ドリーム小説
向かいの家のおうち事情 ナイトメア3
ドライブ
なんとか運転を代わってもらって。
そこで気づいた。
「赤井さん、私がここにいる意味ってあります?」
なんでまだ私助手席乗ってんだろ。
「まあそういうな。束の間のドライブと洒落込もうじゃないか。」
くつりくつり、笑い声をあげながら、口元に加えた煙草をふかしながら、赤井さんは答えた。
「死地へのドライブとか私絶対嫌ですよ。まだやりたいことあるんですから」
口に出したらあながち間違っていなさそうで、ぞわっとした。
「たとえば?」
「巷で話題のパンケーキ食べたいですし、あのかき氷なのに氷使ってない奴とかもおいしそうですし」
昨日の夜テレビで見た特集はおいしそうだった。
珍しく行きたいと思う内容だった・・・!
「食べ物ばかりか」
「ばかにしてます?食べることは生きること!食べたいという意志が消えれば、何を楽しみに生きると言うんですか!」
「お手軽だな」
完璧にばかにされている。
「それ以外にもありますよ!___沖矢さんと植物園とか行ってみたいですし」
「ほお?」
彼の視線がこちらに向いたのを感じた。
頼むから前を見てくれ、前を!!
「スイーツ巡るなら安室さんとなら楽しそうですよね」
たぶんいろんな情報を持ってる上、巧みな話術で楽しませてくれそうだ。
「後は、そうですね___赤井さんと、海外旅行とかしてみたいですね」
「ふむ、海外か。」
「はい。どうせ赤井さんのことだから、どこ行っても守ってくれるでしょう?」
ちらり、視線を向ければそこはかとなく楽しそうに口角があがっている。
どうやらお気に召したらしい。
「そうだな、放っておいたらころっと死んでそうだからな君は」
「それは失礼じゃないですか?」
くつくつ、この笑い方はこの人の癖なのだろう。
なんだか毒気が抜かれて、ため息を一つ。
「考えておけ」
突然のそれに、くるり、何のことかと頭を回せば、ぐしゃり、かぶったままのニット帽がまたかき混ぜられた。
「海外旅行、どこに行きたいか考えておけ」
「・・・まじですか?」
「すべてが終わったらつれてってやろう」
「まじですかー!約束ですよ、嘘ついたら沖矢さんに怒ってもらいますからねー!!」
持つべきものは外国に慣れた___友人、といっていいのかこれは?
そして今もう一回気づいた。
「結局はおろしてもらえないんですね!」
返事はもちろんかえってこなかった。
戻る