ドリーム小説


























「そいつら以外だったら、見逃してやってもよかったんだがな。」

凍りついた男の子の体を抱きしめる私にクザンさんはそう言った。

困ったように頭に手をやりながら、瞳の奥に険悪な色をにじませて。

ゆるり、彼の長い手が私に向けられて、おいで、とばかりに揺らされる。

それに答えることができず、ぐ、っと腕の仲の体を抱きしめる力を強めれば、じわじわと氷が溶けていっているのがわかって。

クザンさんが大きなため息を一つ、はいた。

「残念だけどね、。」

一度伏せられた瞳。

それが再度私に向けられる。

「お前が望むのがそいつらならば、お前を手放すわけにはいかない。」

否定を許さないとでもいうように、ゆっくりと口角があがっていく。

「危険分子であるそいつらに得体の知れないお前を増やすのはどうにも抵抗があるからね。」

悪魔の実の能力が効かないことを、今初めて知ったのだろうに。

先ほどまで一緒に行動を続けていたのに簡単に私を異分子と、危険人物と判定して。

ひどく、冷酷な、人。

でも今までの優しさが偽りだとも思えなくて。

クザンさん、そう名前を呼ぼうとした。



口を閉ざさせるような強い口調で名前が呼ばれるから、口は無意味に開いただけで。

ゆるり、伸ばされていた手が私の腕の中を指さした。


「選ばしてやろう。俺と一緒に来るなら、そいつらをみのがしてやる」


私の目的はこの子だったのに、この子を渡してしまえば本末転倒というやつではないか。


「クザンさんって、」


つまりそれは、選ぶ余地もないのだ。



「意地悪ですね」


私の言葉にクザンさんは悲しそうに笑ったように、みえた。


「ごめんね」


あまりにもその表情が切なすぎて。

言葉がでなくなった。

かわりに一つ、ため息をついて。

一度だけ腕の中のからだをなでる。

冷たいからだ。

でも、まだ大丈夫。

脳裏に浮かぶ、明るい笑顔。

まぶしい、太陽みたいな人。


どうか、あの炎の人のように、強く生きて。



「私は私の世界へ帰る方法を探しています。」


この世界ではない、私の世界へ。

その目的のために、面識のあったこの子を求めた。

私の世界で描かれていた、主人公を捜した。


「それが見つかるならば、どこでもいいんです。」


できればそれがエースさんと敵対しないところがいいな、とそう思っただけで。

「クザンさん。」


まっすぐと彼の顔を見て、笑ってみせる。


「あなたと一緒に行きます。」


あなたと同じ、カモメを背負ってもいい。

それが私の世界につながるのなら。


「私があなたの役に立てるなら、私を使ってくれていい。」


だから、お願い。


「私を、私の世界に帰るお手伝いをしてくださいね。」





















※※※
お祝いの言葉、リクエストありがとうございました。
遅くなってしまって申し訳ありません。

「無色透明」の連載で、クザンが夢主を麦藁に渡さなかったら

でした。
夢主の目的は自分の世界に帰ること。
この時点ではまだその目的がぶれていないので、結構あっさり海軍側につくと思われます。
クザンさんにかまわれて情が移ったりはしますが、結局海軍のやり方にはついていけなさそうです。
ただエースの処刑には頑固として反対、
クザンさんのそばにいるおかげで何度か接触。
頂上決戦では能力を最大限発揮してエースを助けようとするんじゃないかな。
でも、弱いので生き残れなさそう・・・とかなんとか。





2015 那蔵