ドリーム小説




















突如光輝いた世界。

ゆっくりとそれが晴れたとき、目の前には黄緑色をまとった6人の子供たちが、いた。

ちらり、自分の後ろにいる主を確認して状況把握。

彼らのまとう装束に、向けられるけげんそうな視線に。

(あ、なんか既知感。)

俺様たちを目にしたその瞬間、それらは一気に姿勢を低くして。

懐にしまっていたであろう武器を、それぞれに取り出した。

向けられる視線は鋭く、微かに迷う気配はあれど、確かに忍びに向かって成長段階の子供たちで。

そのうちの一人、綺麗なぱっつん前髪の子供が全く違う方向を向いて構えているのもどことなくほほえましい。

「・・・左門!そっちじゃない!!」

あ、つっこみが入った。

・・・俺様としては君の手に捕まれた縄が気になるんだけどな。

二本のうち、一本は左門と呼ばれた人物に続いているけれど、もう一本の先には・・・誰もいない。

「佐助」

「はいはい、旦那。」

「すごくこの者たちを知ってる気がするのは__」

「うん、たぶん気のせいじゃないねえ。」

俺様たちの声に、ぐ、っとさらに姿勢をおろしてすぐに動き出せるように警戒を深めた。

「孫兵、数馬、籐内」

縄を持った少年が誰かの名前を呼べば、三人の少年がうなずいてゆっくりと俺から距離をとる。

おそらく誰かを呼びに行くつもりなのだろう。

ほお、と旦那が感心の声を上げる。

まあ幼い割に正しい判断だとは思う。

「三之助、左門」

さらに二人の名前を呼ぶ。

「なんだ、作兵衛!」

が、その縄の先には一人しかいない。

「・・・三之助?」

返事がないことに違和感を感じたのか、小さな声で再度名前が呼ばれる。

「・・・ええと、作兵衛、君?」

名を呼んだだけだというのに、さらに空気はぴりぴりとして。

「君の縄の先、誰もいないんだけど?」

俺の言葉にぴたり、作兵衛は動きを止めた。

ぎちぎちとからくりが音を立てて動くように首が回されて、

その縄の先に視線が行った瞬間、絶望したようにその場にうなだれた。

「さんのすけええええええ!!」

もうそれはそれは心からの絶叫といえるだろう。

旦那にもはるかもしれない。

それに対して左門は彼を慰めるように背中をたたいていて。

「うわああああ!!」

ついで、意識を外していた三人の方向から悲鳴が上がる。

視線をそちらにやれば、桃色の髪をした子供が見事に穴に落ちた瞬間で。

ああ、なんというか、本当に既知感。

「・・・見覚えのある光景だな」

確かに、まるであのめがねの子供みたいな不運さだね。

さて、さて、このままではいられないから。

旦那に動くな、と指示を出して足を進める。

目の前でうなだれる作兵衛の前にしゃがみ込み、とんとん、と肩をたたく__否、たたこうとした。

何かに捕まれ掛けた手を、本能のまま捌き、その場所から跳び去って低く構える。

と、

「作兵衛になにをした。」

彼らと同じ黄緑色。

前髪だけ色が違う子供が俺の手があったところにくないを突き立てていて。

じわり、本能が沸き上がりそうになるのを笑って止める。

「ねえ。君たち。」

ゆっくりと立ち上がって、彼らとの距離を再度つめる。

「ここは__」


忍術学園、であってる?

その問いかけは次なる攻撃に発せられることはなく。



ざわり、本能よりも深いところ。

主を守る、そのためにある心が。


動く。


旦那の首根っこをつかんで安全地帯へ放り投げる。

後ろからきていた刃をはじいて。

俺様がいた場所にいくつも突き立てられるくない。

首をねらって投げられた円形の刃。

跳びす去った先に降りおろされる刀。

それらを自然によけながら、一つ、ため息。



疑わしきものは、信じるな。

その教えは忍びにとって真実に近い。

しかしながら俺様にも譲れない物はあるわけで。



「俺様の主に手を出すんだったら、容赦しないよ?」



最後、上から降りてきた深緑に、笑う。



ふりおろされる重い体術を腕で受け止めて力をいなして。


彼の瞳が驚きに開かれて、そして、それはそれは愉しそうにゆがむ。


わかっているだろうに。

気づいただろうに。


その深緑は愉しそうに動きを早める。


素早い動きの攻防。

刹那、気づく。


再度主に向かう幼子たちの動きに。



「小平太、ごめんね?」


彼の名前を呼んで、にっこり笑って見せて。

そして、彼を思いきり遠くへはじきとばす。


同時に自分は主の前に戻って。



「はいはーい。そこまで。」



向けられる獲物を、視線を、笑って受け止める。



「主に用があるなら、俺様を通してからにしてね?」



笑う、わらうわらう。


主に向けられるすべての物から、この人を守るために存在している俺様だから。

そこでようやっと、水色が、紫が、気づいたように息をのんだ。


「佐助、さん・・・?」

「幸村さんも・・・どうしてここに」

もたらされた自分の名前に、にんまり、笑う。


「久方ぶりだな、滝殿、金吾。」


主がどことなく楽しそうにそう言えば、二人もふわり、笑顔になって。


「君たちがいるってことは、やっぱりここは忍術学園、とやらであってるのかな?」


俺の言葉に二人はうなずいて。


「んー、どうやら今度は俺様たちがとばされちゃったみたいだね。」


困ったように、でも胸の内は懐かしい友との再会に踊ってもいて。



「金吾、知り合いなの?」



先ほどまでくないを構えていた白いふわふわの子供が問う。

それに対してふにゃり、金吾は頬をゆるめて。


「前に僕たちが消えたの、覚えてますか?」

わらわらと、今度は黄緑が集まってきた。

「確か5、6年生も消えた事件だったな。」

蛇を首に巻き付けた子供がゆるり、首を傾けて。

「あのとき、僕たちを助けてくれた人たちです。」

「私も世話になったぞ!」

にょきり、いつの間にか吹っ飛ばされていた小平太が戻ってきていて。

金吾たちの会話に加わった。

先ほどとは全く違う年相応の子供たちの姿に、主と顔を見合わせて笑う。




まだ、この子たちは闇に染まってはいないのだ。



戦場に身をおく俺たちからすると、とてつもなくまぶしい存在。



くるり、話をしていた金吾たちが振り向く。

警戒はいっさい消えて、にこにこと楽しそうに笑顔を振りまいて。





「何はともあれ、幸村さん、佐助さん、忍術学園へようこそ!」




そう言って彼らは俺たちに手をさしのべた。