ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 9









「そこの陰険ジェイドはこの天才ディストのかつての友」

「どこのジェイドですか、そんな物好きは」

「何ですって!?」

「ほらほら、怒るとまた鼻水がでますよ」

「キィー!!でませんよ!!」

「それよりもそんなところで何してるんですか、。」

「あはははは・・・」

私を空中で抱えている謎の眼鏡との会話を楽しんだ後、青い軍人こと、ジェイドさんは今までの相手をすっきり無視して私に声をかけたのだった。

どうしてこうなった。
思う言葉はその一言に尽きる。

マルクト、という国ではなく、ジェイドさんという協力者を得た。
それはつまり、これから先も彼と連絡を取り合うということで。
とはいってもイオンの具合を見守ってほしい、と頼まれている今、共に行くしかなかったのだが。

砂漠の町、カイツールにて薬をおろすための別行動。
慣れたそれに彼らも何も言うことはなく。
彼らの目的も、この町で行われた話し合いも、自分の仕事をこなしていればあっさりと聞き逃したのだが。
(ぶっちゃけ言っちゃうと、この旅の目的すらあまり理解していない。)
そうして話し合いも終わり、宿にて休息もとったため、さてではキムラスカへ向かうために港へ進む。

そこに突然現れた緑髪の仮面。

疾風のごとく駆け抜けたその影に、視線をとられ思わず立ち止まり、気が付いたときには船は港を出ていた。
まあつまり一言でいえばおいて行かれたのだが。

「あー・・・」

別にいいけれどもちょっとさみしい。
ジェイドさんの知識を暇なときにでものぞいてみようとか思っていたのに。
まあおいて行かれたものは仕方ない。
縁があればまたどこかで会えるだろう。
そう思い、港から踵を返したその瞬間、

「はーはっはっは!」

気持ちの悪い浮遊感と圧迫感。
見上げるまでもなく、目の前には黒とピンクのなんとも趣味の悪い色。

「あなたを人質にでも使わせていただきますよ!!これであのジェイドも・・・!」

どうやらジェイドさんの知り合いらしいその人は、楽しそうに私を抱えたまま、大分沖のほうまで進んでいった船を、まさかの飛ぶ椅子で追いかけた。
連れられていくその瞬間、なんだか仮面と目があった気がするのはたぶん気のせいだろう。



そうして、今に至る。

後ろでキーキーと声をあげるディストさんとやら。
どうやらジェイドさんとは既知の仲のようで。
まあ彼はあっさりとそれを否定していたが。
さて、ここから逃げ出すにも案外がっちりと腰をつかまれているせいで動けず。
下からのジェイドさんの視線が痛い。
さっさと降りて来いと言外に訴えている。
しかしながらごめんなさい、本当に動けそうにないんですよ。

「きーっ!!この女を返してほしければさっさと音譜盤を渡しなさいっ!!」

がくんがくんとディストさんの体が動くたびにもちろん椅子も動くわけで。

「わわわ、」

落ちそうになるそれに思わず目の前のピンクをつかむ。
抱き着いたようになったのは仕方がないことだろう。

「___これですか?」

ジェイドさんがどこからともなく出してきた書類。
それを急降下してディストさんは掴み取るわけで。

「うわわわわ、」

急降下と同時に宙に浮いた体。
それは、ふわりとぬくもりに包まれて。
気が付けば目の前には空の青ではない青色。

「代わりには返していただきますね」

体に響く声。
それはじわりと振動するように伝わってきて。
ゆるりとあげた視線の先、ちらりと向けられた視線はどこかあきれたようなもので。

「ええと、・・・ごめんなさい?」

そっと言葉をこぼせば小さなため息が帰ってきて。
ぽん、と一度頭を撫でられてその視線は外された。

「さて、さっさと倒してしまいましょうか」

ルークたちが一足先に対峙する中下がっているようにと言外に諭されて。
被害がこないようにとアニスに守られるイオンの隣へと避難したのだった。














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