一日が終わって、湯にもつかって。

そうしては月を見上げていた。

忍びには不必要といわれるそれであってもやはり美しいと思う。

ぎゅうと後ろから手を伸ばされてぬくもりに包まれる。

視線をそっと落とせばそこにはふわふわの髪。

「どうした、喜八郎。」

名を呼べばそっとでも強くなる腕の力。

「・・・・・・」

無言のそれに一つ息を吐いて、最後の一つ、自分用にととっておいたチョコを出して喜八郎の口元に持って行ってやる。

そうすれば間髪いれずにはむりと食されて。

さらには手に着いたチョコまでご丁寧に舐められる。

「っ!」

その生ぬるい感触に思わず息をつめれば、どことなく雰囲気がやらかくなった喜八郎。

再度ぺろりとの手を舐めて、そうしての隣に何事もなかったかのように座り込んだ。

「・・・喜八郎。」

じとりとした目で訴えても知らんぷりで。

それにもう一つため息を吐いて空を見上げた。

きれいな星に、月に、心が柔らかくなる気がする。

ふるり微かに体が震えた。

湯ざめしたかな、と思い中に入ろうとすればそっと喜八郎の手が伸びてきて。

そして先ほどは後ろからだったそれが横からぎゅうと抱きしめられる。

「あったかい?

問われたそれに、どこかおかしな優しさにふわり笑みが漏れて。

それにつられるように喜八郎も少し、微笑んだ。



湯冷めするだろう!と怒りながら保護者兼喜八郎の同室者がやってくるまであと数分。