相互感謝
「はぁちぃやぁ、さぁぶろおおぉぉ!!!!!」
すぱん
大声、いや、むしろ怒鳴り声であろう。
其れとともにとてつもなくいい音を出して襖が開かれる。
「・・・え?」
そこにいた3人の忍たまが思わず声を零した。
宵闇 〜れっつ☆みっしょん!うぉんてっど、みすたーへんそう!〜
その部屋は学級委員会委員長委員会室。
本日の委員会が始まってすぐのことだった。
「ちょっと、用事を思い出した。、後は任せた!」
その言葉とともに我らが学級委員長代理は姿を消した。
そうしてそのすぐ後だった。
大声を出しながら近づいてくる存在に気づいたのは。
開け放たれた襖に目を向ければ、太陽の光を受けてきらきらと輝く銀色の髪。
そのぼさぼさの頭に葉っぱや枝が絡まっているのはご愛嬌だろう。
よりも一回りどころか二回りもでかいその体。
どうしてか、そんな彼の装束はいたるところが焦げている。
「悪かったな!委員会の邪魔をして・・・?。」
がしがしと頭を掻きながら部屋の中へ入ってきた八左ヱ門は、そこまで言ってふと首を傾げた。
それにきょとりと学級委員長委員である庄左ヱ門と彦四郎が首を傾げた。
「「どうかしましたか?」」
「・・・委員会だよな?」
何をそんな当たり前のことを、そんな雰囲気をかもし出しながら二人は答えた。
「「はい。」」
「・・・何でお前ら全員、湯のみを持って、団子を食べてるんだ?」
「委員会活動の一環ですよ?」
が何も思わずそう返せば、八左ヱ門の顔が引きつった。
(・・・やっぱりこれは学級委員長委員会だけなんだろうなあ・・・)
がそんなことを思っていれば部屋の奥へと姿を消していた庄左ヱ門がお盆に茶菓子と湯飲みを乗せて戻ってきた。
「竹谷先輩。お茶ですよろしければどうぞ。」
「ん?あ、悪いな。ありがとう、庄左ヱ門。」
「庄ありがとう。」
そう言い庄左ヱ門の頭を撫でてやる。
そうして八左ヱ門に向き直る。
「ところでどうしたんですか?竹谷先輩。」
「あ!忘れるとこだった!三郎は?!いないのか?!」
本当に忘れていたように立ち上がった八左ヱ門はに詰め寄ってそう問い詰めた。
「鉢屋先輩なら竹谷先輩が来る数秒前に全力で此処から逃げ出しました。」
その勢いに少々押されながらも先程の三郎を思い出し告げる。
この八左ヱ門が逃げ出した原因だろうなあと思いながら。
「んだと?!」
「・・・今度は何をしたんですか?鉢屋先輩・・・」
があんと大きな衝撃を受けその場に蹲った八左ヱ門に恐る恐る尋ねる。
「三郎の野郎、あろうことか・・・」
そこで一度八左ヱ門は口を閉ざし視線を下に向けた。
「あろうことか、あ、の、__立花先輩に、・・・・・・」
”立花先輩”
その言葉を聞いた瞬間になんだかすごく納得してしまった。
その先は聞くべきではない。
の本能ともいうべき部分がそう告げた。
その考えを振り払うと八左ヱ門に言った。
「よければ一緒に探しましょうか?」
「ええ!また三郎が何かしたの?!」
三郎と同じ顔をしながら三郎では絶対しないであろう顔で不破雷蔵は声を出した。
『鉢屋三郎』その名を持つ人が一番訪れる確率の高いであろう人の下へ訪れたと八左ヱ門。
だが其れは空振りに終わった。
「一体今度は何をしたの??」
「・・・俺の姿で、立花先輩、に・・・」
言葉をにごらす八左ヱ門に全てを悟り雷蔵はにっこりと微笑んだ。
「ちょっと、そろそろ注意しないとだよね。」
最近甘かったから・・・などとぶつぶつ呟いている雷蔵を仲間に加え、たちは再び三郎を探して歩き出した。
「は何されたの?」
「いえ、俺は竹谷先輩についてきただけです。・・・まあ委員会が進まないというのもありますが。」
「はちぃぃ〜〜!!」
その声と同時に何かが高速で飛んでくる。
八左ヱ門のもとに。
「うおっ!?」
忍びらしく其れをよけた八左ヱ門だったがそのすぐ後、そのよけた先を狙って手裏剣が飛んできた。
それを間一髪のところで避け切った八左ヱ門。
だが次には彼の腹に蹴りが繰り出された。
「うおぃっ!!?」
「はちいぃぃ!!」
それをも手で何とか押さえた八左ヱ門の目の前には黒髪の5年生。
久々知兵助がいた。
その目は微かに涙目だ。
「俺の豆腐とっただろ!?」
「知らねえよ!!」
「嘘つくなよ!さっきお前が俺の秘蔵してた豆腐もって火薬倉庫の前走っていっただろうが!!」
「はあああ!?なんだよそれっ!」
「・・・秘蔵、ですか?」
「うん。兵助いつも部屋においてあるから。」
「しかもこっち向いて俺の豆腐を、あ、あろうことか・・・」
「知らねえって言ってんだろうがあぁ!!」
ぎゃあぎゃあと繰り出される声と体術に呆然と声をかけられずにいる。
そっと横にいた雷蔵に尋ねた。
「・・・不破先輩。」
「ん?なんだい。」
「それってもしかしなくても・・・」
「うん。三郎の変装だねぇ。」
「ですよね・・・」
なんとか誤解を解くことに成功した八左ヱ門は未だに怒りが収まらない兵助を連れて再び三郎を探し始めた。
「なんだ。はちも三郎になんかされたのか。」
「・・・俺の姿で立花先輩に・・・」
「ああ。何となくわかったからもういい。雷蔵とは?」
「僕はただ純粋に探してるだけ。最近甘かったからね。」
「俺は竹谷先輩についてきたのと・・・委員会が進みませんから。」
「なるほどね。」
はてはてどこに行けばいそうかと4人で考えながら運動場に向って歩いていたとき。
「くっくっくっ・・・見つけたぞ?竹谷八左ヱ門!」
「っわあ!!立花先輩っ!!?」
焙烙火屋を両手にもった立花仙蔵が満面の笑みで現れた。
八左ヱ門がゆっくりと後ろに下がり距離をとろうとするがそれとは反対に彼に近づいていく。
「貴様、まさか自分のしたことを忘れているわけではないだろうな?」
「ちょっ、まってくださいっ!!あれは___」
言い訳、ではないのだが怒っている仙蔵には言い訳にしか聞こえない。
高笑いをやめることなく仙蔵は八左ヱ門へと火屋を投げつけた。
「はっ!問答無用だ!」
「わああああ!!」
「っ、立花先輩っ!!」
「ちょっとまってください!」
「先輩っ!!」
「・・・なんだ?久々知に不破。・・・まで。」
次から次へと繰り出される火屋に一瞬呆気に取られていたたちだったがはっと気づいたように動き出し、仙蔵の手足にすがりついた。
必死に縋り付き仙蔵を呼び続ければ不満そうな顔をしながらも一応仙蔵は止まってくれた。
「先輩っ!!それ、八が悪いんじゃないんです!」
「それやったのは三郎です!」
「そうです!鉢屋先輩です!!」
兵助、雷蔵、極め付けに。
それに冷静さを取り戻したのかぴたり仙蔵の勢いが止まった。
「・・・鉢屋、だと?」
「はいっ!鉢屋先輩です!!」
(ごめんなさい。鉢屋先輩。俺は今鉢屋先輩をかばうことは出来ません!)
心の中で先輩である鉢屋に謝った。
今にも投げるのを再開しそうであった火屋はゆっくりと仙蔵の懐へと消えていった。
「ほほう。私をおちょくりやがったうえにだますとは___」
仙蔵の顔に浮かんだ笑みはあまりにも美しく妖艶でそれ故に背筋が凍った。
「鉢屋を探しに行って来る。」
それではな、といいの頭にぽんぽんと手を置いて歩き出した。
「あ、先輩、私も行きます!私もあいつにやられた豆腐の恨みを・・・」
「立花先輩。僕も一緒に探します。今回のことはやりすぎですから。」
「そうか。では行こうか。」
「・・・竹谷先輩はいいんですか?」
去っていった3人の背中を見ながらが八左ヱ門に尋ねた。
「いや、あれ以上行くのはさすがの三郎も・・・な。」
遠い目をする八左ヱ門にもをそっと目を逸らす。
「・・・鉢屋先輩にとってある意味最悪の組み合わせですからね。」
彼が愛し、認め、双忍となることを選び、彼が常に化ける顔を持つ不破雷蔵。
頭脳明晰でありながら豆腐のこととなると他に何も見えなくなる天然豆腐小僧。
三郎とよく似た性格を持ちながらも其れのさらに1歩上を行く、なによりあのS法委員会の委員長、立花仙蔵。
「ああ、。」
くるりと言い忘れたように仙蔵が振り向いた。
「あいつを見つけたら、大声で叫べよ?」
にこり微笑む彼に逆らえるものなどこの学園にいるのだろうか?
否、いないに違いない。
「わざわざ探してくれてありがとな!」
委員会の部屋まで戻る途中、八左ヱ門はそう切り出した。
「いえ、俺も探してたんで。」
本当のことでもある其れを言う。
そうかそうかといいながら八左ヱ門は相変わらずあの明るい笑顔を浮かべていた。
「委員会の邪魔して悪かったな?」
「わわ」
くしゃくしゃと頭に熱がおかれ、撫でられる。
というよりも掻き回される。
その感覚がなんだか擽ったくも気持ちがいい。
思わず目を閉じ其れを味わう。
「くくっ」
と聞こえてきた笑い声。
「・・・?」
不思議に思い其れを見れば八左ヱ門は笑っていて。
「・・・なんで笑ってんですか」
むっとして聞けば、
「いやあ。お前本当可愛いなあと思って。」
「!かわっ!?」
思わず顔が赤くなる。
でもそれはさらに八左ヱ門の笑いを誘うものであったらしく。
「ぶあっはっはっ!!」
「そんなに笑わないでください!!」
「お前、ほんっと、小動物みてぇ!」
「俺は、動物、じゃ、ない!!」
さんざんからかわれ、むすりと頬を膨らましたままは学級委員会室の前にいた。
未だに後ろから聞こえる笑い声を聞かない振りして襖を開けた。
「彦、庄、遅くなってすま__」
「やほ。。」
その姿を見た瞬間
襖をすぱんと開け去り大声で叫んだ。
「竹谷先輩!久々知先輩!立花先ぱぁ〜んんん〜〜〜!!!!!!」
「わああ!!ちょ、、お前一体なにを___」
慌てて三郎がの口を押さえるも時すでに遅し。
「鉢屋ぁ〜!!」
「さあぶぅろお!!」
「三郎・・・?」
1人は綺麗に笑って
1人はその顔を怒りに染めて
1人はその顔に無表情を浮かべて
そこには先程分かれたばかりの恐怖の三人組がいた。
「っ!〜〜〜!!!」
「ごめんなさい。鉢屋先輩。俺は自分の命が惜しいんです。」
全力で逃げ出した三郎の後ろをこれまた全力で3人が追う。
つかまるのは時間の問題だろうが。
「・・・なんか俺、三郎が悪いのはわかってんだけど・・・」
「あれは、確かに可哀想、ですね・・・」
その日学園には三郎の悲鳴が響き渡った。
※※※
桜咲頃の桜井様に捧げます!
5年生と!
・・・ごめん、なさいっ!
仙蔵がでばってる・・・。
はちざかくのは楽しいです。
三郎も。
無駄に長い!!
こんなんでよろしければもらってください!
相互ありがとうございます!
これからもよろしくおねがいしますです!
2009/7 煌 那蔵