相互感謝





「はじめまして〜僕は斉藤タカ丸っていいます。忍たまとして日が浅いからみんなに迷惑かけると思うけど、よろしくね〜。」


その人は年齢的には二つ上で、でも忍びとしては一年生。
そんな中途半端な人でした。


「私が案内しましょう!」

「いえ、ここはこの田村三木ヱ門にお任せください!」

「三木ヱ門!私がするといっているだろうが!」

「誰もお前でなければいけないなどといっていないだろう!」

「何おう!?」

「・・・ええと・・・僕は別にどっちでもいいんだけどなあ・・・。」

滝夜叉丸と三木ヱ門。
学年でも名物コンビといわれる(言い意味ではない。)二人の言いあいが聞こえて来る。
何事かと思い喜八郎とともにはその場所に向っていた。

そこで見たのはやはり件の二人組み。
想像していたのと一つ違ったのは、そこに金色の髪を持つ噂の編入生がいたこと。


「私のほうがうまく説明できるに決まっているであろう!」

「滝夜叉丸なんかに頼むよりも私のほうがいいに決まっている!」

「ええと・・・」

どうやら編入生を前にどちらが学園を案内するかでもめているのであろう。

おろおろする編入生に気づかないのはさすが二人だ。

は一つ溜息をつくといつものとおり傍観している喜八郎の横をすり抜け編入生の元へと足を進めた。
喜八郎にも何をするのか解ったのだろう。
同じように足を進める。

「はじめまして。あなたが編入生のかたですね?」
「!うん。そうだよ〜。斉藤タカ丸っていいます〜。」

いきなり話しかけられたことに驚いた表情を見せた彼は、それでもふにゃりと笑って自己紹介を始めた。
なんとも力の抜ける笑みである。

「俺は、といいます。こっちは__」

「綾部喜八郎。」

端的に名前だけを告げた喜八郎にも嫌な顔一つせず、むしろやはりふにゃふにゃと笑ってタカ丸は答えた。

ちゃんと綾部君だねぇ?よろしくね〜」

「ちょっと待ってください。李玖ちゃんってなんですか?」

「え?・・・可愛いから?」

「え?疑問文で返すのですか?」

にぱり
その笑みにどうしようもなく毒気が抜かれる気がした。


「あの二人の言い合いはしばらく終わりません。よろしければ俺たちが案内します。」

「ええ、でも・・・」

の提案に少し躊躇う様子を見せたタカ丸に喜八郎は告げる。

「あの二人は大丈夫。どうせ今声かけても気づかない。」

そう言うとすたすたと廊下を歩き出す。
それに続いても足を踏み出した。

「行きましょう、タカ丸さん。」

微かな瞬時の後彼はこちらについてきた。








             宵明

    〜曖昧で不確定 其れが確かな真実〜
     








「なんてことがあったねえ〜。」

「あの二人は相変わらずだし。」

「成長してないんだよ。」


ほこほことした柔らかい日差しの中、喜八郎とは長屋の廊下に腰を下ろして庭を見ていた。
否、正確には滝夜叉丸と三木ヱ門の言い合いを見ていたのだが。
其れを見ていたらふと思い浮かんだ昔のこと。
といっても、彼、タカ丸が此処に来たのはそんなに昔のことではないのだが。


こぽこぽと後ろでお茶が入れられる音がする。

会話の間にも手際よく行われていたそれはタカ丸の手の中。
自分たちの部屋に常備してある急須を使ってお茶を入れているのだ。



「滝、三木、お茶が入ったよ〜。」

タカ丸がそんな声を掛ければ、鳥の雛のように素早く、且つ一直線に二人はこちらへ近づいてくる。

「今日はみたらし団子だよ〜。」

「おいしそうですね。」

「さすがタカ丸さん!」


この甘味は午前中に町へ降りていたタカ丸のお土産である。
以前町にいたときのお得意さんのところに、呼ばれていたらしい。

にこにこと笑顔のままタカ丸はお茶を並べる。
滝夜叉丸と三木ヱ門がそれぞれをはさんで座っていた喜八郎とタカ丸の横に腰掛ける。

「おいしい。」

一つ口に放り込めば口の中に柔らかく甘い、お団子の味が広がる。
の口元が緩む。

「本当には甘いものが好きだな。」

「(もぐもぐ)」

「・・・聞いてない。」

食べるのに夢中なは滝夜叉丸の言葉も右から左である。


ちゃん。僕のもあげるよ。」


つ、と目の前に出されたのは今が食しているのと同じもの。

ちゃんはやめ___え、でも、これはタカ丸さんので・・・」

いつもの癖で名前の訂正が口から零れでた。
其れと同時に微かに困惑してタカ丸を見る。

「あんまりおいしそうに食べるからね。それにちゃんの幸せそうな顔見たら僕おなか一杯になっちゃった!」

「・・・ありがとうございます。」

にぱり

満面の笑みに逆らえるわけもなく。

食べ終わった自分の串をお皿に戻しタカ丸のを手に取る。

「では遠慮なく___っ!」

口に運ぼうとした瞬間右横から出てきた手に思い切り顔の向きを変えさせられる。
それこそぐぎりと鳴りそうなくらいの勢いで。

「なにすんだ、喜八__」

その手の持ち主である喜八郎に抗議の声を上げればそれは途中で強制的に遮られて。

口の中には甘い味。

目の前には整った喜八郎の顔。

もう一つ言えば、の口からは団子が刺さっていたと思われし串がでていた。


「おいしい?」

「むごむご・・・」
至近距離で首をことりと傾げて聞いてくる喜八郎。
それに答えようとするだったが口の中が団子で一杯のため声が出せない。

必死でその団子を咀嚼し横から心配げに三木から渡されたお茶を一気飲みする。


「あつっ!・・・。」
少々熱かったが。


「喜八郎!お前なあ!」

やっと食べ終え、喜八郎に抗議の声を上げる。
が、

「おいしかった?」

無表情でそう聞かれれば、の怒る気もそがれて。

「おいしかったよ。ありがとう。喜八郎。」

一つ溜息をついてそう返してやれば喜八郎は満足そうに次の団子へと手を伸ばした。

否、滝夜叉丸の団子へと手を伸ばした。

「・・・喜八郎。其れは私のだが?」

「しらなぁい。」

「おいっ!」

突っかかる滝夜叉丸をものともせず咀嚼を続ける喜八郎。


そんないつものやり取りを見て再びも団子を口へ運ぶ。


「ん。これもやるよ。。」

不意に横から聞こえたのは三木ヱ門の声。

驚いて其れを見ればそっぽを向く三木ヱ門とその手に載せられたみたらし団子。

それに思わず笑いが零れた。

「・・・何で笑ってるんだ?」

「んーん。ありがと、三木!」

実質上4つ目となる団子の串に口を付けた。






「タカ丸さん、そう言えば昨日手裏剣の投げ方のコツを知りたいといってらっしゃいましたよね?」

「うん。教えてもらえるかな?」

「まかせてください!この滝夜叉「タカ丸さん!滝夜叉丸よりも私のほうが上手に教えられます!」・・・三木ヱ門!」

食べ終え、お茶を皆で飲んでいるとき。
そのまま再び言い合いを始めた二人。
立ち上がると先程とはちがいそれぞれが各々の武器を手にした。

「わわ!滝、三木!僕はどっちでも__」
「ほおっておきましょう。タカ丸さん。」
「喜八郎・・・。」
「大丈夫ですよ。いつものことなんですから。」
ちゃん・・・。」

ちゃんはやめてください。」

彼らの言い争いが熾烈をまし今にも武器が手を離れそうになっていた。


と、


「滝夜叉丸〜!体力が有り余っているのだろう!私が鍛錬に付き合ってやる!」

「ちょ、へ、え?!七松先輩っ!?何で此処に?」

「滝夜叉丸の声が聞こえたからな!さあ、裏山に行くぞ!」

「え、わたしはっ「いけいけどんど〜ん!!」__」

突然現れたのは暴君と名高い、体育委員委員長。
その人はまさに嵐であった。
数秒のうちに滝夜叉丸をつれ姿を消した。

「・・・ご愁傷様。滝。」
「いい気味だ。」

滝夜叉丸がいなくなったことにより、相手が消えた三木ヱ門は再びこちらに戻ってきた。
その手に彼の愛するユリコを連れて。
すがすがしいまでの笑顔でそう言った三木ヱ門には声を掛ける。

「三木。そんなこというと__」

「三木ヱ門!!」

「はいいいぃぃぃ!?」

「会計委員会、今日も集るといっただろうが!ばかたれいっ!」

「し、潮江先輩っ!?」

「行くぞ!ギンギーン!」

「え、ちょ、ぃぃ___」

風の如く現れたのは学園一忍者してると評判の会計委員会委員長。
彼特有の掛け声とともに三木ヱ門の姿も見えなくなった。


「ご愁傷様」

先程のの言葉を今度は喜八郎が言う。
それでもそれらは別に驚くようなことではなく。
休みの日のたんびにこのようなことはよく起こっているから。


「これで少しは静かになる。」

連れて行かれた二人を案じる事もなく喜八郎はそう言った。

「確かにね。」

最後の団子が口からなくなって(三木がくれたやつだ。)お茶を飲む

「タカ丸さん、おいしかったです。ありがとうございました。」

「んん、喜んでくれたならよかったよ〜」


と、

「__タカ丸さーん!」

「・・・今の声って・・・」

「5年の久々知先輩。」


遠くから聞こえてきた彼を呼ぶ声。
はた、と一瞬考えた後タカ丸は慌てて立ち上がった。

「ああ!忘れてた!僕も今日、委員会あるんだった!ごめんね〜?」

ぱたぱたと忍びらしからぬ足音を立てて走っていくタカ丸。





先程までのにぎやかさはなくなり、そこは静かな空間に。
喜八郎と以外いなくなったこの場所でゆったりとお茶をすする。

それはこの学園の中、とてもとても安らげる時間。


「喜八郎。」

「なに?」

「おいしいな。」

「そうだね。」




そんな彼らの日常です。












それは雅が来る少し前のこと。


※※※

黒蜜豆乳プリンの壱衣晴子様に捧げますです!!

相互、ありがとうございます!
相互お礼夢として書かせていただきました!
4年生でほのぼの、とのことでしたので・・・。
・・・あれ、滝と三木が空気?
タカ丸出張ってる?
喜八郎、は言わずもがなですね・・・。
ごめんなさい!
リクエスト受けた瞬間に、浮かび上がったのがこんな話でした!
私の趣味が、もろわかりなような・・・
しかも何気に他のキャラがいろいろいる・・・。
とっ、特別出演ということで!
・・・しかも無駄に長くなってしまいました・・・。

ええと、なにはともあれ、よろしければお持ち帰りください!
愛だけはたっぷりです!
むしろ愛しか詰まってません!(え?)

これからもよろしくおねがいしますです!


                         2009/7  煌 那蔵