ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 57









「ティアさんの体には障気が蓄積されています」

医者であるシュウの言葉に皆が息を飲む。
それは私にとっても同様で。
障気は毒である。
それは今現在誰にとっても周知の事実。
パッセージリングの操作版。
それを開けるのはユリアの血縁であるティアとヴァン。
つまりティアと共にヴァンも障気の被害を受けているはずで。
脱線しそうになった思考をそっと戻して、目の前のティアを、ルークを見つめる。
ルークの体は第七音素で作られている。
レプリカ研究の知識からそれは私にとって当たり前で。
つまりイオン様、シンクも同様と言うこと。
・・・シンク、その名前を出した瞬間、苦い感情がこみ上げる。
子供のようだ。
自分で思わずにはいられない。
を取られた、と。
今ここにいない彼女を思う。

「治療方法は?!」

思考をよそにやりすぎた。
目の前では障気にたいする効果的な治療は現在ない、というシュウの言葉に愕然とする面々。
ふむ。
それは、いささか間違いがある。

「ですが、もしかしたら・・・」

シュウが言葉を選ぶように何かを語る。
必死の形相でルークが彼に詰め寄れば、あわてたようにシュウは言葉を紡ぎだした。

「一人だけ、もしかしたら、障気を中和できる薬を作れる人が、いるかも・・・」

ルークの勢いに押されて絶え絶えにシュウは答える。

「それは誰ですの!?」

黙っていたナタリアが、アニスが、ガイが、さらに詰め寄って。

「ですがっ、彼女は、いつも神出鬼没、でしてっ」

若干涙目になっているシュウ。
しかしながら、その人物は十中八九、想像している人物だろう。
めがねに手をやり、一つ息を吐く。

「みなさん、それくらいにしておいてあげなさい」

詰め寄る面々を押さえるように言葉を紡げば、ナタリアが鋭い目つきでこちらをにらむ。

「どうして落ち着いていられますの?!」

「だって、僕たちは知っていますから。その人物を」

それに答えたのは私ではなく、一人傍観していたイオン様で。
イオン様の言葉に、ルークが、ティアが驚きの表情を浮かべる。
が、それよりも先にシュウが今度はこちらに詰め寄ってきて。

「!知っているんですかっ!?彼女は、今どこに?!」

「イオン様にふれないでください。」

イオン様に詰め寄ろうとしたシュウをアニスがあわてて止める。

言い方がどこぞの美術館のようだ。

「今、この街にいますよ」

私の言葉にシュウの表情がぱあ、っと明るくなった。
ふむ。
気に食わないですね。

「ジェイド、彼女ってもしかして___」

ガイは心当たりがあるのだろう、ほぼ確信に近い形で聞いてきた。
それに深くうなずいて答える。

「シュウ。あなたがお探しの人物は、ですね?」

名前を告げると同時、後ろで扉が開かれて。
その向こうから姿を現したにシュウは満面の笑みで飛びついた。
が、それが実現する前に、シンクによってたたき落とされていたが。















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