ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 56
「シンク!一回体診てもらおうって!」
「別に必要ないよ」
ベルケンドにて。
おとなしくついてきてくれるシンク。
どうせだからとルーク、イオン、シンクの体も診てもらおうかと言う話になって。
その瞬間、彼はあっさりと逃げようとした。
が、それは反射神経だけはいい私によって捕らえられて。
しかしながら力の差でシンクを動かすことはできず。
他の面々には先に診察所へと向かってもらうことになった。
シンクと二人、逃げないように、と手をつないでベンチで押し問答。
どんなに進めても行く必要はない、の返事しかなくて。
「・・・そんなに、嫌?」
そっと下からのぞき込むように問えば、ふい、と顔を逸らされて。
「・・・自分が、レプリカだって、そう再確認するための検診なんか、いらない」
すねたように、彼が告げるものだから。
無性に愛しさがこみ上げた。
つないだ手を持ち上げて、二人の間で揺らす。
「でも、私は受けてほしいな。私にとって大事な家族なんだから」
そう言えば、はずされていた視線が、おずおずと向けられて。
「それ、本当にいいの?」
ぶっきらぼうな口調。
それが、彼なりの照れ隠しだって、もう知ってる。
「当たり前だよ。私にとってシンクは大事な家族」
信じてくれないならなんどだって繰り返すよ。
「お姉ちゃんを安心させてよ」
わざとおどけて言葉にすれば、シンクも少し口の端をあげて答えた。
「あんたは心配症な姉だね」
先ほどまでの拒否を感じない柔らかな笑み。
つないだ手を引いて立ち上がれば今度は抵抗はなく。
「仕方ないから受けてあげるよ」
ゆるり、繋いだ手を引かれて、歩きだした。
back/
next
戻る