ドリーム小説







向かいの家のおうち事情 ナイトメア6










ばくだん





「なんなんですかー!!爆弾って何なんですかー!!!」

「聞いていたのか?」

今聞いた情報に似合わない、とりあえずいつもと変わらない声。
それは、私を落ち着かせるものに___なるわけがなく。

「返事してくれないんですもん、ばかですか!!」

「状況は?」

きいてー!私の話、きいてー!!!

「さっきから何回もいったんですからね!ちゃんと私仕事してますからね!!」

「それはすまなかった。で?」

全く持って心のこもらない謝罪。
簡単に先を促されて。
よし、決めた。
バーテンの次は執事服だ。

「鉄の塊がやっぱ飛んでますー!めちゃくちゃおっきくて、この観覧車に向かってきてますー!ついでに、
子供たちが乗ってるゴンドラと銀色の髪の女の人が乗ってるゴンドラ以外、誰も乗ってないですよー!もういっこ言うと子供たちはもうちょっとで地上、女の人はもうちょっとでてっぺん!!!」

手元の機器で得た情報をそのまま伝えれば、インカムの向こう側で三人の話し声。
なんでこっちに話してくれないの?いや、聞こえてるんだけどね!



改めて、名前を呼ばれる。
先ほどまでの落ち着きがどこか、少しだけ失われた様子に、思考を止める。

「助かった。ここまででいい。おまえは今すぐに、この場所から離れろ」

淡々と告げられた言葉。
んんん?どういうこと?もう私の手はいらないと??

「今、この場所は何が起こるかわからん。俺の車を使ってかまわない。遠くにいっていろ」

あ、そっか。まだ車にいると思われてるな、これ。
残念!今私が居るのはおそらくあなたたちの、下!!

それを伝える前に、ぶちり、音を立てて電源を落とされた。
あ、ちょっとまって!電源落とされたら、話聞けなくなる!!
というか、まって!!私、ここにいるよー!!!

「あ、あかいさああああんんん!!」

返事はない、ただの屍のようだじゃねええええええ!!!!
上を見る。
まだ、距離はある。
下を見る。
結構あがってきたから、降りる方が時間かかりそう。

「ううううう、とりあえず、合流するしかないじゃんかー・・・」

泣きそう。
というかわけわかんない状態に若干泣いてる。
一歩、また一歩、がんばって足をあげる。
しんどいよー、明日絶対筋肉痛だよぉ・・・
ううう、沖矢さんに湿布貼ってもらうためにがんばって帰るんだからねぇ・・・

とか思ってたら、突然、

ぐらり、世界が揺れて。
ばちん、闇が落ちた。

「わ、わあああああんんんん!!あかいさああああんんん!!あむろさあああああんんん!!!」

今日一番の音量で叫んだ。
恥も何もあったもんじゃない。
こんなわけわかんないの、怖いに決まってる。

「っ、さん?!」

声が、聞こえた。
少しだけ上だけど、それは、確かに知ってる声で。

とりだしたスマホのライトを上に向ければ、闇の中浮かび上がる金色の髪。
あの髪本当にさらっさらだなぁ。
どういう手入れしてるんだろう。
思わず眺めていればその秀麗な顔が、歪んだ。

「なんっで、ここにいる!?」

「いろいろあったんですー!安室さーん!!」

安室さんの声にはっ、と気づきあわててそちらに向け足を進めた。
のぼってたどり着けば、彼はなぜか消火栓に頭をつっこんでた。
え、なにこれ、安室さん、そんな趣味を・・・?

「___安室さん、そんな趣味が?」

「ばかなこと言ってないで、手元、照らしてください。」

じゃないと爆発しますよ。
ばくはつ、ばくはつ・・・爆発?!

「っ、どういうことですか?!爆弾っていったいなにがあったんですか!?」

「説明は後です。」

いや、まあそうだろうけどね!
今懇切丁寧に説明されても、困るんだけどね!!
訳の分からないままスマホで安室さんの手元を照らす。

「ここにいる理由も後でしっかり聞きますからね」

あ、逃げたい。
今なら筋肉痛とか気にせずに全力疾走できる気がする!!

「よし、解除できた!!」

おおおお!すごーい!なにがどうなってるかわかんないけど、すごーい!!

「本当はここでしっかりさんの話を聞きたいんだけど___」

じろり、向けられる視線。
いつもみたいな胡散臭い感じの瞳じゃない。
あのとき、それこそ、初めてこの人に遭遇したときの色と同じ。

鋭く、研ぎ澄まされた、色。

「ちっ」

安室さんの舌打ち。
体が温もりに包まれて。
同時に響くのは耳をつんざく騒音。

「なっ」

なに?!なにがおこってんの?!
さけぼうにも世界が揺れて、恐怖はこみ上げて。

なにこれ、むり、怖い

いみが、わかんない!!

「じっとしていろ、動くな」

硬直したように動けない私をぐっと抱えなおして、安室さんは、立ち上がった。
・・・立ち上がった?

ちょ、まて、まって、まってまって!!

「あむろさん、わたしおもっ」

「黙ってろ、舌をかむぞ」

「だから、重、っ」

重いからおろして、その言葉は口からでることなく。
案の定舌をかんで終わった。
いたい。
とんでもなくいたい。
そして、既視感。

とか思ってられたのは、はじめだけ。
右に左に、飛んで落ちて、転がって。
おなかつらい、きもちわるい、なんか恐怖とかどっかいった。














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