相互感謝です!






















    先輩!この問題がよくわからないのですが・・・。


始まりは彦四郎のそんな言葉だった。







日差しが暖かな午後。

各々は自らが望む自由な時間を過ごしていた。

そんななか、ある一室では二人の水色と一つの紫が机に向かっていた。




先輩、ここはどうしたらいいんでしょうか・・・?」

「ん?ああ、ここはだな___」

「!あ、わかりました!やってみます!」

二人の水色、庄左衛門と彦四郎に挟まれるようにして紫をまとうは座っていた。

わからない問題をお手上げとばかりに尋ねてくる後輩に少しずつヒントを出しながら正解へと導いていく。

さすが学級委員長なだけあってか、少し教えれば正解への道がとても早い。


「先輩、ここはこうだと思っていたのですが・・・」

「なるほど、そういう考え方もできるな。だがその場合だと___」

「あ、確かに、そうですね・・・。」

彦四郎を教えていればくいくいと逆側から袖が引かれる。

そちらにいる庄左エ門に目を向ければむう、と困ったような顔。

答えにたどり着いたものの思っていたものと違ったらしい。

少し軌道修正をすればすぐさま先を見通すその力はなかなかのものだ。


そしてなによりもわかった時の笑顔なんかもう、とても素直で可愛いものだ。



この部屋は学級委員長委員会の委員会室であった。

本来であれば委員会活動と称してお茶を飲んでいたりする時間。

あの委員会大好きっこである三郎が委員会に送れるということで、三人は一月先にある試験に向けて自主勉強をしていたのだった。


「あ、ここをこうして、こうやって・・・・・できました!」

「答え見てやる・・・。うん。正解。よくできました。」

悩んで悩んでようやくたどり着いた答えに自信が持てたのだろう。

満面の笑みで説いたものを見せてくる彦四郎。

答えを見ればそれは確かにあっていて。

ご褒美とばかりに頭を撫でてやればふにゃり、いつもは見られないような柔らかな笑み。



「それにしても、三郎先輩がいないと静かですね。」

なごんだ時を過ごしていれば、思い出したような庄左エ門の言葉。

それにぴしりとは固まった。

「庄、その名前を出さないでほしかった。」

「なんでですか?先輩」

その言葉にきょとりと首をかしげたのは彦四郎で。

「あ〜なんか、名前を呼んだらでできそうというか・・・」




がまさしくその言葉を言った瞬間のことだった。


すぱんという良い音を立てて委員会室の襖が大きく開かれたのは。


「呼んだか!」


蒼色衣装に身を包み、薄茶色の髪色を持ち、彼の級友と同じ顔を見せるその人は、満面の笑みで現れたのだった。


「・・・本当だ・・・。」

「いえ、別に呼んでいません」

突然開かれた襖に目をぱちくりとさせる彦四郎とは正反対に庄左エ門の言葉は大変辛辣・・・もとい冷静だった。


「私を差し置いて勉強会だと!?」

一つの机に仲良く座る三人に、何をしているのか悟った三郎はがん、とショックを受けたように叫んだ。

(さっきまでの静寂はどこに・・・)

一つため息をつけば、二人の水色も苦笑していて。


「庄!彦!なぜよりも上級生の私に聞かないのだ!?」

若干涙目に見える潤んだ瞳で、彼は二人の後輩にいいよる。

___伝子さんの顔で。

「うわああああ!三郎先輩、怖いです!」

涙目で逃げようと後ずさる彦四郎。

「ちょ、伝子さんは、ちょっと。」

あさっての方向を向き彼を視界に入れようとしない庄左エ門。

「先輩、たち悪すぎますよ・・・」

ため息をつくしかない

一時その場所は騒然となった。





ようやっとおさまったその場所に、いつもの顔に戻った彼はじとりとした目で二人の後輩に答えを促していた。

「ええと、ほら、さっきまで三郎先輩はいらっしゃらなかったので・・・」

そう言う彦四郎の眼はどことなく移ろいでいる。

「三郎先輩に頼むとなんだか後々面倒そうでしたので。」

「庄左エ門ーーーーー!!!」

彦四郎が庄左エ門の肩をつかみ叫びながら全力でゆする。

彦四郎のフォローになっていなかった言葉にさらに追い打ちをかけるような庄左エ門の言葉。

きっぱりあっさり述べられたそれにその場の空気は固まった。

「うわ・・・やっぱり庄左エ門は冷静というか・・・。」

固まってしまったその場の空気、という固まったのは三郎だったのだが。

部屋の隅でうずくまりだした三郎に言った本人も少し悪いと思っているのか困った顔。

彦四郎なんてもうほとんど泣いている。

しかたないなあ。


「三郎先輩。」


名前をよべばゆっくりと振り返る三郎。

その顔はしょげて見えて。

「この問題が解けないんですが教えていただけますか?」

そう言って彼の前に差し出すのはが今までにらめっこしていた問題で。

きょとりとした表情を見せた彼は次の瞬間


にたり


ものすごく凶悪に微笑んだ。

うわ、やっちゃった


そう思っても後の祭り。

彼は満面の笑みでの隣にいた彦四郎を持ち上げて膝の上に乗せると自分はその場所に座りこんだ。

そうしていそいそと問題に手をつけ始めた。

「そうかそうか、はこれがわからないんだな。まかせなさい!」

「わわ、先輩っ!」

恥ずかしそうな彦四郎の声。

なんだか可愛いその姿には反対側にいた庄左エ門を持ち上げて三郎と同じように膝に乗せた。

「わ。」

驚く声が聞こえたがそのあとは至極真面目に問題を解き続ける庄左エ門。

思っていた反応ではなくて少々物足りなかったが目の前の頭の上に顎を載せて三郎が説明をしてくれている問題へと目を向けた。

5年でも優秀な彼の説明はとても丁寧でわかりやすい。

だがたまに茶目っ気でも交えようと脱線するせいでなかなか先には進まない。

でも、まあ、こんなのも悪くはないなあ。

そう思い腕の中の庄左エ門をさらに強く抱きしめた。


「これが終わったらお茶にするぞ。おいしい茶菓子をもらったからな」


それにきらり目を輝かせ、問題を解くスピードを上げた二人の後輩に、三郎とは目を見合わせて微笑んだ。

















お勉強会をいたしましょう。











仲間はずれが嫌な三郎ですね。
仲良し学級委員会です。
やっちゃった。と思ったのは三郎を調子づかせると面倒だなあ、と思っているからだったる。
学級委員会でお勉強会・・・すてきなリクエストありがとうございました!












おけま


体育委員会でお勉強会をしたならば。






「うう〜」

「どうしたの?金吾」

「しろ先輩・・・これがわかんないんです。」

「宿題?」

「はい。」

「見てあげる。」

「!お願いします!」

委員会になかなか来ない金吾を迎えに1年長屋に行ったら部屋の中でうんうんと頭を抱え唸っている金吾。

声をかければ泣きそうな顔で振り向くものだから何だか笑ってしまった。

一緒に机に座って考える。

「ああ、これはここをね・・・」

は組は確かにあほだとかよくいわれるけど、でも頑張り屋さんなんだよ。

金吾を見てると本当にそう思う。

「あ!とけました!」

必死で考えて考えて、そうして出た答えに嬉しそうに金吾は笑った。

「よく頑張ったね」

頭を撫でれば嬉しそうに目を細めて。

「金吾、四郎兵衛!」

すぱん

突然開いていた襖から先輩の声。

「うひゃ!」

金吾は本当に驚いたのか何だかおもしろい声をあげた。

「滝夜叉丸先輩。」

「あまりにも遅いから何かあったのかと思ったぞ?」

「ちょ、滝夜叉丸離してくれませんか?」

部屋に入ってくる滝夜叉丸先輩の後ろ手には三之助先輩が捕まえられてる。

「先輩をつけろ。三之助。お前は後輩、私が先輩だ。」

「あ、俺、尊敬している人以外に先輩つけたくないんで。」

「〜〜〜っ、お前はああ!!」

「わわ!落ち着いてください、滝夜叉丸先輩!」

「三之助先輩も!」

部屋の中で言い合いを始めた先輩二人の間に僕と金吾が入ってどうどうと声をかける。

それに何とか正気に戻った滝夜叉丸先輩がこほんと一つ咳をして金吾に向き直った。

「何か用事があったのか?」

「わからない宿題があって、しろ先輩に教えてもらってたんです。」

「わからない問題?それで、解けたのか?」

金吾に目線を合わせるように膝を落とし金吾に聞く先輩。

「はい!しろ先輩のおかげで解けました。あ、でももう一つ・・・」

「なら私が教えてやろう。しろ、三之助、お前らもわからないものがあれば教えてやるぞ?」

「あ、俺はいいっす。あとで作の見せてもらいますんで。」

「お前はまじめにやれ!」

三之助先輩に怒鳴った後再び机に向かいあった金吾。

僕の代わりに座った滝夜叉丸先輩。

教えてくれるというのは、ちょうどわからないところがあったから嬉しい。

「僕、宿題取りに行ってきます!」

そう言って、外に出ようとした僕は

深緑に阻まれた。


「みんな、楽しそうなことしてるなあ。私抜きで。」


ゆっくりと見上げれば満面の笑み。

でも、何だか後ろがうすら寒い。

「・・・小平太、先輩・・・。」

滝夜叉丸先輩がうわあという顔をしている。

「そうかそうか。私抜きでなあ。」

小平太先輩が僕をゆっくりと持ち上げた。

「でも、勉強ばっかりはあまり良くないぞ?」

そしてもう片方の手で、僕の次に近くにいた三之助先輩を持ち上げた、というより脇に抱えた。

「適度に体を動かすのも必要だぞ?」

その声が聞こえたと思った瞬間、周りの景色は急速に変化しだした。



「しろ〜!!三之助え・・・」

「先輩・・・」

滝夜叉丸先輩の声が、金吾の声がすぐさま遠ざかっていって。





「これからは私も誘えよ?」

裏裏裏山のてっぺんでようやっと降ろしてもらえた僕と三之助先輩に向かって小平太先輩はにっこりと笑ってそう言った。














こちらも仲間はずれが嫌な小平太ですね。
とても楽しく書かせていただきました。
飛駆さま、相互ありがとうございました!





2010/4/2 煌 那蔵