ドリーム小説


























「なるほど、これは映えるな。」

漆黒の髪、艶やかなる着流し。

目の前の男は私の顎をつかんで、顔をのぞき込みながらそう言った。



あれよあれよと何がなんだかわからないうちに連れ込まれた部屋。

男の部屋の割に、色鮮やかなその場所は、持ち主の性質を表すよう。

16番隊隊長、イゾウ

なぜこの人に興味を持たれたのか、残念ながら理解はできない。


身に当てられる衣服。

着物と呼ばれるそれら。

楽しそうに色を合わせていく様はおもちゃを見つけた子供のよう。

「16番隊隊長さん。」

「なんさね?」


それはこちらの言葉だろう。

「私なんかを着飾って、楽しいですか?」

「とても。」

間髪入れない返事に思わず口を閉ざす。

これ幸いとばかりに、化粧を施されて、紅を塗られて。

ほらできた、と鏡の前にたたされる。


「・・・気持ち悪い。」


確かにここにいるのは自分なのに、自分ではない感覚。

自分が、自分ではなくなると言う恐怖。

小さくふるえた体をこの男は見逃さない。


「目をそらしなさんな。」

ぐ、っと後ろから頬を挟まれて、視線を鏡に固定される。

見返してくる、”誰か”が、かすかにふるえているのが見える。

「これは、おまえさんだ」

刻み込むように、男は述べる。

偽ることを許さないとでも言うように。


「私は、」

息を、一つだけはいて、ゆっくりと瞬きをして。

鏡の奥、自分の後ろにいる男を見つめる。


「、私で、いい。」

「これ以上も以下も、いらない。」


だから、お願い、


「私を、私以外に、しないで。」


「俺だって、おまえさんを認めてやるぞ?」

「私には小さな世界だけでいい。」


あたまに浮かぶ、幼き日の情景。

”私”を助けてくれたおやじ様



「私にとって”隊長”は一番隊の隊長のこと。私にとって家族は、親父さんとドクターとナースさん達。」


「それ以外、もう、いらないの。」


緩やかに、目元が隠される。

少し冷たい体温は、この人の心が温かいということなのか。


「その小さな世界に、俺が入る日が来ることをいつまでだって願ってるさ。」


柔らかな声にそっと瞳を閉じた。

















イゾウ的にはちゃんとした妹。
存在を知っていたけれど、ナースたちのガードに手を出せず。
存在があかされたのでこれ幸いとかわいがる。(イゾウなりのかわいがり。)



























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