ドリーム小説
「空気が、違うね。」
つぶやいたのは庄ちゃん。
みんな口には出さないけれどそれを確かに感じ取っていて。
「ただいま!」
「この辺りには何もないよ〜。」
「結構遠くに城が見えたくらい。」
偵察に行っていた団蔵と喜三太、虎若が戻ってきてそう言った
「どうする?庄ちゃん。」
「・・・とりあえず、ここはあの世界、なのかどうかの確認が先かな?」
あの世界
私たちが1年生の時に偶発的に訪れた異なる世界。
幼い私たちを受け入れてくれて、先輩方の迎えが来るまでおいてくれた優しい人たち。
忍びの卵である私たちに、優しくあれと諭した悲しい忍がすむ世界。
ぎゅう、と胸が痛くなる。
あの日、あのとき、あの人が願ったような人物に、私たちはなれているのだろうか。
「庄!乱太郎!」
響いた声。
それは食料調達にでていたきり丸の物。
同時にがらがらと辺りに仕掛けていた罠が作動する音。
兵太夫と三次郎がさ、っと姿を消した。
反射的に体を動かせば、私と庄ちゃんのいたところに手裏剣が刺さっていたのが見えて。
ここに残っていたのは私と、庄ちゃんと、伊助。
それから偵察からかえってきた喜三太、虎若、団蔵。
しんべヱ、きり丸、金吾は食料調達にいっていたのでここにはいない、そのはずだったのに。
つまり、それは、危険があるということ。
すぐさま皆が戦闘態勢に入る。
向かってきた刃を落としながら状況把握を努めて。
庄ちゃんが冷静に辺りを見回して。
「虎若!」
庄ちゃんの指示に従って虎若が動きだす。
兵太夫によって改良された音がでない銃。
放たれた銃弾は相手を地に伏せさせて。
それを合図とばかりに皆がそれぞれ得意武器を手に足を踏み出して。
金属音と火薬のにおい。
薬を巻きつつ、微かに陰った頭上を見上げた。
そこに、あったのは、黒い、烏
「っ、」
息を、飲む。
その烏は、音もなく、一人の男の元に降りたった。
橙色の髪をなびかせて
迷彩柄をまとい
黒い烏を従える、一人の男。
_優しいままでいてほしい_
そう願った、悲しき忍。
「さ、すけ、さん・・・?」
私の小さな声に、ゆらり、男は揺れて。
ゆっくりと、その瞳に私たちをうつして。
「らん、たろう・・・?」
くらい、暗い瞳で私たちをみて、
驚いたようにそう、口にした。
「止まれ。」
静かな、佐助さんの静かな声に相手取っていた忍びたちは動きを止めた。
「皆、戻って。」
僕の言葉に皆も素早くこちらに戻ってきて。
音もなく、佐助さんが降り立つのをただ眺める。
きり丸が、驚いたように息をのんだ。
それくらい、佐助さんの瞳には色がなかったから。
「久しぶりだねぇ、皆。おっきくなっちゃって。」
穏やかな言葉。
でも、その表情は硬い。
手振りで後ろの忍びたちを返して、彼は一人になった。
「佐助さん!!」
ずかずかと、佐助さんへ距離をつめるのはしんべヱ。
いつものほへほへした表情とは違って、どことなく怒り気味だ。
「しんべヱ。」
呼ばれた名前。
ちゃんと、僕らを知っている佐助さんであることに、ほっと息を吐いて。
「ちゃんとご飯食べてますか?!」
しんべヱらしい言葉に、僕たちの緊張がほぐれる。
それは佐助さんも同じみたいで。
「・・・はは、ちゃんと食べてるよ。」
困ったように、でもちゃんと笑って彼は答えた。
「佐助さん、何がありました?」
僕の言葉に佐助さんは一度だけ目を細めて、そして、嘘の顔で笑った。
「なにもないよ、なあんにも。」
にっこりと、それこそ、鮮やかに、それ以上踏み込むなというように。
でも、僕らはそんなのにだまされるはずがない。
「兵太夫、三次郎」
「「了解」」
僕の言葉に二人はさっと動いて、佐助さんの後ろに陣取る。
そのまま両腕ににこやかにふたりはまとわりついて。
不思議そうにこちらをみる彼に、こちらもにっこりと笑って見せて。
そうすれば、佐助さんの笑みがぴしり、堅くなった。
「皆、行け」
「「はいよ。」」
「「了解」」
「「はいはーい」」
「っ、ちょ、なにす、お、おもいおもいおもい!!??」
秘技、は組ピラミットだ。
まあただたんに相手の動きを止めてのしかかるだけなんだけれど。
基本的にいつもは土井先生に使われる。
「ねえ、佐助さん。僕たちじゃ役に立ちませんか?」
しょんぼりと問いかければ、虚を突かれたような表情をして、そして、佐助さんは今度こそあのときのように笑った。
※※※
成長は組が佐助を助けたいだけのお話。
続かない。
どういう状況かは考えてない。