銀色の主



















とある時代、とある場所。

忍術学園という忍を育成する学校がございました。

時代の陰で暗躍する彼らを育てる。

その学び屋は密やかに隠され、その特性から多くのものにねらわれる場所でした。

不特定多数のものに狙われる危険性を持ちながら、同時に守りには適する安全な場所でもありました。


この学び屋には隠される様々なものを守るため、委員会というものが存在します。


学園全体の医療を一身に背負うは保健委員。

怪我をしたものはもちろん、忍者として必要に駆られることもある様々な薬をも扱う委員会。
不運と言われるこの委員会は、それでもその不運中の幸いと言う言葉が大変似合う委員会でもありました。


学園全体の予算を取り仕切るは会計委員会。

より少ない予算をどのように上手にやりくりするか。
当然予算決算や作成時期には大きな反乱が起こることもありました。
それでもその少ない予算をどのように使うか。それも忍者として必要な素質でもありました。



学園全体の重要な機密を守るのは図書委員会。

忍を作り上げる学校。
それはいずれ様々な城へと排出する闇のものを作り上げる場所。
古今東西多くの城との関わりを持つその場所は、情報を求める輩からすれば宝箱のようなものでした。
一目見ただけではわからぬように上手に隠すその術はすでに忍でありました。


学園全体を取り仕切るは学級委員長委員会。

何らかの有事の際にはこの学園全体を取り仕切る委員会です。
普段はまったりお茶を飲んでいるだけだと思われている委員会ですが、その指示は教師に次ぐ実力。
素早い判断力と、たぐいまれなる指令棟の役割を持つ彼らはどんなことにも冷静でありました。



学園全体の用具を管理するは用具委員。

地味と言われがちなこの委員会。
しかしながらその仕事は必要不可欠なものです。
学園の武器一つ一つを把握、修理、改造。
彼らの手に掛かれば手裏剣一つとってもまったくちがう武器のようになるのですから。



学園全体の火薬を任されるのは火薬委員会。

学園へと運び込まれた火薬を、使われたそれを把握するその委員会は秘密裏に新たな威力のものを作り上げるのも仕事のうちで。
硝煙倉の守り手である彼らはより威力の大きなものを、運びやすいものを、研究するのも仕事でした。



学園で使われる生き物を心を込めて育てるのは生物委員会。


いずれ自らの手で死地へと送ることを理解しながらも彼らのその短い生を精一杯幸せなものに。
込める思いはとても美しいものでした。
大切に慈しみ、最大の敬意と愛を込めて。
それでも、使わなければならないときには非情になれる、そんな委員会でありました。



学園へと進入する輩を排除する罠を仕掛けるのは作法委員会。

戦での作法を学ぶことを目的に作られたこの委員会。
けれどもそれは表の姿。
敵の侵入口となる裏山に多くの罠を仕掛けて、それにかかったものをも拷問するのも彼らの役目。
とても見目綺麗なものが集まるこの委員会は、その笑みの裏に数多くの傷を持っていました。



そして、この学園に進入するあまたの敵を排除するのは体育委員会の役目。

天真爛漫、いけいけどんどん。
委員会の花形と呼ばれるこの委員会。
その名の通り、運動面ではひどく優れたものが所属しておりました。
夜な夜な現れる敵を一匹たりとも逃すことなく排除する。
それは、体育委員会の役割でございました。




そうしてそんな彼らの手によって今日も学園は平和を手にしているのでした。







さてさて、このお話はそんな学園にいらっしゃるとあるご子息様とそれを守るとある委員会のお話です。







そのご子息様はとある国の主の子供。
十人兄弟の八番目。
その数字は、この世界では意味のないものとして見なされることの多いものでございました。
銀色の髪と太陽の笑みを持つこのご子息様は、自分が後継ではないことを恨むことはありませんでした。
それどころか、いつか兄たちの役に立てればと自らを鍛える道を選びました。

国の主である父も、実の母も、正直もののこの子をかわいがり、好きにさせておりました。


そんな思いでその子が目指したものは、忍という存在です。




驚いたのはいずれ彼を守る存在となるものたち。


主を守る術を身につけよ。
家からの命により一足先に学園で学ぶ存在となっていたその人は、二年目のその日。
入学式の日、その場所にいた主に驚きました。

どうしてこの場所に。

その思いは強くありましたが、それでも彼を守るという意志は変わらぬまま強くありましたので、逆に近くで守れると喜びました。





おまえの主が忍となる学び屋で勉学に励んでいる。
その言葉を聞いたとき、その人はその学び屋へと向かうことに決めていました。
まだ一度も目にしたことはないその方を。
彼は願ったのです。

私の主となるお方を、自分の目で見て確かめたいと。

その願いから彼はその学び屋へと向かったのでした。







学び屋として、忍術学園というのはすばらしいものだ。
その言葉を鵜呑みにした彼の両親はあっさりと彼をその場所へと送り出しました。

親の目から離れることができる六年間。

彼がいずれ守る人はこの学園に来ている方ではありませんでした。
そのお方はまだ幼く、遠いあの場所で愛おしむように育てられていて。

彼はただ、唯一自由に過ごせる時間を。
そう思いこの場所におりました。












学び屋で主が三年目を迎える頃、ことは起こりました。

その国の主が病に冒されてしまったのです。

当然周りは次の後継者をと望むようになりました。

なんと悲しいことか、

一国の国の主が倒れても、心配されるのは主という存在だけなのでした。


そして床にふした彼が後継者にと指名したのは、その場所にいない銀色の髪を持つ八番目の子供でした。


それに怒りを抱いたのは上の兄弟たち。

すぐさま自らが持てる力を使ってその八番目を亡きものにしようと動き出しました。


ですが、彼が居たのはある意味とても強固な守り屋だったのです。


学園という学び屋では生徒たちも皆が皆互いに守りあい、彼らを守るためにまた、先生たちも動いておりました。






交錯するあらゆる感情。

当の本人は、自分の危うさを理解しきることなく。


じわりじわり、その時間をとどめていたのでございます。







事が起こってからも彼に仕える人は増えて行きました。




とある少年はまだ幼いながらになかなかの腕を持っておりました。
そのため、すでに主に仕えておりました。
ですがその主にこの学園に通う弟を見張るようにと命を受けていたのでございます。
その主はこの学園に通う彼の兄上でございました。
国主である両親から可愛がられていた弟をよくは思っておりませんでした。
そのため、まだ幼い彼を監視という名目で送りこんだのでありました。

そうして出会った銀色に心奪われ、心からの忠誠を誓うようになるのに時間はかかりませんでした。





とある少年は剣術にたけた家の者でした。
優れた腕と洞察力。
その一族の守護を求める家は多くありました。
それでも、その家は特定のどこかの家につくと言うことはありませんでした。
いずれ己が認めた方に仕えなさい。
父からの言葉を胸に、今はただ、自らの腕を磨くことに賢明でした。

そんな彼が出会ったのは四つ上の彼のお人。
まっすぐな姿勢とあらゆるものに向けられる親愛の情に、頭をさげるのも遠くない話。












そう、これは、あらゆる生物を、生き物を慈しみ愛する竹谷八左ヱ門と

そんな彼を守り生きる体育委員たちのお話です。