一周年リクエスト




優さま






「まよった・・・」

学園に入学して早2月。

絶対に迷うはずなどないと思っていたのに。

は完璧に迷っていた。

今日は休日。

初めて外出しようと普段着を着て、学園の門へと向かっていたはずなのに。

先生に渡すものがあったせいでいつもでは使わない道を使った。

おそらくそれが原因。

「ここはどこ」

何気に広い学園内。

全ての場所を把握するにはまだまだだったようだ。

「・・・どうしよ」

本当ならば今頃喜八郎と一緒に町に降りてるはずなのに。

じわり

情けなくて、心細くて

涙腺が弱まったみたいに視界がゆがむ。

泣くものかと必死でこらえようとするがそれは無情にも溢れだす。

「っ、ど、しよっ、ふえぇ・・・」



「どうしたの??」


その言葉はしっかりとの耳に届いた。

「っ、」

振り向けばそこには少し驚いたような顔をした男の子が一人。

私服で学年はわからないが体は小さい。

と同じ学年だろう。

そう判断して彼を見ていれば彼はそっと近づいてきて懐から出した手拭いで目元をぬぐってくれた。

「迷子?」

聞かれたそれにうなずけばふわり微笑む彼。

それに恐怖でちっちゃくなっていた心が和らいだ。

「何処に行きたいの?」

「おれ、は、門に行くはずだった、」

しゃくりあげながら告げれば柔らかな笑み。

「俺と一緒にいこ?」

そう言って差し出された手。

彼とその手を交互に見合わせて、そうしてそっと手に触れた。



「俺は勘右衛門。君は?」

「俺は、。・・・かんえ、もん?」

「言いにくかったら好きに呼んでいいよ。」

「・・・かん、ちゃん・・・。」

「ふふ、勘ちゃん、ね。いいよそれで。」


触れた手はあったかくて、

交わす会話は柔らかくて、

浮かぶ笑顔は優しくて。


の涙はいつの間にか止まっていて、そうして彼と共に手をつないで門へと向かう。

「かんちゃんも、お出かけ?」

「ん?ああ、私服だからか。」

「ん。」

私服ってことはお出かけなのだろう。

なんだったら喜八郎と一緒にお出かけしたい。

そう思って聞いたのだけれども。

「出かけないよ。これはちょっと忍び服を全部一気に洗濯したからね。」

「そうなんだ・・・」

「今度また一緒に出かけよう?」

しょんぼり、気落ちすればふわふわ笑って彼はそう言ってくれて。

嬉しくて思い切りうなずいた。

「やくそく!」

小指を出せば驚いたようにそうしてそっと同じように小指を出してきて。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます!」

ニコニコ笑って指切りをした。




突然呼ばれて、その声を聞いたらすごく安心した。

「喜八郎!」

勘右衛門とつないでいた手を離して全力で喜八郎に飛びついた。


「遅い、。」

「ごめん。迷ってた。」

ぎゅうぎゅう抱きついて、そうしてはっと気づいて慌てて振り向く。

「かんちゃ、・・・いない。」

そこには先ほどまでのふわふわの笑顔はいなくて。

「どうしたの。」

「・・・ううん。なんでもない。」

少し残念だったけど指切りしたからすぐにまた会えると思った。










「勘ちゃん?なんでそんなに機嫌いいの?」

「兵ちゃん、あのね、可愛い後輩を見つけたんだ。」

「勘右衛門に気に入られるとか、かわいそうだなその子。」

「八ざうるさいよ」

「私も、可愛い後輩を見つけたよ。」

「三郎に気に入られた子も不運だね。」

「!雷蔵!それはひどいぞ!」









それは幼き日のこと









「尾浜先輩。」

?」

「う・・・勘ちゃん先輩。」

「思ってたんだけどさ、なんでは勘のこと勘ちゃん先輩て言うんだ?」

八左衛門の問いにそっと顔をそむけた

「ああ、それはね、」

「わわ!言っちゃだめですよ!先輩!」

開いた勘右衛門の口を慌てて閉じようとする

「ひあ!ちょ、先輩!手、なめないでください!」

手に走った感触に慌てて手を離す。

それによって自由になった勘右衛門はくすりと笑って。

「八左、それは秘密、だよ。」

人差し指を口にあてて柔らかく微笑んだ。




















勘ちゃんは小さい時体が小さかったらいい。
そしてよく一年に間違えられてたらいい、とか思ってました。はい。
優さまリクエストありがとうございました!
勘ちゃんとの出会いか仙様との追いかけっこ。
どちらも魅力的だったのですが勘ちゃんの方を書かせていただきました!
とても素敵なリクエストありがとうございました!
優さまのみお持ち帰りおっけです。
返品も受け付けますですよ!

煌 那蔵