ドリーム小説
向かいの家のおうち事情 ナイトメア8
しめくくり
それから起こったことは___とても一言で言い表せないけれど、あえて言い表すとしたら、大惨事、だった。
リニューアルしたばかりの水族館が、遊園地が、ぼろぼろに崩れて。
爆発やらなんやら、観覧車が転がったりとか、もう意味が分からないよ。
そしてそれらの出来事を私は他人事のように榊さんと一緒に眺めていた。
赤井さんたち大丈夫かな、と思いながらも殺しても死ななそうとか、ばれたら起こられそうなことを考えて。
「あー・・・会社帰るのすっごく嫌なんだが・・・さん、一緒に逃げよっか?」
「もうお願いだから家に帰してください」
榊さんの言葉にそう返した私は当然だと思う。
知り合いになった小学生と話をするようになったり、安室さんと出会わない日々が続いたり、沖矢さんが留守にしている日が増えたり。
そんな日が続いて、約2週間。
久しぶりの人物が我が家に訪ねてきた。
「ねえ赤井さん」
見慣れた私の家のソファ。
そこに長い足を組みながら腰掛けているのはニット帽。
見慣れたはずのソファが一気に高級感をさらしだした。
おい、ソファ。
おまえの持ち主は私なんだけど?
なんでさも当然とばかりに赤井さんをうけとめてんのー!
いろんな感情を込めながら呼んだ名前。
ゆるぅり、鋭い視線はまっすぐに私の方向へ。
あ、やっぱこわい!!
いつもより目の下の隈、濃くないですか!?
「」
馴染んだようにつぶやかれた名前。
かすれた声がどことなく色っぽさをうんで、ぞわぞわする!
やめて!名前を呼ばないで!
まあそんな要望届くはずもないですけどね!
「君に婚約者がいたのか?」
ぽつり、つぶやかれた内容。
どうしてそんなこと聞くの?
・・・もしか、して?
そんな感情は、赤井さんの口元に浮かぶ楽しそうな笑みで一瞬で消え去った。
知ってた。
この人が私に向ける感情がそんな甘ったるいものじゃないことなんて、とっくの昔に知ってた!!
それでも一瞬どきりとしてしまうのは、この人の顔がいいからだ!
「仕事先のお得意さまの息子さんなだけで全く持ってそう言う関係ではありませんけれども」
心持ち降下気味の感情を持て余しながら告げれば、そうか、と軽い返事。
興味がないならば聞かないでほしい。
思えどもやはりチキンに言葉は難しい。
「あの場所で安室君があっさりと彼を認めたことが気になってはいたが___それならば納得だな」
納得した、とまた一つうなずいた。
私はなにも聞いていないふりで目をそらす。
だって、あんまり深く色々聞きたくない!
私は部外者、なにも知らない、なにも関係ない!
私のお得意さまがどこに所属している人なのか、とか。
その人の息子が所属している場所だとか、そんな人のことをなぜ安室さんが知っているのか、だとか。
そんなこと、知らない、っていいはってやる!
「」
再度呼ばれる。
こちらを見ろ、と促す視線に溜息を一つかみ殺して見れば、どことなく柔らかな色。
綺麗な、色の瞳だなぁ、と。
見当違いにも思う。
きらきらと輝いて、ずっと手元に置いておきたくなるような、そんな依存力を生み出す。
「」
呼ばれ慣れてきた呼び方。
低く、耳に入ってくるそれは、知らないふりで片づけられるほど遠い存在ではなくなったけれど。
「何かあったときは、また、頼む。」
そんな風に頼られてしまえば、無碍に断れないくらいには私はこの人に心を向けてしまっているのだと、気づいてしまった。
※※
ナイトメアいったん終了
もしかしたら書き足すかもですが、とりあえず終了です。
※
名前は榊さん。
公安所属のエリート。安室さんの上司ぽじしょん
表だっては動かないそれなりの地位。
今回は本当にたまたま紹介。
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