「庄、彦、」
委員会の部屋にいればテスト勉強をしている後輩二人の姿。
「こんにちは。」
「こんにちは先輩。」
振り向いて律義に挨拶をして来る二人の頭をなでてやる。
「三郎先輩は?」
見まわした部屋二人しか姿が見えなかったので尋ねればまだ来てないとの返事。
それにしばし考えて。
そして庄に言う。
「庄、お茶を用意してくれるか?」
「?わかりました。」
それにきょとりとしてでもすぐさま入れるために立ち上がってくれて。
「全員分、頼むな。」
「はーい。」
奥に走っていく庄を見送れば不思議そうな視線が向けられていて。
「作ったんだ。食べよう。」
懐から出した包みを見せればぱっと明るくなる彦の表情。
戻ってきた庄にもそう言ってやれば嬉しそうに笑って。
「でもどうしたんですか?」
不思議そうに尋ねられる。
「いつもお世話になってるからなその礼だ!」
そういえば彼らは二人顔を見合わせて。
「私たちの方が先輩にお世話になっていますよ?」
「それならば私たちがお礼をしなきゃですよ?」
まじめな二人に笑みが漏れる。
「庄にはいつもおいしいお茶をいれてもらっているし、彦にはいつも助けてもらってる。だからいいんだ。うけとってくれないのか?」
そういえば二人とも慌てて首を振る。
「先輩が作ってくださるお菓子はおいしいから大好きです!」
「いただきます!」
必死な二人に思わず笑えば後ろから重い体重がかけられる。
「わたしにはないのか?」
いつの間にかいた三郎。
彼の何処となくいじけたような物言いに苦笑が漏れる。
それにさらに重さを増してもたれかかられて。
もちろんありますよ。
答えて懐から出して渡せば珍しくもまともな笑みが返されて。
「私もいつもお前たちにお世話になってるからな!」
そう言って渡されたのはなぜか狐の面。
何かあったときに使うといい!と言われたところで使うところなどないのだが。
庄と彦、二人と顔を見合せて笑いあった。