一周年リクエスト




樹さま












あの艶やかな黒い髪。

女の子顔負けの長いまつげ。

綺麗な顔。

始め幼馴染の勘ちゃんに紹介された時は、本当に男の子かどうか疑った。

最初は特に話したりしなくて。

でも段々話をするようになって、そうして会うことも増えて。

出会ってから半年くらい。

いつもと変わらない兵助との他愛ない会話の中。


その無表情に近い顔がふわり笑ったのを見た瞬間から私は兵助のことが___






「兵助兵助兵助!」

息もつかぬ勢いで教室に入った俺に走り寄ってきたのは隣のクラスの勘ちゃんの幼馴染。

微かに上気した頬が、何事かと思わせる。

でもとりあえず朝の基本は挨拶。

「おはよう、。」

人から見たら無表情といわれる俺だけど感情が薄いわけじゃない。
むしろ結構激しい性格だと自負している。

「、はよ!」

ぼん、と紅くなった顔は視線をそらしてそう答えた。

「どうしたんだ?」

先ほどの様子からして何かあったんだろうと思い聞けば視線をあちらこちらにさまよわせて、そうして心を決めたように俺を見てきた。

身長が低いを見下ろす形になれば彼女がいかに小柄かわかって、なんだか守らなきゃいけないような感覚に陥る。

「き、のう、さ!」

どもりながらも話し出した彼女。

こう言うのを見てるとなんだか可愛いなあ、と思う。

豆腐相手であれば結構感じるそういう感情が、人間に向くのはなぜか限定で。

けれども、それがどういうことなのかいまいち理解ができないのだが。

「きのう、色々あって、__あーもっ」

途中で言うのを放棄したように投げやりに渡されたのは可愛くラッピングされた包みで。

「!作った!食べて!」

その言葉にの顔と包みとを何度か見る。

ずずいとさらに渡されたそれ。

「・・・ありがとう。開けていい?」

なんだか心の奥底がむずがゆいような感覚。

受け取ってそっと開けばそこには小麦色した甘いにおいを発するもの。

「…クッキー?」

こくり、うなずいてそっと俺を見ては言葉を続ける。

「豆腐、クッキー、デス。」

焦げてちょっとにがいかもだけど・・・とかごにょごにょいってるはなんだか本当に可愛い。

「ありがと、もらう。」

一つつまんで口に運ぶ。



運ぼうとした。

その瞬間横に現れた黒い髪が、にこり口元をゆがませた見慣れた顔が、

俺の手にあった俺の口に今まさに入ろうとしていたクッキーをその口で奪っていった。


「・・・へ?」

「っ、勘ちゃああああああん?!」

理解が追いつくより先にの呼んだ名に、目線を向けた。

「ん〜・・・苦い。苦いよ。まさか、こんなのを兵助に食べさせようとしたんじゃないよね?兵助を病気にしたいの?兵助をがんにしたいの?兵助をどうしたいの?ねえ?ねえ?」

笑顔のままでに言いつのる勘ちゃん。

あうあうと涙目のは、金魚のように口をただパクパクとさせていて。


「っ、ごめんね!兵助!次はもっとましなの作ってくるからあああああぁぁぁぁっ!!!」

「え、あ、ちょ!っ!」

俺の手の中にあったクッキーをかっさらうと全力で走って行った。

「勘ちゃん・・・」

去って行ったを追おうと思ったが、のしり、後ろから勘ちゃんに乗られてしまってはそんなこともできなくて。

「おはよ〜兵助。」

にぱり、目の端に見える笑みは柔らかくていつもの通りの勘ちゃん。

まるでさっきのことなどなかったかのようにふるまうそれにさっきのは何だったのかと考える。

「勘右衛門もも、ほんと素直じゃないよな。」

その声に振り向けばそこには三郎がニヤニヤとした表情で立っていて。

「何?三郎。俺に喧嘩売ってるの?俺のどこが素直じゃないって?俺はいつでも正直ものじゃん、ね、兵助。」

「え、あ、うん、そうだな?」

「落ち着け兵助、惑わされるな。」

そんな三郎の言葉は上の空。

頭の中には先ほどののほぼ泣いたような表情。

なんだかすごく罪悪感。

でも、勘ちゃんの笑顔を見たらそれも和らいで。


なんなんだろうか、こんな感じは。

なんなんだろうか、こんな思いは。


わからないそれにぐるぐるぐるぐる。


でも、たったひとつ、わかること。



「・・・勘ちゃ〜ん」

「ん?なに兵助。」

後ろに乗っかったままの勘ちゃんがさらに身を乗り出して上からこちらを覗き込む。

「俺、勘ちゃんのこと好きだよ〜」

「・・・俺も好きだよ。」

「雷蔵も、三郎も、はっちゃんも好き。」

「・・・俺も雷蔵も、はちざも、・・・・・・三郎も、好きだと思う。」

も、勘ちゃんと同じくらい好き。」

「・・・」

「だから、一緒にいようね。俺と、勘ちゃんと、と。それから雷蔵もはっちゃんも三郎も。」

みんなみんな大好き。

だから、ずっと一緒にいたい。

それがどういう思いの好きかとかは分からないけど、でも、好き。

これから先もずっと一緒にいたいくらいに好き。


「当然だ。」


くしゃりあっけにとられたよ言うな顔をしていた三郎が珍しくも本当に笑って頭をなでた。


「・・・当たり前、でしょ。」


背中に頭をぐりぐりと押し付けて勘ちゃんがそう言った。

それがなんだか嬉しくて、ふにゃり、笑えた。


「っ、兵助ええええ!」

先ほど走って行ったがまたまた全力疾走で現れて、俺の名前を呼ぶ。

「っ、次はもっとおいしいの作る、から、次こそは食べて、ね!」

真っ赤なその顔は可愛くて可愛くて。

そのまま去っていきそうなを手招きする。

恐る恐る近づいてきたを手を伸ばしてぎゅう、と引き寄せる。

腕の中であわあわと慌てるに笑いがこぼれた。

「俺も〜。」

後ろからは勘ちゃんが手を伸ばして抱きついてきて。

前には

後ろには勘ちゃん。

周りには三郎、雷蔵、はっちゃん。


こんな時間が幸せだなあ、と思った。











それは相思相愛にも似て












勘ちゃんに食べられたことより何より、そんなにおいしくないものを兵助に上げようとしてしまった自分がとてつもなく嫌だ。

「ごめんなさいぃ・・・・!!

前を見ずに全力疾走はさすがに自殺行為のようだった。

「うえあ!」

「おわ、」

思い切り角っこでぶつかって、後ろに倒れそうになる。

それをたくましい腕が引き止めてくれて。

「大丈夫か?。」

聞き慣れた声に目を向ければそこにははっちゃん。

心配げな表情でこちらを見ていて。

その後ろにいた雷蔵も同じ顔。

「はっちゃん、雷蔵…・・・」

じんわり滲む視界。

それにはっちゃんが慌てているのが見えて。

そのたくましい胸に思いっきり飛びついた。

「っ、?!」

「はっちゃ〜ん!!」

焦った声で理由を問われて、先ほどのことを話せば、なんだか困ったように笑われて。

「全く、勘右衛門も素直じゃないからなあ・・・。」

はっちゃんのひとり言のようなつぶやきの意味がわからなくて首をかしげる。

「んじゃ、今度俺と一緒に作ろう?」

でもふんわり柔らかい雷蔵の笑顔をみたらそれもどうでもよく感じて。

「雷蔵、こがさないつくりかた、教えて、ね・・・。」

「もちろん。さ、兵助に今度はもっとおいしいの作るから、食べてねって言ってきなよ。」

ぽん、と背中を押されて、それにうなずいて。

そうして兵助と勘ちゃんのところに向かう。



幼馴染の勘ちゃんはいつもそう。

兵助と話そうとしてたりすると、いつの間にやらやってきて邪魔をする。

兵助のことを紹介したのは勘ちゃんなのに、兵助を取られることを恐れるみたいに邪魔をする。

でも、勘ちゃんのことは嫌いじゃ、ない。

雷蔵も、はっちゃんも、三郎も、全部勘ちゃんを通じて知り合った大切な友人たち。

勘ちゃんがいるから今の私は私としてここにいれてる、から。

あと、勘ちゃんは絶対私の気持ちに気づいてる。

少しくらい協力してくれればいいと思うのに、それは無理なんだろうなあ、とわかってもいて。


兵助ともっと仲良くなりたいとは思う反面、もう少しこのあいまいな関係を楽しんでいたいなあと思う自分もいたりして。

だって、私は兵助と同じくらい勘ちゃんのことも好きだから。










幼馴染と兵助が大好きな勘ちゃんと
勘ちゃんとが同じくらい好きな兵助と
兵助が大好きな勘ちゃんの幼馴染。
はっちゃんはのよき相談相手。
雷蔵は癒し。
三郎は恐怖対象。
っていう感じですね。
・・・学パロなんだけど、あんまりわからないっていうね・・・。 樹!これでどうだ!返品だって受け付けるぞ!

煌 那蔵