ドリーム小説
向かいの家のおうち事情 ナイトメア5
よばれたらへんじ、これきほん
「赤井さん、赤井さーん!!」
返事がない、ただの屍のようだ___
そんなこと言ってる場合じゃないんだけどね!?
先ほど通信がとぎれてから応答がない。
どうする?どうしよう。
自問自答して、仕方がないか、と溜息。
ちょちょ、っとインカムを操作して、パソコンとつないで。
無理矢理赤井さんの持っているものの音を聞き取れるように設定___
「・・・ねえ、何してんの?赤井さん、何してんの?!」
聞こえてきたのは風を聞る音、打撃音、何処かを転がるような音
___赤井秀一!!___
「えええええ、ぜっったい、安室さんじゃん、今の声安室さんじゃんかぁ・・・!」
聞こえてきた二つの声は、行きつけの喫茶店の笑顔が怪しいイケメン店員。
なんなの?この人。沖矢さんといい赤井さんといい、人に突っかかるのが趣味なの?
「もしもーし!赤井さーん!!聞こえてないと思うけど、応答願いまーす!!」
まあ思っていたように返事はないんだけどね!!
どうしよう!さっき言ってたばかみたいにでっかい何かが近づいてきてるんだけど!
ちっさいこどもたちが乗ってる観覧車がやっぱり動いてるんだけどっ!!
んでもって、銀色の髪の女の人も男の人と乗ってるよー。
何が起こってんのかわかんないんだけど、とりあえず、片方の観覧車は二つしか人乗ってないよー!
「わー!もう、怪我したら恨みますからねえええ!!」
返事がないならば自分が動くしかない。
いやだいやだと拒否したくなる体をなんとかなだめて、手持ちのPCの情報を常に持ち歩いている手のひらサイズの機器に移し替える。
車のドアに手をかけて、一歩外にでた。
「うううう、引きこもりには酷な仕事ですよ、これぇ」
絶対終わったらおいしいものおごってもらう。
赤井さんなんか、スイーツ食べ放題の店に連れ込んでやる・・・!
きゃっきゃする女の子の花園にニット帽で紛れ込んであたふたすればいいんだ!
___あたふた、するかなぁ・・・あれ、しなさそうだな、なんかダメージなさそう。
あ、だめだ、これ却下。
どうする?買い物に連れ回す?
否、私が面倒だからやだ。
えええ、あ、そうだ。
めっっちゃ目つき悪い上に人相も最悪だけど、あの人よく見ればイケメンなんだよな。
安室さんとはまた違う種類の。
よし、決めた。
バーテンの服を着せて、酌してもらおう、そうしよう!!
ちなみに安室さんにはなんかおいしいスイーツでも作ってもらおう。
うん、そうしよう。
決まれば足取りは多少軽くなると言うもので。
ふらり、ふらり。
安室さんが入り込んだ警備の手薄そうな場所を目指し歩く。
「お疲れさまです〜」
すれ違う従業員らしき人たちにへらり、手を振って頭を下げれば勝手に身内だとでも思ってくれる。
曖昧な関係で成り立つ世界に感謝しながら入り込んだ裏側。
「うわぁ・・・体力あんまないんだけどなぁ」
観覧車の高さを思えば当たり前か。
遠く上の方に見えるてっぺんをみて、溜息をついて。
仕方がない、と階段に足をかけた。
「相変わらず応答はないし、二人とも喧嘩しっぱなしだし?」
インカムから入ってくる情報は相変わらずのものしかもたらさない。
本当に何してんだこの二人。
何が起こってるのかまったくわかんないけれど、一つだけわかることがある。
絶対、けんかとかしてる場合じゃない。
「もしもしー、赤井さーん。鉄の塊が空飛んでますよー。子供たちゴンドラ乗ったままですよー。ついでに銀色の髪のお姉さんもゴンドラに乗ってるんですよー」
つぶやきながら足を進める。
あ、だめだ、息切れてきた。
素直に言おう、しんどい。
「え、なんか今落ちた?」
突如インカムに響いた大きな音。
まるで高いところから落ちたような音は、危機感をあおるには十分で
「あ、あかいさああああんんんん!!へんじしてえええええ!!!」
居るであろう場所はわかってるけれど、そこに走っていく体力はないんだよ!!
でも歩いてあがるなんて悠長なこともしてられなくて、ちょっと足を早める。
あ、でもやっぱりしんどい!!
___赤井さん!!___
次いで聞こえてきたのは、思ってもいない幼い声。
___爆弾がしかけられてるんだ!!___
その声がもたらしたのはとんでもない事実。
「はああああ?!!!」
ばくだん!?なにそれ、きいてない!!
ちょっとまって、これ、もしかして生きるか死ぬかみたいな、危ない状況!?
入ってきた情報に混乱しながらもとりあえず一歩一歩足を進めて___
「」
ようやっと、響いた、声。
私を呼ぶ、声。
「あっかいさあああああんんんん!!!おそいんですよばかああああああ!!!」
叫んだ私はぜっっったいに、わるくない。
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