たとえば、未来の君とかに






真っ白な視界

大きな音が一瞬した後、すぐさま目の前は真っ白に染められて。

「っ、げほっ、けほっ・・・」

小さく咳き込みながら涙目であたりを見渡す。


「___!」

微かに聞こえた声。
そちらに目を向ければ白を掻き分けて近づいてくる影。

「じ__だ__!」

確かさっきまで一緒にいたのは、銀髪の髪を持つ友人。

「獄寺くん・・・」

「十代目!!?ご無事ですか!?」

二人して向き合って、ぽかんと口を開けて。

「・・・え?」

「・・・・あれ?獄寺、くん、だよね?」

「・・・十代目、ですよね・・・?」

そこにいたのは黒いスーツを着た銀髪の友人を+10歳したくらいの青年であった。

「十年バズーカ、ですね。」

「・・そうみたい、です・・・。」

「そんなにかしこまらないでくださいよ、十代目。」

からりと笑う彼は、俺が知ってる獄寺くんとはどこか違って、よいのか悪いのか、もう一人の黒髪の友人の笑みに似ていた。
影響されているということなのだろう。

「だ、けど・・・」

目の前にいる獄寺くんはずっとずっと大人で。
そんな彼を前にしたら普通に話せるはずもなくて。

「俺は懐かしい十代目にあえてうれしいですよ?」

「獄寺、くん・・・」

でも、そういってくれたからこちらも無意識に笑みが漏れた。


「・・・て、こんなことしてる場合じゃないんです!」

ふにゃり、お互いに笑いあっていれば、どこからともなく銃撃音が聞こえた。

「ええええ?!!いったいどういう状況なの?!」

驚いて尋ねれば苦笑をしながら獄寺くんは答えてくれた。

「ちょっと、規約違反をしたファミリーに粛正を。」

「なんて、アバウトな!」

と、不意に感じた浮遊感。
一瞬の後、今までいた場所には幾つもの穴が開いていて。

ぞっとした俺にかけられたのは優しくて、頼りになる、でも知っているころよりも大人びた声。

「俺から離れないでくださいね。十代目。」

それに顔を上げれば、こちらを向かないまま言葉を続けた。

「大丈夫です。あなたは俺が守ります。」

最後ににかり、笑って。

「信じてくださいよ。」


乱闘が終わり、さまざまなものが連行されていく中、獄寺くんはちらりと時計を見て、俺を見た。

「もうすぐ時間が来ます。十代目。」

「いろいろありがとね、獄寺くん。」

「いえ。」

そこまで言うと、彼は俺の前にひざを着いて。

「わわ、獄寺くん!?どうしたの?!」


「この体朽ち果てようと心からの忠誠を。わが主に。」


驚く俺を尻目に彼はそういった。
それに心のそこから喜びとも、なんともいえない気持ちがあふれてきて。



「過去の獄寺くんにいうのは恥ずかしいから、ね・・・。獄寺くん。君がいてくれてよかった。俺は何度も君に救われたし、今現在も救われている。君が心からの忠誠をささげてくれるというならば、俺からは心からの信頼を。これからも頼りにしてる、よ。」



少しははみかみながらも告げれば一度大きく目を見開き、とても綺麗に笑って。

「俺のボスはあなただけです」




そして意識は白いもやの中へと消えていった。


















「十代目!?」

白いもやに包まれた主に慌てて駆け寄る。

手を出して掴まれたそれを引っ張りあげれば、常よりもどことなく重い。

さらには立ち上がった彼は、大分身長が高く。

「・・・十代、目?」

思わず目を見張る。

晴れたもやの中から現れたのは、彼であって、彼ではなかった。

「懐かしいな。」

ぽつり呟かれたその声は、彼のものではあったけれども、どことなく落ち着いていて、大人びているように感じた。

「息災か?隼人。」

ゆらり、体を揺らして、十代目+10くらいしたような彼は、にやり、不適に笑って、俺の名前を呼んだ。


「十年後の十代目、ですね?」

「ああそうだよ。・・・この辺はとても変わったね。」

懐かしげに、でも悲しそうに、うれしそうに、いろんな感情を詰め込んだ温かい目で十代目はあたりを見渡す。

それに十年後もこのひとはちゃんと存在することに喜びを感じて。

「お元気そうでよかったです。」

「お前もな、隼人。」

打てば響く、その返事がうれしい。

すぐ近くにあった公園で、二人は話をしていて。
スーツを着た彼はとても大人びている。

マフィアのボスにぴったりだと思う。


「ねえ、隼人。」

「何でしょうか?十代目。」

さわさわと緩やかな風に柔らかそうな茶色の髪をなびかせて、彼はふと口を開く。
それに顔をそちらに向け、返事をすれば彼はこちらを見てはいなかった。


「お前は俺についてきてくれるのか?何があっても、どんなときも」

その言葉に思わず、ぽかんとその横顔を間抜けにも見続けた。

ゆるり、答えない俺に今度は顔を向けて。

その強い瞳に俺が映る。

「守ってくれるのか?何があっても」


何を言っているんだろうこの人は、と思う。

俺があなたのそばを離れるのは、死ぬるときだけだというのに。

それらの言葉が何を暗示するのかは知れないが、それでも答えは唯一つ。

「お守りします、十代目。」

笑みを浮かべてその場にひざを着いて。
いまだに優しさが残るその顔を見つめながら。
彼はとてもまぶしそうに目を細めて俺を見て、そして口を開いた。

「俺と同じ時代の君に言うのは癪だからね。君に言うよ。隼人。君がいてくれてよかったよ。何度も助けられたし、今現在も君のおかげで俺は生きている。君が俺を守ってくれるというならば、俺も君を守ろう。君が忠誠をささげてくれるのならば俺からは信頼を返そう。これからも頼りにしているよ。君は俺の右腕だからね。」


不適に笑うその姿は、今の彼とは似ても似つかないけれども、彼そのもので

「お任せください、十代目」

この人についていこうと思えた。



再び白いもやが突如として現れたと思ったら、そこにはいつもの十代目がいて。

ほっとしたと同時にうれしくて。

思わずその体に駆け寄った。









     死ぬるそのときまで、あなたを守ります。

             体朽ちるその時も、心からの忠誠を。



                         守ってくれるならば、お前の居場所を守り続けよう。
 
                                       心からの信頼を与えよう。











※※※

円さんへ。

ご注文の品お待たせしました〜。
苦情、返品なんでもうけつけるよ〜。
今の私の精一杯。

ごめん。
私の趣味に走ったよ。

楽しかった