ドリーム小説







向かいの家のおうち事情  





ひとやすみ



「いらっしゃいませ、さん」

「はい、おじゃまします、安室さん」

日課となったブレイクタイム。
いつも通り笑顔で出迎えてくれる安室さんに返事をしながら指定席になったカウンターの一番奥の席へ。
何にします?
そんな問いかけにコーヒーと新作らしいパンケーキを頼んで。
おや、と思う。
かしこまりました、そう浮かべた笑顔はどこか疲れた色を醸し出していて。

注文品を作りに離れた彼の後ろ姿を眺めれば、足取りもどことなく重たそうで。

「ふむ」

ぐるぅり、見渡した店内。
時刻は6時30分。
喫茶店であるこのお店の繁盛時間帯とは大きくずれた今、店内には私以外の姿は見あたらず。
店員も、安室さんだけ。

ならば

「お待たせいたしました。」

目の前におかれたおいしそうなパンケーキ。
ふわっふわの生クリームと鮮やかな色彩を醸し出す果物たち。
添えられたアイスクリームがはやく食べてと誘ってくる。

「安室さん、ウィンナーコーヒーも一つお願いします」

目線はパンケーキに向けたままもう一つ頼めばきょとんとした表情。

「もう一人、この後そこにくるので」

珍しいですね、といいながらも安室さんは準備をしに厨房に戻って。

「お待たせしました」

すぐに運ばれてきたそれ。
黒い水面はたっぷりの生クリームで隠されたそれは横の席に。

それを見ながら横のイスをひいた。

「はい、安室さん」

「え?」

きょとん、とした表情。
なんか珍しいそれに小さく笑いが漏れた。

「一人で晩ご飯は寂しいじゃないですか。ちょっとだけ、つきあってくれません?」

そう告げれば一つ、ため息

「___仕方がないですね、他でもないさんの頼みならかなえなきゃいけませんね」

へらりといつもの彼ではあり得ないくらいに柔らかく、笑った。

「でもさん、晩ご飯に甘いものはあまりお勧めできないんですが」

お母さんみたいな言葉に私もへらりと笑い返した。












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