小説















青い薔薇を射止めるのは













「まったく!ギャリーは本当に乙女心ってやつがわかってないわ!」


私の横で大きな足音を立てながら声を張り上げるメアリー。

さっきから話題に上るのはギャリーの悪口。


「なんでこの色なのよ!私は青が好きって言ってるのに!」


事の発端は少し前。

ギャリーと私とメアリーと。

三人一緒にお買い物に行っていて。

そこで見つけた薔薇をモチーフにした髪飾り。


可愛いと声をあげたメアリーと思わず見とれた私。

それに少しだけ笑ってギャリーは黄色と青と赤色のみっつを手にとって。

気がついたらそれをレジに持って行ってお会計をしていて。


「はい。イヴは赤色ね。」


ふわり、まだまだ追いつけるきがしない高い背。

柔らかな笑顔。

同時に頭に小さくつけられる赤い色の髪飾り。


「ありがとう・・・」


小さくつぶやけばどういたしましての優しい声。



「メアリーはこっちね。」


そうしてメアリーの髪に一つつけたのは黄色い色。

メアリーの綺麗な髪と同じ色。


けれどもそれを見た瞬間、メアリーは怒りだして。


「ギャリーの馬鹿っ!」


突然叫んで、私の腕を取って、驚くギャリーを置き去りに走り出したの。






さっきまでのことを思い出しながらまだまだ怒りがおさまらない様子のメアリーの後をついていく。


ギャリーは本当に意味がわからないって言う顔をしていた。


私は、わかるけれど。



だって、メアリーが一番好きな色は黄色じゃなく青。





あなたの、色。





私は赤。

メアリーは黄色。

ギャリーは青。




誰が決めたわけでもない、それでもなんとなく指定席みたいにおさまる色。





メアリーが求めたのは自分の色じゃない。







でもメアリーそれはずるい。


私だって、ギャリーがいいよって言ってくれたら青がほしかったもの。




ギャリーのあなたの色が。






「もう!ギャリーなんて、大嫌い!」




上を向いて叫ぶメアリー。


周りにいた人たちがぎょっとしてこっちを見てくる。

それを気にもしないでさらに言葉を紡ぎ続けるメアリー。




そんな姿に、思わず笑みが漏れた。





あのね、知ってるよ、私。








メアリーあなたが一つ悪口をこぼすたびに、やるせないような今すぐにでも謝りたいような表情をしていること。

ギャリーを大嫌いって言った瞬間泣きそうになったこと。

いつも遊ぶ時は私とギャリーと両方に声をかけていること。

ギャリーがいないと物足りなさそうに元気がなくなること










知ってるよ、私。







メアリーあなたが本当はギャリーのこととてもとても大好きだってこと。







「メアリー。私メアリーのこと大好きよ。」


「!わ、私も大好きよ!イヴのこと!」




私の言葉にぱあっ向日葵みたいに眩しい笑顔。

嬉しそうに染まる頬。


可愛くて可愛くて、とても大事な私の友達。



素直になれない、可愛い子。






黄金色に輝く綺麗な髪。

ころころと変化する表情。

臨機応変に動く考え。



メアリー、あなたは



数年たてば、誰もが振り返る美しい女性に変化するの。





きっと、ギャリーだって、あなたに焦がれる。




きっと私は太刀打ちできない。





だけどだけど、私はねメアリー。


あなたのことが大好きなの。


だからこそ、負けたくない。



まだ彼に恋をしていると気がつかない今のうちに、ギャリーがこの手を取ってくれるように。


卑怯だと言われてもかまわない。





それでも私はギャリーがほしいの。





ギャリーあなたは、私たちよりも長く生きていて、私たちなんかよりもずっと魅力的な人を知ってるでしょう。




それでも、それでも。




あきらめるなんて、私の選択肢には存在しないのよ。










何度も助けてくれた、大事な私の王子様。







「どうしたの?イヴ?」

「何でもないわ、メアリー。」



だまって立ち止まった私に心配そうに声をかけるメアリー

それに笑って返して。




「本当にギャリーは女心がわかってないね。女の子は好きな人と同じものを身につけたいのにね。」




私の言葉にぴたり、動きを止めたメアリー。








私か、メアリーか。


どちらが先にギャリーを射とめられるか。









「負けないからね、メアリー。」


「え、イヴ?」


驚いた表情のメアリーを置いて



私たちを見つけて走ってくるギャリーに向かって走り出した。
















青い薔薇を射止めるのは
















「ギャリー!私青い色がいい!」

「え?別にいいけど。じゃあアタシは赤い色ね。」

「ずるい!私も青か赤がいい!」

「ええ?わかったわよ、じゃあアタシが黄色。イヴは青。メアリーは赤色ね。」






※※※


三人とも可愛い。
わちゃわちゃしてて欲しい。

恋愛の一歩手前のじれったい関係が好きだ。