ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 40
「ルーク」
穏やかな声
優しい笑み
暖かな手のひら
すべてを慈しむようなその人。
きっと、は知らない。
「ルーク」
俺を呼ぶ声。
俺が何度それに救われているかを。
そして、俺がどんなにその声を、その声の主を大好きなのかということを。
きっと穏やかに笑う彼女は知らないし、理解してもいない。
最初の出会いはひどく衝撃的で。
たった一人、世界に挑むその姿にあこがれた。
自由
その言葉を体で表現するような人だと思った。
薬、という俺には出来ない技術で人を救い、笑顔を与えて。
まっすぐに、俺を見る瞳は最初は怖くて。
でも、それは穏やかに俺を見守ってくれるものなんだって、いつしか気づけた。
なら、俺のことをわかってくれるって、そう錯覚してしまうくらい。
けれど、はあっさりと姿を消して。
実際は、六神将につれていかれたのだったけれど、あのときは裏切られたって思った。
がアクゼリュスの住民を避難させてくれていたって知ったのもずっとずっと、後のことで。
だって、はヴァン師匠に殺されたって、思っていたから。
師匠に聞いたとき、目の前が真っ暗になった。
あの優しい人が、あっさりと殺されてしまったということに。
原因はきっと俺で、俺があの人を殺したも同然だと言うことで。
、ごめんなさい
その言葉だってもう口に出しても届かないって。
だから、
あの日、グランコクマでを見つけたとき、ただ、嬉しかった。
俺を何度も諫めてくれた、優しく守ってくれたその存在が。
まだ俺の名前を呼んでくれること、俺のそばで笑ってくれること、それらがただただ嬉しくて。
いつも、弱い姿を見せない君が、俺の前で、俺にすがりつくように懺悔するように、言葉を吐き出したのがひどく印象的で。
俺が、ちゃんと守ってあげなきゃって、そう思ったんだ。
でもそう思ったのははじめだけで。
俺は、やっぱりに守られていた。
怖いとき、いつでも君は笑って俺の背中を押してくれた。
後一歩、踏み出せないとき、いつだって大丈夫の言葉をくれた。
”これから先”を知っているなんて、そんな信じられない話。
でも、だったから信じられた。
俺の過ちをぜんぶしっていて、受け入れてくれて、それでもなおそばに存在してくれる。
ねえ、。
俺が奇跡だって、はいうけど、俺からするとがそうだよ。
ごめん、離れただけで心細くなるんだ。
ごめん、一緒にいないだけで泣きたくなるんだ。
お母さん、みたいだ、ってそういったらは笑ってくれるんだろうか。
いつもいつも、が自信を持ってせなかをおしてくれるから、俺はまだ、頑張れるよ。
、、俺がを守るから、お願い、も俺を守ってね。
back/
next
戻る