ドリーム小説
その存在は、俺の___
「あんの、バカ船長!!」
叫んだのは緑頭が特徴的な男。
腰に差した三本の刀ががしゃりと音を立てる。
「ルフィらしいな。」
あきれたように呟くのは金色の男。
くわえた煙草がゆるり、煙をつくりだす。
「勝手も分かんねえってんのに、どこ行きやがった!」
「さあなあ。とりあえず俺はナミさんたちにあえなくて寂しい。」
今度は金色がうなだれる。
「っと、お前は勝手に動くな!」
が、ゆらり、動き出した緑頭をあわてて止めて。
迷子常習犯と呼ばれる緑頭。
一人で歩かせれば面倒なことになるのはわかっている。
「とめんじゃねえよ、馬鹿コック!」
「うっせぇ、一人で動くんじゃねよマリモ頭。」
いつものような言い合い。
だが、実はこの場所、鬱蒼とした森の中である。
彼らの周りには何人もの人が倒れ伏し、地面を赤く染めていて。
日常茶飯事の言い合いを、こんな非日常の中で行える。
それだけで彼らもまたふつうではないことが伺えて。
「っやあ!!」
突如、倒れていた一人が起きあがり刃を二人へと向けた。
が、それはあっさりと金色の蹴りによって地へ伏せて。
「まあさっさとルフィを見つけるか。」
今のことなど何とも思わないようで、金色は一つ、ため息をはいてそう言った。
時は大海賊時代。
ゴールドロジャーが残した財宝を求め、皆が海へ繰り出していた。
この男たちもその一員。
彼らを従えるのは麦藁のルフィといわれる麦わら帽子をかぶった男。
満面の笑みを浮かべる手配署に似合わない金額を持つ男。
この癖のある二人を従えると言うだけでその男の器量がしれるわけで。
しかしながら彼らは、見知らぬ世界にとばされていた。
理由は不明。
以前もとある七武海によって違う場所にとばされた経験はあったため、そこまで焦りはしなかったが。
だが心配なのは自分たちの居場所であるあの船だ。
主戦力である自分たち三人が抜けた穴はでかい。
信用していないとかそういうわけではなくて、ただ、狙われることの多い一味だからこそ、早く戻ってやらなくては、と思う。
さて、先ほどから話にあがる麦藁の男。
なぜ彼が今この二人と共に行動していないのかというと、話は数十分前にさかのぼる。
元の世界に戻るために動いていた彼ら。
幾度となく戦場を突っ切ってきたため体中に硝煙やら鉄のにおいを纏っている。
そんな彼らを自分の領地を守る忍たちが見過ごすはずはなくて。
「またなんか来たな?」
鬱蒼とした森の中を歩く三人。
緑頭、基ゾロがため息と共に刀を抜いた。
「しつこいねえ」
金色の男、サンジがそういってぐるぐると肩を回して
「・・・はらへったぁ・・・」
麦わら帽子をかぶったルフィがへろへろになってそう呟いた。
「ルフィ、もうちょっとまてって。」
サンジが体をほぐしながら言葉を続ける。
「もうすぐなんか料理してやっから。」
コックであるサンジの言葉にルフィは力なく頷いて。
そして、突然、顔を上げた。
「いい匂いがする。」
ぽつり、呟かれたそれをゾロは正確に聞き取った。
「おい、ルフィ_」
「肉〜〜〜!!!」
嫌な予感から逃れようとゾロがルフィに手を伸ばしたその瞬間、
ルフィは全力で走り出した。
「っ、待てルフィ!!」
あわてて止めようとしたゾロだったがそれを遮るように黒い装束の忍たちが現れて。
「っくそ!」
サンジの前にも幾人もの人影がよっていくわけで。
二人は船長の暴走を止めることなく見送ることしかできなかったのだ。
そして冒頭に戻る。
「ここか?」
幾度となく道なき道へ挑んでいくゾロを引っ張りながらサンジたちがたどり着いたのは大きな城。
そこの城壁は何者かにぶち抜かれたように大きな穴があいていて。
「ここだろうな。」
ゾロが無表情で判断を下す。
突如現れた色鮮やかな二人組に、穴の補修工事にいそしんでいた男たちはおののいたように動きを止めて。
「なんだおめえら!!」
「筆頭になんか用か?!あ"あ"?!」
城に仕えるにしては口調が悪い。
どこのチンピラだ。
よく見ればこの者たち、リーゼントばかりだ。
どこの悪ガキだ。
「あー、俺たちは別に害を加えようとは思ってねえ。ここに麦わら帽子かぶった男、来なかったか?」
ぎん、と視線悪く相手をにらみつけるゾロを置いて、サンジが言葉を発した。
「小十郎様に知らせろ!」
「ここは通すんじゃねえぞ!」
が、見事にそれは聞き入れられず。
「ぐるまゆ、ここでしゃべってても埒があかねえ。突破すんぞ。」
いらだちを乗せたゾロが言葉を発した。
その瞬間、空気が、とまった。
「へ・・・?」
「・・・筆頭?」
男たちは突如動きを止めて、訳の分からない言葉を発した。
怪訝そうな顔をしたゾロをそこにいた男たちがまじまじと見る。
「いや、筆頭じゃねえだろ。」
「政宗様はこんな苔みたいな頭じゃねえ」
ひそひそと交わされる会話。
中身はよく聞こえなくても非常に不本意なことを言われている気がして。
「馬鹿にしてんのか?」
ゾロがドスの効いた声を上げる。
と、ぴゃ、とばかりに男たちは飛び上がって。
「さーせん!筆頭!!」
ゾロに向かって敬礼でもするかのようにびし、と姿勢を正した。
「なんだってんだ?」
相変わらず人相の悪いゾロ。
その横で何となく事態を把握したサンジはまた一つ、煙を吐き出した。
「___よし、マリモ。なんかこいつらに命令して見ろ」
「俺に命令すんじゃねえよ、クソコック。」
「うっせぇ。いいから言ってみろって。」
サンジの指示にゾロはさらに凶悪な顔になった。
こいつらを実力で突破すればいいだけだろう。
そう思いはしたが、ルフィがこの中にいるかもしれない、否、いるだろう、と思えば下手なまねもできず___
ゾロが、口を開き言葉を発しようとしたその瞬間。
きいん、
金属音が響いた。
にやり、ゾロの顔が凶悪な笑みに変わる。
とっさにその場所から飛びのいていたサンジは疲れたようにまたため息を落とす。
ゾロに刀を降りおろしたのはこれまた凶悪顔の男。
体格はよく、茶色いコートを羽織っている。
ふりおろされた刀は鋭く、ゾロの馬鹿力をぎちぎちと耐えていて。
「なにもんだ、お前等。この城になんの用だ。」
ゾロにも負けないほどの凶悪な表情。
まるでやのつく職業のようだ。
「なかなかやるじゃねえか。」
ゾロが愉しげに唇をなめてそう言った瞬間、男は、驚愕に目を見開いて。
その口は確かに人の名前をかたどった。
「だが、」
それを見届けるまもなく、ゾロが残りの刀に手をやって。
「俺の敵じゃ、」
何かを察した男が距離をとろうとする。
「ねえ!!」
瞬きをしたその一瞬に、ゾロは三本の刀を使い相手を吹っ飛ばした。
「小十郎様!!」
ざわめきが広がる。
位が高い奴なのか、男たちがわらわらととばされた男へと駆け寄っていって。
「貴様・・・!」
何かを発そうとした男たちを遮るようにゾロが一歩、前にでた。
「俺の邪魔をすんじゃねえ。」
そう言葉を放った。
※※※※※
「Ahー?なんだ外が騒がしいな。」
奥州筆頭伊達政宗。
その名を持つ眼帯の男は外から聞こえてきた音にうっとうしそうにそう言った。
「なんだ、喧嘩か?」
その向かい、政宗の前に座り込み、もぐもぐと食料を口に詰め込んでいるのは麦藁の男。
突然食料の名前を叫びながら飛び込んできた男を、自称懐の広い男である政宗はあっさりと受け入れて。
望まれるまま食料を与えている状況であったりする。
「Hey お前」
「ん?なんだ。」
「お前名前は何だ?」
自己紹介すらすませていない状況であったが。
「ん、俺はルフィ!モンキー・D・ルフィ!」
もぐもぐと口の中の者を租借しきってから麦藁は笑う。
太陽のようにまぶしい笑顔で。
「海賊王になる男だ!」
それを一つだけの目で見つめて、政宗も小さく笑った。
「OK、俺は政宗だ。奥州筆頭、伊達政宗。いずれこの世界で天下を取る男だ。」
にやり、とそれはそれは自信満々な笑みを浮かべて。
「これも何かの縁だ、仲良くやろうぜ?ルフィ。」
名前を呼んだ、それだけの行為だったのに。
ルフィはきょとん、とした表情を浮かべて。
何かを考えるように首を傾けた。
「ん?どうした。」
何事か、と政宗も同じように首を傾ければ、ルフィはひらめいた、とばかりにまた笑顔を見せて。
「政宗、お前に呼ばれるとゾロに呼ばれてるみてえだ!」
ゾロ。
その人物は知らない。
けれどもその笑顔を見ればルフィが信用に足る人物であることが伺えて。
「それは、どんな奴だ?」
興味をそそられた。
「ゾロはつええぞ!」
にかり、と笑みを崩さないまま、自慢をするようにルフィは続ける。
「三本刀を使ってんだ。」
刀を使う、それに血がたぎった。
強いものと戦える喜びは、底知れないものだから。
口角があがる。
期待が、募る。
そっと脇に置いていた刀に、ふれる。
「まあ、俺の方が強いけどな!」
あっけらかんと、ルフィは告げる。
「それから、ゾロは、」
そして、ゆっくりと先ほどとは全く違う種類の笑みを浮かべて。
「俺の、大事な仲間で、」
キイン
「必要不可欠な、右腕だ」
響いた金属の音。
政宗とルフィの間に刀を抜いた緑頭の男が、いた。
政宗がかすかにふれていた刀。
それをそれ以上抜かせまいとするように。
刃が、手の甲に、ふれるかふれないかのところに突きつけられていて。
その後ろ、ルフィはどことなく満足そうに口角をあげていて。
「ルフィ」
響いた呼び声。
一瞬、自分の口から発せられたものかと錯覚するような。
俺と、同じ、声。
「おせーぞ、ゾロ!」
にぱり、彼は告げる
それに対して緑頭はため息を一つ。
「おい、ルフィ。お前が勝手に動いたんだろうが。」
ルフィの頭に一つ、げんこつが落ちる。
落としたのは金色の男で。
「っ、いてーな!サンジ!」
先ほどまでの笑みは消えて、今度は不満そうに。
海賊王になると、そんな馬鹿みたいなことを告げるような子供かと思えば、
信頼しきった瞳を向ける様は大人びていて。
それでいて、年相応の笑顔を振りまく、不思議な子供。
「そうか」
政宗が言葉を発した瞬間、は、っと金色と緑色は動きを止めて。
どことなく混乱したように政宗をみた。
「同じ、voiceだなあ。」
政宗の言葉にむ、とゾロは表情をゆがめて。
「なあ、ルフィ」
そんなゾロを無視してその向こうに話しかける。
そうすればひょこり、彼は顔を出して。
「こいつがおまえの右腕だと言ったな?」
ルフィは楽しそうに笑う。
「なら、」
ひゅ、と空気が鳴る。
「そいつは」
政宗の前方ルフィの後方
「俺の右目だ。」
金色の男によって止められた攻撃。
それを発したのは先ほどゾロが吹っ飛ばした男。
「なあ、小十郎。」
それに小十郎は黙礼で答えた。
※※※※※
続かない!!
リクエストありがとうございました。
海賊とばさらのクロスオーバー楽しく書かせていただきました。
ゾロと筆頭。中の人ネタ。
初めて書くタイプのお話だったのでちょっと設定が生かせている気がしませんが・・・
企画に参加していただきありがとうございました。
煌 那蔵