「マルコ!!」
呼ばれる名前。
は、っとなって視線を声の方向に向ければ、そこにいたのはエースとサッチ。
思わず、手を伸ばしてエースの腕に、触れた。
「また、あの二人が消えた夢を見たのか?」
エースの言葉に返事はせずに一つ、息をはく。
「あー・・・マルコさん?」
サッチの声。
ゆっくりとサッチを視界に入れれば困ったような表情。
無言で先を促せば、サッチはそっと周りを指さして。
それにしたがって辺りを見回す。
と、そこはどこかの建物の中のようで。
「・・・ここはどこだよい。」
「知らん!」
俺の言葉にサッチは苦笑。
エースはにぱり、笑って。
再度、ため息。
立ち上がって周りをじっくりと観察すれば、ここはどうやら大きな建物の中。
いくつか見える額縁には誰もいない。
ちらり、今まで夢に見ていた双子の姿が浮かぶ。
ぴりり、感じた殺気。
それは戦い特有のもの。
ざ、っとそちらを見るが長い廊下が続いているだけで。
「エース、サッチ」
俺の声に応え。
三人で顔を見合わせて。
姿を不死鳥に。
二人を先導するように廊下を飛ぶ。
そして、その先にいたのは___
同じ顔
同じ髪
同じ声
夢見ていた双子の姿。
そして、彼らに向けられるいくつもの、杖。
「フレッド、ジョージ!!」
叫ぶ。
それに反応するように、二人はこちらに目をやって。
驚きで見開かれる瞳をそのままに
向けられた杖の合間に潜り込む。
炎をちらして、人の姿に。
「俺らの大事な家族に手、出すってんなら許さねえよい。」
※※※※※※
8 ロー2年後トリップ
最終巻(セブルスを治すよ)
以前、二度、感じた感覚。
たゆたう世界。
ゆっくりと浮上する意識。
そのたびに、俺を見つけたのはあいつだった。
俺を受け入れてくれて
俺を庇護してくれて
俺を見送ってくれた。
だからこそ、俺はいつだってこの感覚を甘んじて受け入れられたんだ。
ただ、今回だけは、違った。
真っ暗な場所。
かすかな月明かり。
その中、光に照らされるのは、黒だけを身に纏った男。
そしてそれにすがりつくようにする三人の少年少女。
ゆっくりとそちらに足を進める。
カツン、響いた音に三人が振り返り、見慣れた棒をこちらに向ける。
「誰!?」
少女が叫ぶ。
けれどそんなことどうでもよくて。
「・・・セブルス・・・?」
呼んだ声は自分のものとは思えないほどにかすれている。
一歩、また一歩足を進めれば、鉄のにおいが充満していることがわかって。
「この人に何のようですか。」
めがねの少年が立ち上がり、棒を俺に向ける。
ゆっくりと視線をそちらにやればかすかに少年の体がふるえて。
額に見えた傷跡。
よみがえる記憶。
過去の罪の償いとして、その瞳を持つものを守るのだと。
セブルスはしかめっ面でいつだってそう言っていた。
ああ、そうか。
これがセブルスが守るべき子供だったのか。
ゆっくりと手を伸ばしてその少年の髪に触れる。
驚いたように瞳を見開く少年。
「___死ぬな。」
くしゃり、撫でて、離す。
「セブルスの意志を、無駄にはするな。」
その言葉に困惑の色を見せる。
おそらく知らないのだろう。
自分が守られていることを。
ならば、知らないままでいい。
セブルスがそれを望まなかったのならば、そのままで。
「用が終わったならいけ。」
一歩、また足を進める。
めがねの少年を通り越して、残りの少女もすぎて。
もう一人の少年を横目に、セブルスのそばに立つ。
手を伸ばして、触れる。
ひどく冷たい。
顔色は最悪。
ローブは液体を吸いすぎて、重く。
でも、まだ、生きている。
「Room」
唱えるのは、言いなれたフレーズ。
発動させるのは、悪魔の能力
驚いた表情を見せた三人に笑って見せて、さっさと行けと追い出した。
「さあ、オペの時間だ」
見知らぬ俺を無条件で受け入れてくれた、優しくて不器用な友人を、
死なせはしない。
※※※※※※
9 大円団
気が付けば、すべてが終わっていた。
痛みの次の記憶はリリー。
ふわり、笑って、近づこうとした我輩に首を振る。
まだ、だめだよ、とそうささやいて。
光の方向へ指をさした。
ゆっくりと瞳を開けた先には、懐かしい人物。
鋭い目つきと病的なまでの隈を携えたそいつ
「目を覚ましたか、セブルス。」
我輩の名前を確かに呼んで。
疲れたようにため息を吐いた。
そのまま向かったホグワーツ城の正門。
そこには蒼い炎と紅の炎が立ち上る。
何が起こっているのか理解できず呆然としていれば、隣のローが動いて。
「そこで待ってろ、セブルス。」
ゆっくりと足を踏み出して。
「ちょっと元凶を倒してくる。」
そんな物騒なことをのたまった。
元凶、だとか、そんなもの、一つしか思い浮かばなくて。
慌ててローの背中を追おうとした、が、
「不死鳥屋、火拳屋、俺の場所を開けろ。」
そこからの戦況については___何も言いたくない。
一つだけ、言えることといえば。
悪の帝王は倒された。
異世界からの訪問者によって。
それこそ、圧倒的な能力差で。
そしてその訪問者はというと___
「セブルス。茶」
ごろごろと、我輩の部屋のソファにてくつろぐ男。
トラファルガー・ロー
この男は未だにこの城にいすわり続けている。
というのも、どうやら異世界へのわたり方を理解したらしく、3日に1回くらいのペースで現れるのだ。
それはローに限らず、あの日、炎を纏っていた男たちも。
「我輩は貴様の茶くみではないのだが?」
どん、と音を立てて紅茶を机に置く。
「それでも入れてくれるだろう?」
口角をあげて、笑う。
もう溜息しか出ない。
「なあ、セブルス」
くつくつのどの奥で笑う声。
それはそれは楽しそうな響き。
「どんなに偉そうになっても、俺はお前を昔から知ってる。」
ゆっくりと紅茶から目を離して我輩を、見る。
「そしてお前も俺を昔から知ってる。」
それをまっすぐに見ることができなくて、そっと目をそらした。
「俺を見限れないだろう?」
あまりにも楽しそうに、真実を述べるものだから。
どうしようもなく悔しくなって。
「エバネスコ」
カップの中身を消し去ってやった。