ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 65
身体の中心が、燃えるように熱くて。
浮上しようとする意識を引き留めて、また、深く深く沈み込ませる。
苦しい、そう言葉を発することもできず、まるで深海の中にいるかのような錯覚を起こす。
助けて、その想いの先にふわりと浮かぶのは___蒼い色を身にまとった、あの人。
気づけば、信じたいとそう思う相手になっていた。
一緒にいたいと、共にあってほしいと。
私があの人に向ける感情と、同じものを、返してほしい、と。
不可能なそれを望んでしまった。
早く、瞳を開けて、あの人を安心させてあげなければ。
そしてもう一人。
最後にみたのは泣きそうな顔。
おいて行かれた迷子みたいに、私の名前を呼んでくれた。
私を守っていてくれる優しくて大事なかわいい弟。
おいていかないで、そう言いたげな瞳を、独り残したままにしてしまっている。
早く、目を覚まして、あの子を抱きしめてあげなければ。
そうは、思うのに。
私の身体は私の意志を邪魔するようにたゆたって、揺らめいて。
そしてまた、意識は闇に飲み込まれていく____
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