ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 41
「っ、!!」
最高指導者であるイオンは、私を見た瞬間泣きそうになりながら飛びついてきた。
「じゃ、僕はいくから」
あっさり、私を引き渡すだけ引き渡して、シンクは部屋を出ようとする。
「まってください!」
「まって、シンク!!」
思わずイオンと二人、シンクの背中に飛びついて彼を止めた。
まあ、シンクは重みに耐えきれず地面と仲良しさんになってしまったわけだが。
「重いんだけど・・・?」
いらだちの混じる声。
おお、怒っている。
そう思いながらも私もイオンも退くことはしない。
「を助けてくれてありがとうございます」
イオン。
感謝の気持ちを相手の上に乗って述べるのはどうかと思う。
シンクも同じ気持ちなのだろう。
下からぶつぶつと声が聞こえる。
だが、まあ、イオンだから許そう。
「シンク。あまり無理をしないようにね。これ、前よりも効果が高くなってる飴だから」
動けない彼のポケットに幸いとばかりに飴を詰め込む。
あ、ポケットがぼこぼこになっちゃった。
「・・・」
あきれたようなため息。
でも、それは心からの嫌悪ではなくて。
「・・・シンク、私の言葉、考えてくれた?」
上に乗ったままで問いかける。
「?」
答えないシンクの代わりにイオンが首を傾げているのが見えて。
「イオンのお兄ちゃんに、私と一緒にきませんか?ってお誘いしてるんだよ」
「だれが兄だ!」
否定された。
けれど、シンクの声は、怒っているというよりも戸惑っているようで。
「さっさとのけ!!」
とうとう実力行使、とばかりに腕の力でシンクは起きあがる。
おお、すごい。
うえにのったままでいれば、てい、っとばかりにイオン共々放り出された。
「とにかく!そいつは送り届けたからね」
ぱんぱん、とほこりを払いながら彼は荒々しく部屋を出ていった。
「・・・お兄ちゃん、」
その言葉をつぶやいて、イオンは恥ずかしそうに笑った。
「そうだ、。僕に渡したいものがあったんです」
あわてたようにイオンが机の引き出しから何かを取り出す。
しゃらり、小さな音を立てて姿を現す。
それは銀色と緑で鮮やかに彩られた装飾品で。
「これを、に」
ふわり、イオンは笑って私の後ろに回る。
「ずっと渡したかったんです。僕からに。ナタリアやピオニー陛下が渡したときから」
しゃらり、小さく音を立てたそれ。
微かに重くなる頭。
自分からは見えないけれど、イオンは満足そうに笑い声をあげた。
「僕の名前が、最高指導者である導師イオンの名前が、どうかを守ってくれますように」
胸のプレートが、腕のブレスレットが、存在感を主張するように音を立てて。
ゆっくりと鏡の前に誘導されて、のぞき込んだ先。
銀色のなかにちりばめられた緑色。
鮮やかな、導師の色。
その中心に刻まれた文字。
そこには、確かにダアト最高指導者、導師イオンの名前が刻まれていた。
「僕の名前を、・。あなたに。あなたを守る武器の一つになれますように」
艶やかに鮮やかに、最高指導者である導師イオンはそう言って笑った。
ちなみにその笑みは、の手の怪我を見た瞬間、驚きに変わり、泣きそうになった。
「本当に!は無茶ばかりです!」
と、イオンは怒りながら手当をしてくれたけれど
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