行方不明の彼を探して裏山を駆けまわってどれくらい経っただろうか。
作兵衛に頼まれたからと言って簡単に受け取るんじゃなかった。
一つため息を吐いてあたりを見渡す。
影すら見えないその姿にどうしようかと思考を巡らせる。
と、がさり近くの茂みが揺れて。
とっさに構えてみるが、その気配に安心した。
「三之助。」
よべばぴょこりと茂みから顔が出された。
「あれ?どうしたんっすか、先輩。」
本当に不思議そうに首をかしげる姿に思わず脱力する。
「ん?」
そのまま三之助はに近づいてきて、そして何を思ったかの首筋に顔をうずめた。
「ちょ!三之助?!」
「・・・甘いにおい・・・」
「ぅひあ!?」
ぬるり首元に走った生ぬるい感触にの口からおかしな声が漏れた。
それになぜか首元でくつりくつりと笑われて。
そのたびに首元にかかる吐息に体中の熱が上がる。
「っ、昼、に菓子つくってた、から、だからあまいんだろう、がっ!」
こそばさと恥ずかしさで必死に声をあげれば再びぺろり舐められた後顔を離された。
「・・・先輩顔真っ赤。」
「あんたのせいだろうがあほう!」
首元を抑えながら抗議すれば楽しそうに笑われる。
「先輩ってどこもかしこも甘そうっすよね。」
「俺はたべもんじゃねえよ!ああもう!さっさと帰るぞ!!」
本当にこいつは悪戯ばっかり得意になりやがって!
ぶつぶつと呟いてそして三之助の手を引いて歩き出した。
「て、つないでくれるんっすか?」
「また迷子になるんだろうが。」
「俺、べつに迷子になってませんよ。」
「・・・もういい。」
帰った瞬間半泣き状態の作兵衛に全力で礼を言われたのだった。