小説








私はここにいるのに、あなたにもう触れられない














あなたに会いたい




どこにいるの?

何処に行けば会えるの?



手を伸ばして、それを握ってくれていたあなたは。



優しい色で包んでくれたあなたは。




強がりでしかなかった私を、柔らかくほどいてくれてあなたは。




黄色い色を見ると、せつなくなるの。


蒼い色を見ると、悲しくなるの。




何かが、足りないと。

私の中の何かが叫ぶ。



何度も何度もまるで正解を探すかのようにさ迷うけれど、そこに答えは見つからなくて。




あなたはだあれ?




わからないわからない。




それなのに、それなのに、たったひとつだけわかること。




あなたがいないの。





私をたくさんたくさん助けてくれた存在が。



私を何度も何度も引っ張ってくれていた存在が。





何処に行けば会えるの?













美術館の中、見つけた肖像画。



その蒼を見た瞬間、溢れたのは記憶。
















何度も私を助けてくれたあなた。





あの世界においてきてしまったあなた。






お願いお願いお願い!!!




もう一度もう一度、もう一度!!!







私を呼んで!

私を助けて!

私を、救って!!!





あなたに会えないこの世界など、何の救いもない。



あの暗いくらい場所と同じ。



あなたという光がないの。






額縁の向こう、動かないあなたに向かって、何度も叫ぶあなたを、呼び起こすためだけに。





「ギャリーギャリーギャリーギャリーギャリーーーー!!!!」





周りの雑音など気にならない。

お母さんのとがめる声も、お父さんのなだめる声も。







助けて助けて助けて、お願い、助けて、ギャリー







あなたの色が、どこにもないの。






何処にいるの、どこにあるの



まるで目隠しされたかのように



消える消える、あなたが消える。



失われていく、私の想いが、



あなたへの気持が、まるでなかったことのように。




動かないあなたへ、何度も名前を呼んだ。


何度も何度も、手を伸ばした。



額縁の向こう、動かないあなた。




蒼いバラを大事そうに抱えて、安らかに笑うあなたに。


やめてやめて


どうしてそんな顔で笑うの。


どうして全てをあきらめたみたいに笑うの


お願い、お願い、こたえてこたえてこたえて!!!






私はここにいるよ!




あなたは私を生かしてくれた!!



あなたは私に追いつくと言った!!




あの世界であなたは私に一度も嘘をつくことはなかったわ!

何度も助けてくれて、何度も救ってくれて、どうしてどうしてどうして!!!!




会えなくなることなんて、望んでいなかった。







やめてやめて、消さないで、私の想い、消さないで!






「イヴ・・・」



お母さんの声に、お父さんの声に、交って聞こえてきたのは、黄色のあの子の声。




ゆっくりと伸ばされた手が、私に触れた。



「っ、めありめありーめありー!!」





お願い、助けて、




「ギャリーが、いないのっ!」





こんな額縁の中で笑う彼を私は見たくない!



私の前で、驚いて、笑って、怒って、そんなあなたがいいのに!!





「メアリーっ、なんでっ、なんで二人だけなのっ?!ギャリーは、どうしていないの?」




溢れる感情を、必死で言葉に変えて、メアリーに向かって叫ぶ。




「ギャリー、は、」




知ってる知ってる知ってる!


言われなくても、今この状況がどういうことなのか、わからないほど幼くない。



でも、認められるほど大人じゃないの!





どうして、ここに、いないの、





「っ、ギャリー!!」



手を伸ばして、触れたそれは冷たい感触。



柔らかな色の匂い。











どんなに望んでも、あなたの手はもう二度と私に触れることは、ない。