ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 












銀色の髪
おぼろげな表情
高貴さを感じさせる仕草。

その人は、デュークと名乗った。





魔物に皆を運ぶのを手伝ってもらって。
宿屋にて彼らを寝かせて。
そうして始めてきたこの町を見て回る。

なにかひとつでもいい、きっかけが、手がかりが、ないかと。

そうして動き回っていれば見つけた、ひときわ大きな御屋敷。
誰かいるかと入ってみれば、そこにいたのは銀色。

ゆっくりと振り向いた彼が、私を見て目を瞬かせた。

「__お前は・・・・・・?」

不思議そうに私を見たので、へらりと笑い返してみる。

「どうも、毎度おおきに、配達ギルド、黒猫の足です〜。ご用命とあれば、例え火の中水の中。ただし配達物の安全は保障しかねます〜燃えない紙、濡れない紙でどうぞ〜。天の上地の下、はたまた砂漠の中だって。運んで見せます。運ぶのは、荷物だけにあらず。信用も一緒にお届けします〜どうぞ配達ギルド黒猫の足をご贔屓に〜」

久しぶりに口にする口上。
誰の邪魔もはいらなかったそれに満足していれば、
目の前の銀髪はゆっくりと首を傾けた。

「__ギルドのものか__デュークだ」

私が自己紹介したからだろう。
銀髪もゆっくりと自分の名前であろう者を口にして__

__今、なんていった?

じいっと彼を見つめれば、一度、二度、不思議そうに瞬きを返されて。

「__デュー、ク?」

確かめるように名前を呼ぶ。
そうすれば、なんだ、とばかりにこちらをじいっと見てきて。

「あなたは、私を、しって、いますか」

口に出した言葉は、どこか震えていて。

「あなたは、私の、世界が、わかりますか」

端からきいていれば、阿呆みたいな質問でしかないだろう。

「あなたは、私の探しているものの、こたえを」

それでも、他に聞き方がわからないのだ。

「しっていますか」

静かに私の質問を聞いていたデュークは、ゆっくりと瞬きをすると私のすぐ目の前までやってきて。
微かに冷たい体温が頬にふれた。
両側から包み込むようにふれてきた手のひら。
そのまま見下ろしてくる瞳をまっすぐに見返す。

「エアルを持たない特殊な体、この世界で生まれ落ちていればでてこない発想」

私の体を確かめるように、その手のひらは、頭に、肩に、触れていく。

「なるほど、異なる世界からの来訪者・・・・・・つまり異端者か」

私が、この世界のものではないと、理解しているように。

「確かに、ここにあるべき魂ではないな、お前は」

この世界での異端者だと、認めるように。

「歪みに、巻き込まれたか・・・・・・」

初めてこの世界で、私がここにいるべきではないと、言ってくれたのだ。

「お前も、被害者だな・・・・・・」

ここにいてもいい、だなんて、優しい言葉じゃなく
ここではなく、元の世界が私の居場所だと、そう言ってくれるのだ。


私は、まだ自分の世界に戻ることを、諦めなくてもいいかな。


「__私は、お前の望む答えはやれない」


いいよ、知ってた。
大丈夫、わかってた。

私がここにいる存在ではないと、認めてくれただけで、十分だよ。

視界が滲むのは、うれしいから。
それだけ、だから。
ぼとぼとと落ちていく滴を、デュークの細くてしなやかな指が、拭ってくれる。
そんなことされたら、感情が、とまらなく、なって、いく。

「どうやったら、帰れるの」

私の大事なあの場所に

「なにをすればいいの」

あの場所に帰るのに

「どうすれば、もう一度私の大事な家族に__あえるの」

大切で、大事で仕方がない、あの人たちに。

「__私はその答えを持たない__だが、探してやることは、できよう」

デュークはそう言って、涙を拭い続けてくれた。









配達ギルドと銀色の君

















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