「・・・・・・」
作法委員会の部屋の前。
どうしようかとは考えていた。
それもなかに人の気配がないのだ。
(・・・先にほかの委員のところにでも行くかな。)
そうきめて振り向いたそこ。
目の前になぜか深緑。
あれ、と思いそのまま目線をあげていけば次に見えたのはさらり揺れる黒髪。
そしてにやりとした笑みがそこにあった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「どうしたんだ?。」
さらり黒髪が傾げた首に従い揺れる。
「・・・あ、えと、いつもお世話になっているお礼に甘味を作ってきたのでよろしければ皆さんで召し上がってください。」
驚きで一時停止していた思考。
あわてて持っていた包みを手渡せば驚いた後嬉しそうな笑みを彼は浮かべた。
「礼を言う。後で皆といただこう。」
そのまま受け取った方の手と反対の手で頭をなでられた。
「立花先輩?」
「どうしたんですかあ?」
廊下の向こうから聞こえてきた新たな声。
見ればそこには水色が二つに黄緑色、紫がそれぞれ一つずつ。
「あ!先輩だ!」
兵太夫が嬉しそうに走ってきてに飛びつく。
それを受け止めてぎゅうと抱きしめてやればふわり笑って。
伝七を呼び寄せて同じようにしてやる。
紅い顔をしながらも嫌がってはいないそれにただただ頬が緩んで。
「先輩はどうなされたんですか?」
「お届けもの、かな。先輩に渡したから皆で食べてくれ。」
不思議そうに近づいてきた藤内にそう答えてやれば皆の視線が仙蔵へと移る。
「!お菓子ですか?」
「「ありがとうございます!」」
嬉しそうなそれにどういたしましてと返す。
さて、次に向かわなければと思い兵太夫から手を離して去る旨を告げようとすれば先ほどに比べてかなり重たいタックルを食らった。
「・・・喜八郎」
先ほどから一言も話さなかったかと思えばぎゅうと体に抱きつかれて。
これでは動くことができない。
「。」
優しい声色で呼ばれた名前に仙蔵を見れば出会ったときと同じ、何かを企んでいるような笑み。
「礼のかわりに委員会に参加させてやろう。」
いえ、いいです。
そう答えたところでの意見は通るはずなく、さらには喜八郎にしがみつかれているせいで動くこともできず。
その日は作法委員会の活動に被写体という名前で強制参加させられたのだった。