小説









御品書

例によって例の如く、趣味満載。
いつもとちがいシリアスしかない。
さらに死ねたあり。(話の前に表記はします。)
過激表現、というかどの話にも基本紅い色が混じります。






1 ここ
2〜4 卒業後、逢う
    (年齢操作満載。死ねたあり。忍たまが忍たまを殺すという表現あり。)
5 バサラ幸村と佐助(死ねた。)
6〜10 はじめての
    (はじめて人を手に掛けた時のお話。四年生四つ+最後に夢主。)




とりあえずどどどシリアス。

あ、無理と思ったかたはクイック&ターンして決めポーズをとってから全力で逃走してください。

















大丈夫でしたら、どうぞ































壱、私は私でないのだよ、もう















わかっていた

本当は心の底からわかっていた


こんな日はいつ来てもおかしくはないのだと




「お久しぶりです、先輩」



もうあの頃の私はいないというのに、私を私だとわかるはずがないというのに、



なのに



なぜ君はあの頃と同じ顔で笑う?


私はもう


あの時の顔をしていないのに



「お元気そうでなによりです。」



なぜ君は同じ声で私を呼ぶ?



私はもう



君に触れられるほど清い体ではないというのに






そんな無邪気な顔を、見せないで


そんな素直な目で、見つめないで



私は、もう君の名前を呼ぶことなどできないのだから



「何のことだい?私は君など、知らないよ―――」



君の瞳が悲しげに笑った


















三郎視点 庄にであう。
(変装は見破られないくらいになったはずなのにどうして私だと?
ばれてようと必死で隠すよ。だって、私は君と戦いたくなどない。
避けられないのであればあの時の私ではない私と君は戦うのだ)















弐、変わらぬ姿は悲しくて















まさか、こんなとこで



ただ、その思いが脳裏をよぎった。


目の前で首をもたげる朱色の美しき彼女


彼女がいるということは、つまりそう言うことで





「じゅんこ。こちらに。」




気配に目を向けることもなく、そっとその声の方へと這っていく彼女。


振り向くか、向くまいか


瞬時すれどもそれはすぐさま無駄なものに変わった



「お久しぶりですね。」


その言葉に、懐かしき声に


「ああ、そうだな。お前も、彼女も、元気そうでよかったよ。」



気づけば振り向いていて、


気づけばそんな阿呆な言葉をかけていた


そいつもそう思ったのだろう



くすり



闇の中にあわぬ笑みを浮かべてそこには微かな呆れも含まれていて





「あなたも、変わっていなさそうでなによりですよ。」




笑う笑みの向こうにどす黒い未来を見た。

















八視点 孫兵にであう(+じゅんこ)
(なんで出会ってしまうのだ。ああ、よく見れば君の瞳も汚れてしまっている。
でも、それ以上に俺の方が真黒だ。
でも、お前が彼女を身につけていることに安心したのも本当で。
ごめんごめん。今から俺は自分のために刃を取ります。)
















参、獣の私を止めておくれよ














:片方が片方を殺してます (滝とこへ)



















せんぱいせんぱいせんぱい



気づいた時には遅かった


目の前の影の首元につけた刃は紅く染まる。


目の前のその子は、あの時と変わらないまっすぐな目で私を見つめていて。


「先輩先輩先輩、」


あのときよりも低くなった声で私を呼ぶ。


時折ひゅうと空気が漏れる音。


それらが直接に脳に浸透する。


「こへい、た先輩。」


手を傷だらけの手を私の頬に添えてふわり笑む。


あの頃とおんなじ、高飛車な笑みで、自慢げな笑みで。


「た、き、・・・?」


「おひさし、ぶりです」


頬のぬくもりでようやっと意識が正常に近づいた。


「たきやしゃまる」


からり


地面に落ちる金属は、乾いた音とともにその場に転がる。


横たわる滝の顔にかかる髪を払おうとその顔に手を伸ばせば気づく



手が、紅く紅く染まっていることに



「あ、」


それにふわりまた微笑んで滝は私の手を取った。


「先輩、すごいでしょ?私、ここまでちゃんと生きてます。」


自慢げに誇らしげに告げるものだから、頷くことしかできなくて。



ほてり



、と私の手は滝の頭の上に乗せられて。


まるで褒めてくれと。撫でてくれと言わんばかりに。


「すごい、な、滝は」


それに今までの中で一番綺麗に笑った滝はそのまま目を、閉じた。








紅い手、


地面は紅く紅く


空の月までもが赤く染まる




そうして私はこの世界での足かせをまた一つ失った。


























こへ視点 滝
(どうして私の前に現れてしまった?
私はどんどんわたしではなくなっていってるというのに、どうして君はあの頃と変わらぬ目で私を見たの?
ああ、ごめん。君に面と向かってごめんと言えない私を許して。)



(補足:こへは卒業する時に体育委員皆に私に会うまで死ぬなよ!とか言ってたんです。
小平太はどんどん人を手に掛けることにちゅうちょしなくなっていく。
だけど、それを止めるのは学園の中で過ごした大事な友人だったり後輩だったり)
















肆 最後に残るのは約束という名の束縛







「さすけさすけ!」


「はいはい、なんですか?」



名前を呼ばれるのにはもうなれた



「佐助佐助!」



「またお団子ですか?」



呼びかけられるたびに用事がわかるようになった



「佐助、佐助」


「ここに。」




仕事の時は本当に冷徹なお人になるのだこの人は




けれども



「さす、け・・・」


「旦那・・・」





そんな泣きそうな笑顔で名前を呼んでほしくなどなかった。





「佐助、」

「っ、なんでっ」


赤色はあなたの戦装束だけで十分だというのに


「さ、すけ」

「だん、な、」


いつもの穏やかな低い声はどこにあるんです?


「なんて顔をしておるのだ。」


「っ、旦那、こそなんでそんな、」


優しい瞳は何を映しているのです?


「そんなんでは、御館様に、笑われるぞ」

「旦那、もそんなんじゃ大将に笑われますよ」


俺に向けられるあの笑顔は?


「ははっ違いない、」

「っ」

いつもの覇気のないその姿に自分でも驚くくらいに恐怖する自分がいた。


「さすけ」


「っ、はいここに。」


そんな状態だというのにいつものように、仕事の顔を見せて。


「最後の、命、だ」


「旦那っ!」


ああ、そんなこと聞きたくはなかったのに


「生きよ」




「、御意、にっ」




そんなことを言われてはもう俺は自ら死ぬことなどできなくなったではないですか!


どうしてあなたは、俺を生きてる間も死んでしまってからも、縛り付けるのです?!



「さすけ、」

「さすけ」

「さすけ」


名前を呼ばれてしまえばもう、従う以外の法などない。






「さすけ」




俺を呼ぶあなたはもういない。





(最後に残ったのはあなたが残した残酷な命令)

















ひとつ、 滝夜叉丸










手が紅く紅く染まる。


それは私の罪。


どうやって学園まで帰ってきたのか、はっきり言ってわからない。


気づいたら目の前に小平太先輩がいて。


いつもと同じにぱりとした太陽のような笑みを浮かべて


「おかえり」


笑みに


「疲れてるだろう。」


声に


「ゆっくり休め」


頭に触れた温かな手に


「せん、ぱ、い」



こらえていた涙が零れた。




「せんぱい、せんぱいせんぱい!!」


その手を辿って、小平太先輩の体に温もりに縋りついた。




「せんぱいっぃ__」


温かな手がゆっくりと頭をなでるその感覚にもう涙が止まらなくて


「わたし、」


ああ、縋りつくことすら怖い。


この手は紅く紅くそれはまるで私の罪を責めるようで


「このて、でっ」


もうこんな手ではあの子たちには触れることなどできない。


「わたし、は私はっ、この手でっ、人を___っ!!」


ふわり


撫でるだけだった手が背中に回った。


ぎゅうときついくらいに体中が温もりに包まれた。


「滝夜叉丸」


緩やかな低い声が耳朶に響く。


「私の心臓は音が鳴っているだろう。」


とくんとくん


その音は私の中に浸透していく


「これが私の生きている証だ。」


とくんとくん


「滝夜叉丸にもこれがある」


とくんとくん


「お前はそれを守ったんだ。」


体が緊張をゆっくりと抜いていくのがわかった。


「そしてお前はそいつらの分も生きるために生きているんだ。」


「忘れるな。滝夜叉丸、お前が生きていることでそいつらはお前の中で生きてるんだ。」


「忘れるな自分が奪ったものたちのことを」


ほとりほとり沁み込む声はそう、ゆっくりと私を癒した。






(わたしはこれからもひとをてにかけるのでしょう。いきるために)













ふたつ 喜八郎













背中にある温かな温もりは何も言わずそこにいた。


「先輩」


「なんだ。」


「簡単だったんです。」


人ってあんな簡単に駄目になっちゃうんですね


あんな簡単に消えちゃうんですね



あの感覚が消えない





体を洗い流しても消えない色


におい


体中に沁みついてるようにも思えて。


こんな体じゃ、後輩たちの前にも行けない



仙蔵先輩の背中はあったかくて、胸の奥にしまい込んだ何かが溢れそうになる。


「私は、汚いです」


「体中が赤くて」


「この手は誰かにとって大事な人の命を」


ふわあり


頭からかけられたのは緑色の布。


先輩がかけてくれたのであろうそれは私の視界を遮って。


「喜八郎」


朗々とした声は背中を通してゆっくりと耳に響く。


「お前はどこも汚くなどない」


一度切られた言葉は淡々と続く。


「私は汚らわしいか?」


まさか。


あなたはこの学園で一二を争うほどに___


「綺麗、です。」


「だろう?」


間髪いれずに帰ってきたその返事に、ああ、仙蔵先輩だなあ、と思う。





「お前も、綺麗だ。」



珍しく褒められた気がする。


ぼおっとした思考のまま考えていればまた次の言葉。



「これから先何があっても忘れるな。



        自分が人の命を奪ったことを。」




「そして心は清く美しいままでいろ。」



「お前はそれができるほどに強いのだから。」


ぽすり頭の上に新たな温もり


やわりやわりと撫でられる感覚。


ああ、やめてください。


そんなことをされたら、



「覚えていなさい」



「忍びであろうと心まで穢すことは許さない」


こらえきれずほろり流れ出た滴を緑の布に顔をうずめてぬぐった。





(ゆるされるのならばあなたのようにつよくけだかく)











みっつ 三木エ門






「三木エ門。」



それは誰のものだったっけ


「三木エ門」


それはいったいなんだったっけ


「三木エ門」



ああ、それは確か名前だ



「三木エ門」


それは私の___


「三木エ門」


何度も何度も呼ばれてようやっとそれが自分のものだとわかった。


うろりうろり回る目を僕を呼んだ人に向ければそこには、緑をまとった男の人。


返事をせずに彼が誰かを認識しようと考えていれば、その人は近づいてきて。


「っ、」


咄嗟に距離を取らなきゃと、誰かわかっていないのに近づいてはいけないと、さまよう頭で考える。


だが距離を取った瞬間その男は僕の腕をつかんで引っ張った。


「っ!」


驚いて暴れればぎゅうと腕の力が強まって。


「三木エ門」


「もんじ、ろせんぱ、い・・・?」


再び呼ばれたそれにようやっとその声の主にたどり着く。



それにそっと耳元で聞こえたため息。


びくり


呆れられたのだろうか


私がやったことはやっぱりもう、駄目で、



でもぎゅうと体に回った腕が優しく強く頭をなでてくれて。



ぽつりぽつり話される言葉が耳に直接響く。





「良く帰ってきたな


お前は生きているんだ


俺はただそれが嬉しい


お前が生きていることが嬉しい」


それは本当に嬉しそうでさっきのため息は安堵からのものなのだと納得した。


「お前は確かに人を殺した


それから目を背けるなよ


お前は生きるために相手を殺したんだ


人の命の上に俺たちは生きてるんだ


俺たちが相手の命を奪ったことを絶対に忘れるな」


僕が口を挟まないからか文次郎先輩はずっと話を続けていて、話の途中で震える僕を優しくなだめてくれた。


「せんぱい、せんぱい」


ゆっくりとまどろんでいく意識の中回らない下を懸命に回して思っていることを伝える。


「せんぱい、私の手はひどく汚れているのです。」


「汚れているのであれば俺の方がよっぽどだ。」


それを鼻で笑って先輩は答えた。


「せんぱい。私の心はひどく醜いのです。」


「生きたいという感情は醜くなんてない」


俺も持っている


ほとほと流れる涙は先輩の衣装に吸い込まれてく。


「せんぱい、私はあの子たちに触ってもいいのでしょうか」


「俺は一度だってお前たちに近づくことを躊躇したことがあるか?」




いつもとは違うその優しさに、ほとりほとり溢れる涙をそのままに。


薄れる意識に身を任せて


疲れ切った体を闇に沈めた。






(あなたがわたしのせいをよろこんでくれるのならばあなたのためにいきましょう)











よっつ タカ丸






生々しく残る感覚。


洗い流したはずの赤がいつでも見えて。



簡単だったんだ


こんなものなのか


と思ったのだ。


人の命を奪うということはこんな簡単であっさりしたものなのか、と




ああ、こんなことなら、僕にだって簡単に人を殺すことが


       で   き   る


   なんて


そう思ってしまったんだ




ああ、なんてなんてなんて


    僕は醜い



「タカ丸さん?」


名前を呼ばれて、顔をあげれば心配そうに僕を見てくる二人の後輩。


水色をまとった伊助がそっと僕に手を伸ばすものだから、無意識に体が後退した。


「どこか具合悪いんですか?」


三郎次までもが心配そうな表情を浮かべるものだから、ふにゃり安心させるために、笑う。


「大丈夫だよ〜」


それに見えるからにほっとした表情をした二人。


でも、離れた距離、近づくことはできなくて。



だって、ね、君たちを汚したくはないんだよ。



こんな手で、こんな心で触れてしまえば



君たちは受け止められずに穢れてしまうでしょう?





ふにゃりふにゃり笑って全てをごまかすかのように笑みを浮かべて。


近づかないでと雰囲気を押し出して。



なのに、


なのに


「タカ丸さん」


呼ばれてふりむけば年下の先輩がむすりとした表情。


そのままずかずかと近づいてきてぐしゃり僕の頭に手を置くものだから、慌てて逃げようと体が動く。


でも、兵助君から逃げれるはずなくて、ぐわりぐわりそのまま頭をかきまわされる。


「わわ!兵助君!」


慌てて声を張り上げればそのまっすぐな目が僕を突き刺す。


「お疲れさまでした。」


不意に発せられたものは予想もしないもので。


ああ、そうか


と思った


この子は、ううん、滝たちも僕なんかよりずっと早くこれを体験したんだ。


僕よりもずっと不安定な場所にいるんだ。


みんな僕よりも小さいんだ。


「おかえりなさい。」


「、ただいま。」


僕の存在を許可するようにこぼされた言葉に、嬉しくて泣きそうになる。


「あ〜!先輩ずるい!僕も頭なでてほしいです!」


「タカ丸さん、僕らから逃げたのに、兵助先輩の手には触るんですか!?」


小さな二人が転がってきて我先にと僕に、兵助君に触れてくる。



その温もりは小さくそして強く。




ああ、この子たちを守れるのであれば、守るためであれば




僕は何度だってこの身を赤く染めよう。






この子たちを守るためならばこの手を汚すことなど怖くはない






(これからさきたとえなんどでもきみたちのためにぼくのために)



















次は宵闇夢主。
いやな方はバックプリーズ
























いつつ









目の前は真っ暗。


でも先ほどまでの赤は未だまぶたの裏に滲んで見えて。




「師匠・・・」


そこに残ったのは途方もない消失感だけだった。



自らの身を守るため自らの手で相手の生を奪った。


それは許されることでは、ない。



「師匠、」


紅い手を、紅い人を見ないように師匠が俺の目をふさいでくれたけど、



感じるぬめりは、


鼻を突くにおいは




消えない。




「師匠」


以前の世界であれば俺はもう殺人犯で


「師匠、」


以前の俺であれば、こんなことできるはずがなくて。


「師匠」


この世界で生きるには俺はまだこの時代を知らなさ過ぎるのです。


「師匠」


この世界で生きていくにはどうやら俺はまだ弱すぎるようなのです。



「ししょう」


「何ですか?」


幾度目かの呼びかけでようやっと師匠の返事。


「俺は人をあやめました。」


「そうですね。この人の命を奪ったのはお前です。」


俺の言葉に正解を与えるように返される言葉。


「俺は罪を犯しました。」


「そうですね。どのような理由があろうと人の生に終止符を打つのは人であってはいけないのです。」


目は隠されたままだから俺の視界は真っ暗で。


でもそのおかげで気持ちが落ち着いていくのがわかって。



「師匠俺は___」


「覚えておきなさい。お前は罪をかぶって生きていくことを。お前が生きていることは全てにおいて罪の上にあると。」



俺の言葉を遮って告げられたのはそんな言葉で。





「それでもお前は生きなさい」





ゆるり心の奥にそっと忍びこむその言葉は俺の感情を、溶かす。



ほろほろ流れ出した滴。


師匠の手に吸い込まれていくその水分




「さあ、きょうはゆっくりと休みなさい。」



そっと体の力が抜けていく。


師匠の言葉を最後に俺はゆっくりと闇に身を任せた。




(いきるためいきるためそうしておれはきょうもつみをおかす)














宵闇夢主と師匠。






お付き合いありがとうございました!