ドリーム小説
















彼女の”一番”













三之助の場合___


。」

一日の授業が終わった時間。

解放された生徒たちは生き生きと教室を出ていく。

三之助が声をかけたも例外ではなく。

「どうしたの?三之助君」

その背中を呼び止めて、くるり、髪をなびかせて振り向く。

柔らかな表情にこちらも小さく頬をゆるめて。

今日は彼女のバイト先は定休日。

七松先輩に確認済みで。

「この後元体育委員会で遊びに行くんだけど、来る?」

過去、の世界で関われなかったことが彼女にとっての傷で。

だからこそ、今、この世界であの世界でできなかったことをたくさん手に入れたがる彼女だから。

は一瞬きょとん、とした後ぱあ、っとまぶしいほどの笑みを浮かべて、一も二もなく頷く___


はずだった、いつもであれば。

「せっかく誘ってくれたのに、ごめんなさい、三之助君」

いつもの笑みは、困ったようなものに。

眉は悲しげに潜められ、その口からこぼれたのはまさかの、否定。

「今日はちょっと用事があって・・・」

それこそしょんぼり、とばかりに肩を落とされればこちらとしてもなにも言えず。

「ん、わかった。」

言葉少なにそう返すことしかできなかった。








孫兵の場合___



「孫兵君」

穏やかな声。

それはここ数ヶ月で聞きなれたもの。

ぼくたちの世界をつなげてくれた、強い少女のもの。

「どうした?」

こちらも同じように返事して、言葉の先を促す。

そうすれば彼女はふにゃり、笑って。

「また今度、じゅんこちゃん、触りに行ってもいい?」

彼女からもたらされたのは、僕の愛する相棒の名前。

以前望まれるがまま出会わせた二人はびっくりするくらいに意気投合してしまって。

僕が嫉妬するくらいに、じゅんこは彼女になついた。

でもじゃれあう二人をみるとひどく穏やかな気分になれて。


「望むなら、いつでも。」

小さく笑ってそう伝えれば、ふわり、それはそれはきれいな笑顔。

そういえば今日はなにもなかったな。

思いついたそのままを言葉に乗せる。

「・・・今日でもいい。」

そう言えば彼女はぴたり、動きを止めて。

「・・・ごめんなさい、今日はちょっと、先約が。」

さっきとは違う、困ったような笑み。

そういう表情がみたいんじゃないんだ。

手を伸ばして彼女の頭をそっと撫でる。

「いつでもいいから、また声をかけて。」

ようやっと、彼女はきれいにほほえんだ。










勘右衛門の場合___


!」

駅前にできたスウィーツショップ

男だけで行くには少々花が足りない。

甘いものが好きな女の子、そう考えればたどり着くのはあの子で。



思いついたらすぐ行動。

お昼を食べようとしていたを捕まえて高等部の屋上へとつれてきて。

、一緒に行こう!」

元、5年生組で彼女を囲んで。

にこにこ、伝えれば彼女はふわり、笑う。

「いいですね。ここ、すごくおいしいんです!」

それに、思わず言葉が止まった。

「行ったことあるの??」

雷蔵が驚いたように問いかける。

だって、ここが開いたのは3日前で。

「早いな!」

情報に疎い八が目をぱちくりと瞬かせて。

だって、八はこの話をするまでまったくもってこのお店のこと知らなかったから。

それに彼女はかすかに頬を染めて、どことなく恥ずかしそうに頷く。

「・・・誰と??」

三郎がちらり、興味なさげに問いかければ、彼女の頬はますます赤に。


「・・・秘密、です。」


ふにゃり、それはそれは、甘やかしい表情に変わって。

ぴしり、空気が凍った。


、頬が赤い。風邪か?」


兵助、頼む、空気呼んで。







兵太夫の場合___


「あれ、先輩・・・?」

は組メンバーで放課後をうじゃうじゃと練り歩く。

皆が興味あるものは全く違うから、別に行動すればいいのに、それでも自然とみんな集まってしまうのは、昔からの習性か。

だれかが上げた声。

呼んだ名前は僕らにとって、この世界で忘れることのできない人物のもの。

僕らにとって、恩人で、かけがえのない。

そして、僕にとっては愛しい人。

そんな彼女の名前を聞けば、反応しないわけには行かなくて。


「きれいにおめかししてるねぇ。」

「時計を気にしてる、ってことは、誰かと待ち合わせかなあ?」

喜三太にしんべヱが穏やかに言う。

「かわいいね、先輩。」

「今日はバイトがないんだね。」

「私服ってことは、わざわざ一回帰ったんだね。」

きゃっきゃと団蔵が、虎若が、金吾が。



「誰が相手?」

「女の子だよね?」

伊助と乱太郎がこてり、首を傾けて。


「兵ちゃん、邪魔しちゃだめだよ。」

三次郎が、まるでくぎを打つように、僕に言って来るものだから。

小さく舌打ちをもらす。


「誰かきた。」

庄左ヱ門の発言に、ぼくと、それからきり丸がそちらをガン見する。

「誰だ、あれ。」

背の高い、どう考えても男の人。

彼がきたとたん、ぱあ、っと先輩の表情は明るくなって。

頬は赤く染まって。


いら、っとした。

そのまま男の人はそっと先輩の肩に、触れて、優しく誘導をし始めて___


「「!!」」

最後にその男の人は、ちらり、僕らに目をやって、それはそれは楽しそうに笑った。


「兵太夫」

「きり丸。」


思わずお互い名前をよんだ。

ひどく冷たいのは気にしちゃいけない。


「あれ、尾行するよ。」

「もちろん」

あんな得体の知れない輩に、先輩をまかしてはおけない!!












「_____で、撒かれたわけか。」


薄暗い部屋の中、言葉を発したのは作兵衛。

それに対してむすりと表情をゆがませるのは話し手であった兵太夫。

ここにいるのは、と同学年の6人、+勘右衛門、きり丸に兵太夫。

そして、面白がってついてきた喜八郎に仙蔵と小平太。


題材はについて。

最近のつきあいの悪さ、不自然さ。

それらに気がついた同学年たちが、緊急会議を行い、そこにそれ以外が乗り込んできた形だ。

「ふむ、それは完璧に黒だな。」

それはそれは楽しそうに仙蔵は告げる。

ちなみに喜八郎は対照的にむすりとしている。

「最近バイト中でもそわそわしてるな!」

からからと笑うのは小平太。

ほかの皆はテンションが下がっていく一方だ。

「・・・は組だとしても立派な忍、それを簡単に蒔くってことは___」

「元、僕たちの関係者、ってことだよね。」

孫兵の言葉を継ぐのは勘右衛門。

その表情は困ったように。



「でも、何よりも、に彼氏・・・がいるって、ことだよな・・・。」

籐内が沈んだ声で言う。

言葉にすればそれはさらに現実味をまして。


別に彼女に彼氏ができたことがいやなわけではない。

確かに、幾人かは、彼の少女に思いを抱いてはいるが。

彼女の幸せを願わないほど、ひどい性格はしていないわけで。


「もう一緒に遊んでくれないのか・・・?」

しょんぼり、同学年の中で一番にいろんな意味でなついていた左門がつぶやく。

孫兵は首もとのマフラーにそっと触れて。

先輩、最近俺らとも遊んでくれない。」

きり丸も沈んだ声をあげて。

そう、なによりも怖いのは、彼女が僕たちにかまってくれなくなること。

ちゃんが離れてくのは、少し怖いね・・・」

数馬の言葉に皆が無言で肯定を示す。

僕らをつなぎ止めてくれた彼女だからこそ、

彼女がいなくなることに、恐怖を覚えるのだ。



また、以前のような関係に戻ってしまうのではないか、と。



「こんなことならさっさと手に入れとけばよかった。」


ぼそり、響いた不吉な言葉。

瞬時、しん、となるその教室。

そして次の瞬間皆がそちらに一斉に顔を向ける。


「今のは聞き捨てなりませんね、次屋先輩」


兵太夫が笑顔で圧をかけて。

しかしながら三之助はそれをものともせず。


「三之助、を手に入れたいならまず私を倒せ!」

「七松先輩は無理です」

小平太の言葉に冷静に返して。


「次屋、埋めるよ?」

「やれるもんならどうぞ。」

喜八郎の無表情に、無感動に返し。



「三之助、ややこしい発言をするな・・・」

「ん?俺、本気だけど?」

孫兵の言葉ににやり、口角をあげて笑った。



ぴりり、とした空気がその場に広がる。



が、



「というか、の彼氏って、どんな人だろうね?」


勘右衛門の言葉に皆の意識がずれて。





「・・・今こそ、あの世界で学んだことを生かすときだ。」

作兵衛がそう言って立ち上がった。







「皆、なにしてるのかな?」

さりげなく忍スキルの高いに見つからないように、尾行した結果。

レストランで彼女が席を立った瞬間、まさかの彼氏(仮)に見つかった。

ぴしり、動きを止めた三年生+きり丸、兵太夫。

ちなみに一緒に尾行していたはずの喜八郎から上の学年のものたちは気づいたら姿を消していた。

上級生、やばい。

三年生の頭にそんな単語が浮かんだ。

「・・・あれ、利吉、さん??」

動きを止めていたきり丸がぽろり、こぼした言葉。

それに皆も動きを再会して。

「あ、本当だ、利吉さんだ!」

「お久しぶりです。」

皆口々に言葉を漏らす。

「はい、久しぶり。ということは、やっぱり皆過去を覚えてるんだね」

にこり、さわやかな笑顔。

なんとなくが惹かれるのも納得行きそうになって、あわてて意識を集中させる。


「利吉さん。」

兵太夫がじ、っと彼を見つめて声をあげる。

とつきあってるんですか?」

それを継ぐように、三之助がずばり、直球で言葉を投げる。

後ろで数馬や籐内、作兵衛がうなだれているが気にはしていないようで。


「ん?ちゃん?」


きょとん、とした表情をみせて、そしてにやり、人が悪そうに利吉は笑った。


「つきあってる、っていったら、どうする?」


瞬時、広がる緊張。


だが、


「皆、どうしたの??」



ふわり、戻ってきたによってその表情は穏やかなものへと変化した。






「利吉さんが、私の彼氏・・・?!」


その言葉にぶわり、の顔は真っ赤になって。

全力で首を、腕を横に振る。


もうそれだけで、答えはわかったようなもので、小さく安堵が広がった。


「そういえば、昔からは利吉さんにあこがれていたな。」

いつのまにやら舞い戻ってきた仙蔵があっけらかんとそう告げる。

「確かバイト先に利吉さんが来たのがきっかけだよな!」

小平太はすべてを知っていたとばかりに満面の笑み。

「あのお店も利吉さんに連れていってもらってたんだね」

「行きたいなあっていったら、連れていってあげようか、って。」

勘右衛門の言葉に恥ずかしそうには頷く。

「はじめは断ったんですけど、甘いもの食べに行くのに男一人は恥ずかしいって・・・」

皆が無言で利吉を見る。

にっこりと、それはそれはいい笑顔。

もてる男の誘い方だ。


皆の意見が一致したのを、だけが知らない。

、今度はわたしといこう。」

喜八郎がぎゅう、と後ろからに抱きついて言う。

それに対しては柔らかく笑って。

「はい、ぜひ。私も皆といろんなところにいって、いろんなことをしたいです。」


あまりにもきれいに笑うものだから、なんだか、いたたまれなくなって。


恥ずかしそうに皆で笑った。

















※※※

匿名様
企画参加、すてきなリクエスト、ありがとうございました。
久しぶりにこの子たちを書いたのでちょっと口調とかあやふやになってしまいましたが、とても楽しく書かせていただきました!
この物語の夢主さんは、これからたくさんの幸せなことを、このメンバーでやっていくことでしょう。
たぶん、彼氏とかだいぶん先までできない気がします。
皆でいるのが楽しすぎて。
誰とくっつくかも考えていない。

ちなみに利吉さんには昔からあこがれていたので、こう、アイドルに向ける感覚だと思っていただければいいかと。

それではありがとうございました!



煌 那蔵