ドリーム小説

戦闘意識は皆無です  〜皆と〜









って、本当に戦えないよね。一人の時どうしてたの?」

アニスのそんな言葉に、パーティメンバー皆の視線が集まる。

「今まで・・・?」

そういえば、どうしていただろうか。
暖かな彼らに守られながらの道中。
当たり前になってしまったそれら。
そこに至るまで、一人で世界を歩いていたとき。
ゆるり、記憶を呼びさました。



「あー・・・」

次の街へと向かう道中。
嫌な気配と共に目の前に現れたのは賊と呼ばれる類の物で。
五人の男達が手に手に武器を持ち、愉しそうに笑う。

「さ、金目のもの、置いていってもらおうか」

さもありなん、な言葉をはいて、彼らは一歩、また一歩、距離をつめる。
頭の中で考える、逃走経路。
どんなに考えても残念ながら戦う力はないもので。
逃げる、それしか選択肢にはないわけで。
しかたない。
ぐるり、首と肩を軽く回して、ちらり、彼らの後ろに視線をやる。

「あ、」

そのまま彼らの後ろを指させば、何事かと三人がそちらを向いた。

「あ、ちょ、まちやがれ!!」

その隙をついて、今まで歩いてきた方向へと全力で方向転換、走り出す。
こんな時のために、鞄は体にフィットするサイズの物を。
走りやすいように足下はブーツ。
追いつかれたときのために、速攻製の眠り薬と痺れ薬、煙幕はすぐに取り出せるところに用意してあって。
ぐんぐん、素早くすぎていく周りの景色。
逃げ足にしか自信はないが、それはつまり逃げ足には自信がもてると言うことで。
あまり切れてはいない息を保ちながらちらり、後ろに視線をやれば、そこには二つの陰がついてきていて。
(あー、思ったよりも足が速い。)
しかたない。
ごそり、懐の痺れ薬を取り出して、自分の口元を布で覆う。

「てや」

後ろに振り向きざまそれを相手の方向へと流せば、何事かと後ろの二人は一瞬足を止めて。
同時に、その場に崩れ落ちた。
それを見届けた後、再び走り出す。
先ほどまでいた街には、確か常駐のマルクト軍がいたはずだ。
彼らにとっつかまえてもらおう。
あわよくば懸賞金とかかけられてないかな。
そんなことを思いながら遠くに見えてきた街へ、さらにスピードをあげた。



「っていう感じかなあ」

あのころのことを思い出して言葉を紡ぐ。
懐かしい、気楽だったけれど、少し寂しかった一人の旅。

「変な奴だな。なんでそれで外に行こうと思ったんだよ」

あきれたようにルークが言う。

は、たくましいんですね」

にこにことイオンが笑いながら告げる。

「というかよくもまあそれで生きてこれたよな」

ガイが苦笑をみせた。

って案外大ざっぱだよね」

アニスがしみじみと頷いて。

「無事でよかったわ」

ティアに撫でられた。

「運が良かったんですね」

話を聞いていないと思っていたジェイドさんもさりげなく参加してくる。

「うん。そうかもしれないですね」

でも、今は違う。
イオンと同じポジション。
守られる場所だけれど、守ってくれる存在がある。

「これからは後ろにいろよ」

ルークの言葉にそちらをむけば視線をさまよわせる彼がいて。

「ルーク、ほら、ちゃんと言わないと伝わらないだろう?」

ガイが先を促す。

「ルークは優しいですね」

イオンが優しくほほえむ。

「つまり、守ってやるから後ろにいろ、ってことですよね」

愉しそうにジェイドさんが紡ぐ。

ほら、この場所はあったかい。

「ありがとう、ルーク。頼りにしてるからね」

一人ではないことが、こんなにもうれしいと思わなかった。












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