ドリーム小説







向かいの家のおうち事情  












 さいかいした



「え・・・?さんが外にでてる!?」

「蘭ちゃん、それはいささか失礼じゃないかな」

私だってたまには外出する。
日中は暑いから夜中だったり早朝だったりして。
ただたんに、食材から何からすべてネットで頼めるからあまり外に足を運ばないだけで。
用事があれば外にでるし、おいしいというコーヒーを飲みに喫茶店に行ったりもする。

おいしいコーヒー、その目的地が蘭ちゃんの家の下の階の喫茶店だったとはおもわなかったけれど。

また一緒に遊んでください!そういいながら蘭ちゃんは自宅へとあがっていって。
それを横目に私は目的の場所のドアを開いた。

カラン響いた鈴の音。
中に入った瞬間引きつけられた視線の先。
そこにあったのは、金色の髪と暗めの肌を持つ、一人の、イケメン

「あ」

かぽん、とあいた口から漏れ出た音。
それは、いつの間にかそばにきていた男の手によってふさがれた。
にっこりとした笑顔。
ねえ、瞳の奥まっくらなんだけど、メッチャ怖いんだけど。

「はじめまして、の方ですよね?どうぞこちらのカウンター席へどうぞ」

まって、こんなキャラだったか?このひと。
脳裏に浮かぶあの夜のこと。
それらをなかったように振る舞おうとするのは、なぜか。

「お勧めはサンドイッチですが、いかがですか?」

にっこり、笑顔という名の脅しだそれは。
でも、まあ長いものには巻かれろ精神、なめんなよ。
全力で初対面を演じてやろうじゃないか

「ではお勧めのサンドイッチとコーヒーをお願いします。イケメンですね、お兄さん」

私の返事にぴたり、笑みが止まって。
一度二度、瞬かれる瞳。

「___ありがとうございます。あなたは、とてもお綺麗ですね。」

ふんわりと、柔らかな笑み。
それは始めてみるもので、
でも、どこか似合わない笑い方だ。

「思ってもいないお世辞はいらないです。」

ぽろっ、と落ちた言葉。
ぴしり、固まった笑顔。
それに対してにっこりと笑い返した。



目の前に静かにおかれたお皿。
彩り鮮やかに盛りつけられたサンドイッチは食欲をそそられて。
同時におかれたコーヒーの放漫な香りがあたりに漂う。

「おいしそう・・・」

口の中じわじわとにじみ出てくる唾液をそのままに、一つサンドイッチを手に___

「お名前を聞いてもいいですか?」

できなかった。
目の前にあったはずのお皿はいつの間にか宙にういて。
それをたどれば相変わらず笑顔のイケメン。

「私のサンドイッチ返してくださいよ」

「お名前教えていただければ、すぐにでも」

にっこり笑顔ってここまで脅しに使えるんだなぁ。
そんなことを思いながら、出し惜しみする必要もないか、とあっさりと応える。

、ですよ。」

ほら返してください。
その言葉を発する前に簡単に戻ってきたサンドイッチ
やっぱりおいしそう。

さん、ですね。」

念を押すように繰り返された名前にうなずきながら一つ目のサンドイッチを手に。
ぱくり、口に含んだ。

さん」

「え、なにこれ、めちゃくちゃおいしい・・・!」

しゃきしゃきのレタスに柔らかな舌触り

「僕は安室透と言います」

口の中で広がる風味は、サンドイッチとは思えぬほど、美味

「どうやら僕、」

沖矢さんの料理にも負けずとも劣らず

「あなたに一目惚れ、してしまったようです」

コーヒーも一口。
なにこれ、めっちゃ深い・・・!

「家に帰ったらあなたが料理をしていて、僕の帰りを待っててくれるような、さんとそんな関係になりたいです。」

においだけじゃない、あじもすごい

「ねえ、さん、聞いてます?」

「やばいですね、このおいしさ、通い詰めちゃいます」


後に安室透は語る。
この顔に生まれついてこの方、告白というものをあんな風にかわされたのは初めてだった、と。


※※※※※※
面倒だから手込めにしちゃえ、と思っただけのあむろさん
以後、聞いてなかったから告白はなかったことにされちゃう。











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