ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 38
「ディスト、邪魔するよ」
突然開いた扉の先。
そこにいたのは緑色の彼と桃色の彼女。
シンクは私たちをみて一度だけ動きを止めて、そしてそのままずかずかとこちらに近づいてきた。
アリエッタは扉の前で私をみながら立ち尽くしていて。
「あんた、こんなとこでなにしてるのさ?」
ぐい、と腕を捕まれてディストから離される。
そのままずいずいと手を引かれてあわてて足を進める。
つれていかれる私をただディストはぼおっとみているだけで。
「何かようですか、シンク」
いつもとは違う、穏やかな口調に。
それにシンクが怪訝そうに足を止めて。
「なに?あんた変なものでも食べたの?」
シンクの言葉にディストは鮮やかに笑った。
「そうかも、しれませんね」
今度こそ、シンクが動きを止めた。
「・・・あんた、ディストになにしたのさ」
確実に私が何かをしたと訴えるような視線。
ひどい、言いがかりだ!
あまり心当たりもないため、首を傾げてみせればため息をつかれて。
「ディスト、総長が呼んでる、です」
それらを遮るように桃色が小さな声を発する。
甘い甘い、舌足らずなそれに惹かれるように彼女をみれば。ふにゃり、小さくほほえまれた。
なにこれ、かわいい!
「シンク、シンク!アリエッタ、かわいい!!」
思わず横のシンクの袖を引けば鬱陶しそうにされた。
ひどい!
「、ありがとう・・・」
脈絡のないそれ。
何事かとアリエッタに視線を向けるが柔らかな笑みが返されるだけで。
「私、なにしたっけ・・・?」
つぶやけば、楽しそうにくすくすと笑い声。
彼女のこんなに楽しそうな顔を見るのは初めてかもしれない。
「ママを、殺さないでくれたの」
その言葉によぎるのはライガクイーンの姿。
確かに殺すことは止めれたけれど、結局彼女はマルクト軍につれていかれたはずで。
「ママに会ったの。ママ、生きてたの、マルクトで共存するための方法を、模索してる、って」
彼女の言葉は予想もしないもの。
それでも、その言葉の意味は分かって。
共存するため。
マルクトがそんなことを行っているって知ったら、きっとキムラスカは脅威に感じるだろう。
でも、これは違う。
これから先、障気であふれるであろうこの場所。
魔物がいることで成り立つ生存競争を傾けないために。
彼らと共に過ごせる世界を。
ああ、どうしよう、
私、すごく好きだ。
それを願い出たであろう、ジェイドさんが、ものすごく好きだ。
それを受け入れる陛下だって大好きだけど、向ける感情が、結局違う。
離れた今こそ、強く思う、あの人のことが、大好きだって。
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