小説














それは依存関係ではなくて

    互いの生存率を引き上げる手段 


  ただそれだけなのです






知っているのです

この両の手に掴めるものは限りなく少ないのだと。

知っているのです

この両の手で掴んだものでもいつかはあとかたもなく消え去るのだと。

知っているのです

この世界は限りなく私という存在に優しくないということを。

知っているのです

あなたはいつかいなくなると。

知っているのです




この世界に絶対のものなんて存在しないことを。




今まで真っ暗な世界で生きてきた私

世界を広げてくれたのはあなた

闇から抜け出せなかった私

手を差し伸べてくれたのはあなた

泣くしかできなかった私

光をくれたのは、あなた

広がった世界で見つけた友人

かけがえのない、仲間

君をまねる私

私がまねるあなた








知っているのです

これはいつか来る別れを苦しくさせるだけだと

知っているのです

この世界で私は異質なものであると

知っているのです

私なんかにあなたたちはもったいないものであると

知っているのです


いつか来るさよならを



         そんなことを考えたくはないけれど



知っているのです

私は何もできない臆病者だと

知っているのです

私の力は無力以外の何物でもないと

知っているのです

私に向けられる万もの笑顔を

知っているのです

差し伸べられる手の温かさを

知っているのです

こんな感情は不必要であると

知っているのです

                            それでも

知って、いるのです



光は私という存在に不可欠であることを


あなたがいるから私は生きていけるのだということを




















わかってる

この手は限りなく小さいことを

わかってる

この手でつかんだとしてもいつかは失ってしまうのだということを

わかってる

この世界は誰にも優しくないということを

わかってる

君はいつか僕と別の道を行くのだということを


わかってる



この世界に正解なんてどこにもないということを




学園で初めて会った君

その凛々しい姿に目を奪われた僕

難なく実習を成功させる君

迷い、失敗ばかりの僕

声をかけてくれたのは君

近づいたのは僕

広がった僕らの世界

手に入れた大切な仲間

僕を映す君

君と同じ僕



もう一人の僕



わかってる

これはいつか来る別れの前兆だと

わかってる

この世界で絆など何の役にも立たないと

わかってる

僕に君はもったいなさすぎる人であると

わかってる

いつかさよならしなくちゃいけないことを


         そんなことまだ実感はないけれど


わかってる

僕にできることはほとんどないと

わかってる

僕の力は君の足手まといになると

わかってる

君が僕にくれるたくさんの信頼を

わかってる

友人たちのあたたかな言葉も



わかってる

この手を差し出すのは忍びとして好ましくないと


わかって、る


                            それでも



君は僕にとって大切なもう一人の私なんだ











だからねえ。


もう少しお互いに、一緒にいよう










※※※
衝動的に書いた。
雷蔵と三郎は同じことを違うとらえ方をしてそう。
特に三郎はマイナスに考えそう。
恋愛とかじゃなくて、本当に心の底から大切な存在。
だったらいいな。