一周年リクエスト




maakoさま













「ん?滝、どうしたんだ?」

委員会が終わって、さあ夕飯を食べるため食堂に向かおうかと先輩方と話していれば私の二つ下の後輩、水色を身にまとった滝がなにやら考え込んでいて声をかけた。

「七松先輩・・・」

落ち込んだ、というよりもなんだか困ったような顔した滝。

私の言葉に、その綺麗な顔をこちらに向けた。

「その、ですね・・・」

いつもは私に相談などしない滝が私に話したということは大層せっぱつまっていたのだろう。

「実は___」

簡単に訳すと同級生で隣室のやつが一緒に風呂に入ったことがないのだと。

そういうことであった。

「う〜ん。共に入りたくないというのならば無理強いはしない方がいいとは思うぞ?」

その理由など私にはわからないのだが。

「例えば体に大きな傷があるとか、う〜ん、あとは・・・女、だとか・・・?」

それにぴしり、固まる滝。

「いえ、まさか、そんなことは、ないでしょう・・・。ないですよね・・?」

「私に聞かれても困るぞ?」

だが挙動不審になる滝に、その話の人物に対しての興味がわいた。

一度会ってみたい。

そう思った。

そして、その機会はほどなく訪れる。






「滝夜叉丸〜!」

夜、夕飯を食べ終わって鍛練でもしようかと思っていれば1年長屋の方から微かに聞こえてきた言いあい。

それにつられるようにしていけばそこには滝とあと二人の水色がいて。

名前を呼びつつ近づけば一斉にこちらを見る三つの影。

その中の一人、滝に負けぬとも劣らないほどのきれいさ、可愛さをもった少年がいて。

ふわり銀色の髪が揺れて大きな目がこちらを見る。

(・・・あれが、滝の言ってた奴、か?)

確かに女の子にも見える。

「七松先輩・・・」

どことなく疲れきった顔をした滝は私を見て何処となくほっとした顔をした。

「どうしたんだ?」

「それが・・・」

「だれ。」

「ん?ああ、私は3年の七松小平太だ!」

「・・・綾部喜八郎。」

、です。」

滝に話を聞こうとすればその銀色がこちらを怪訝そうな顔で見てきて。

自己紹介すれば小さな声で名前を返されて。

そうしてそこで始めてもう一人の一年を見た。

黒髪で1年生の中でもさらに小柄なのだろう。

綾部の影に隠れてしまえばもうみにくくて。

「その、やっぱり一緒に風呂に入るのは嫌だと・・・」

委員会のときと同じように滝はそう言って。

「ふむ。」

じろじろと銀髪を見ていればくいくいと引っ張られる袖。

みれば何とも言えない顔で滝が指をさす。

その指の先には黒髪。

「喜八郎じゃないです。その、の方です。」

「・・・へ?」

言われて綾部とを見比べるが、どう見ても女に見えそうなのは綾部の方で。

「なんですか。私は早く湯につかりたい。」

むすりという効果音が聞こえてきそうなほどの表情で綾部はそういう。

「喜八郎、相手は先輩だから、ね。」

、早く行こう。」

私の言葉を無視するように綾部はに向き合って言う。

「だから、俺は一緒には入らないって・・・」

困ったようにそういうに間髪いれず綾部が返す。

「だから、どうして?」

「その、色々あって・・・」

。」

「だからっ、」



「女なのか?」



我ながら直球すぎたと思うその言葉。

ぴしりとその場所が固まったのは気のせいではないと思う。

空気が読めないといわれている私でもそれくらいはわかるぞ。

「先輩・・・。根拠のないことを言わないでください。」

ぐったりとしたように滝が言って。

綾部は少し考えた後にの服に手をかけた。

「っ、何してんだ喜八郎!?」

「脱がせばわかるかと。」

「変態って呼ぶぞ!」

「そんなのは気にしないけど。」

涙目で訴えるそれはマジで切実であった。

「これから一緒に蛸壷入ってなんかやらないぞ!」

その言葉にようやっと綾部はとまって。

涙目のは勢いよく綾部から離れた。

「喜八郎のばか!」

なんだか、その姿に、その様子に、先ほどまでは綾部の方が女の子みたいだったと言うのに。

納得、できてしまって。




なんだか大変面白い人物を見つけた気分だ。

「ならば私と入るか?」

「は?」

「へ?」

「いえ、ですから・・・」

「ははっ、冗談だ!」

困ったようなどうしようというような顔がなんだか面白くて思わず笑う。

「滝。やっぱり嫌がっているのを無理やりするのは良くないぞ?」

「嫌がるならばそれなりの理由があるんだから。」

「綾部、といったな。お前もそうだ。無理強いは良くない。中互いの原因になる。」

「それから、。あまり壁を作らないようにしろよ?仲間は、必要だからな。」

にかり笑って告げればぽかんとした表情の滝に

むすりとした綾部。

頭をがしがしと撫でる。

さて、そろそろ鍛練にでも向かうか。

があそこまで嫌がるということは、何かしらの理由があるのだろうし、それを私が軽い気持ちで聞くわけにはいかないから。

たとえ、彼が何者であろうと、彼は私の後輩で、守るべき存在であることに変わりはないのだから。











違和感の正体













可笑しいというほどのものではないが、何処となく感じる違和感。

それはほんの小さな些細なもの。


「どうしたの?三郎。」

ぼおっと教室の窓から外を見ていればかけられた声。

振り向かなくてもわかる声の主に返事を返す。

「なんていうか、やりにくいんだ。」

「?」

きょとりとした表情を浮かべる雷蔵に構わず続ける。

「骨格からして違うみたいで、こう、他のみんなに比べてすごく化けにくい。」

そうそれはまるで___

「まるで女みたいだ。」

さわり流れた空気に雷蔵がそばに座ったのがわかった。

「それってだれのこと?」

やんわりと尋ねられたそれに窓の外、いままで三郎が見ていた先を指差す。

そこには二人の一年生。

ふわふわの銀色の髪を揺らしもう一人は黒髪を微かになびかさせて。

雷蔵の視線がそちらを向いてそして納得したように返事が返ってくる。

「1年の綾部喜八郎、だっけ?確かに女の子みたいだよね。・・・あれ、でも三郎と接点あったっけ?」

雷蔵が触れたのは三郎が思っていたのとは違う方の名前。

それにあいまいに返事を返して、再び二人を見る。

もう一人の黒髪は三郎にとって委員会の後輩で。

はっきりといえば見た目に関しては雷蔵が言ったように横の綾部の方が女の子のようだ。

でも、どこか違うのだ。

微かに交る違和感。
それは本当に小さなもの。


『忍たま』であるということは男であることが前提。


その意識を取っ払えばあの子が何者かということもおのずとわかってきそうではあるが。

(でも、まああの子が私にとって大切で大切な後輩ということに変わりはしないが。)

そう結論を出してこちらに気づいて挨拶をしてきたに返事を返してやった。
















maakoさまリクエストの「まだ女だとばれてなかったとき女だと疑われる夢主」でした。
・・・夢主が1年、こへは3年ですね。
一応、こへ。
おまけで三郎でした。
どっちかといえば我がサイトの皆さんは性別をあまり気にしなさそうだったりします。
とても素敵なリクエストを生かせた気が全く持ってしません(おい。)
ですが大変楽しく書かせていただきました!
makkooさまのみお持ち帰りおkでございます。
返品もうけつけますよ〜。

これからもよろしくお願いします。





煌 那蔵