ドリーム小説
向かいの家のおうち事情 ナイトメア
おみあい
なんてこった。
今の状態を一言で言うならそんなところか。
目の前にはふんわりと人好きのする笑みを浮かべる一人の男性。
感じのいい落ち着いた服装に身を包む姿
いかにしてうまくこの目の前の男から逃げ出すか。
私の今日の課題はそんなところである。
始まりはいつもと変わらない仕事中。
得意先であるとあるおえらいさんが、突如息子とお見合いをしてみないか、と話を持ち出してきたことだ。
ちょっと待ってもらおうか。
仕事上必要でない限り性別をも隠している私の性別を当てたことはこの際おいておこう。
どうせ性別など2択。
数打ちゃ当たるんだ。
そこではなく、断った私を言葉巧みに家から連れ出し、最終的に自分の息子に会わせたその手腕。
なぜ、今、こんな意味のないところで発揮したのだ、その才能を!!
「さん、本日はよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。___嫌になればすぐ言ってくださいね?」
訳、さっさと意味のないこと早めて帰りませんか。
そんな私の言葉にも、男はにっこりと笑うだけで。
やめて、本当にやめて。
胃がきりきりするよ。
言ったじゃん、私引きこもりなんだって!
・・・あれ、言ったことないか?
・・・ともかく!
初対面の人と長時間一緒に入れるほど人間できてないんだって。
「では行こうか」
見た目に似合わない軽い口調はそれでも違和感なくなじむ。
さらり、とてつもなくスムーズに手を取られ、所謂エスコートというものをされた。
___私は無事に今日の夜を迎えることができるのか・・・。
思わず遠い目をした私に対してですら、彼はにこにこと笑ってみていた。
東都水族館
リニューアルされたばかりのそこは、リア充があふれかえっている。
この場所でこういったかんじの二人組はどう見えるのか。
「カップルの方限定で記念写真を撮っています」
___ですよね!知ってた!!
にこやかに職員さんに指さされた先。
ハートの形のベンチにバラの装飾。
やめて、私のSAN値はもうゼロだよ!!
「どうする?さん」
彼の言葉に無言で首を振る。
が、
「こういうのって記念だから。一枚とっとくか」
まるっと無視された。
あれえ?!
聞いた意味、どこいった!?
あれよあれよと気がつけば二人でベンチに座ってピースを浮かべる私が、彼の携帯にはいっていた。
とってもらった写真を嬉しそうに眺める男。
え、まさかとは思ってたけど、この人にとってこのお見合い、本気なの・・・?
「せっかくだしね。」
私の考えを呼んだかのように、男はにっこりと、今までみた中で一番読めない笑みを、浮かべた。
手をつながれたまま、右へ左へ、様々なアトラクションに乗ったり、ものを食べたり。
今度は観覧車行きましょうかそういってまた手を引かれて。
こんだけずっと笑っててこの人疲れないんだろうか。
そう思いながら抵抗するのも面倒でなすがままむかった観覧車の搭乗口。
「危ない!!元太!!」
響いた、声。
あわてて向けた視線の先。
ぐるり、世界が回って、落ちていく小さな陰。
「っ、」
声が聞こえてくるよりも先に、自分の手をつかんでいた相手の温もりが離れて。
気がつけばそこには空気。
一度、二度、瞬きをしたそれだけの時間で。
落ちてきていた子供は、二人の人物によって地面へとおろされていた。
一人は銀色の髪をなびかせたきれいな女性。
ねえ、そのヒールであの子支えたの?というかどっから、降りてきた・・・?
もう一人は先ほどまで私の手をつかんでいた男性。
ねえ、さっきまで見せたことのない運動神経なんだけど?
しょっちゅうつまづいた、っていいながら私の肩をつかんでいたのは、なんだったんですか?
「大丈夫ですか!?」
あわてたように走ってきた職員に一つ、二つ、厳しい顔で何かを告げた彼は、ゆるり、こちらに視線を戻して。
私を視界に入れると先ほどまでの表情を一転、ふわりと笑んだ。
___え、なにそれ、ちょっと、きゅん、とかしちゃうじゃないですか。
その運動神経なんなの?!とか問いつめる気力、なくなっちゃうじゃないですか・・・。
「すまん、突然走り出して」
戻ってきたと思ったら、すぐさま捕まれた手のひら。
いや、だからさ、別に手をつなぎたい訳じゃないんだよ?
そんな迷子になるとでも思われてるの?私。
「それからもう一つ謝罪を。少し仕事が入った」
どことなくしょんぼりとした雰囲気で言われたそれ。
いつどこでそんなやりとりがあった、そんなこと聞くよりも先に
「わー!それは残念です!」
「もうちょっと寂しそうにして欲しいんだが・・・」
うれしさを隠しきれず、全力で声を上げた私は悪くないと思う。
※※※※※※
オリジナルキャラの取引先の息子さん。
ナイトメア書き終わったらちゃんとキャラ設定としてのせる予定
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