ドリーム小説








10














「「」」



両側から聞こえてくる声。

自分よりも大きな二人を、見上げる


「久しぶりね、フレッド、ジョージ」

「覚えていていただけたとは」

「至極光栄です」


大げさな動作で、手を取られて。

まるで騎士が忠誠を誓うかのようにひざまづく二人。

先ほどとは違い見下ろした二人の瞳はひどく楽しそうに笑みを形作って。




呼ばれる名前になあに、と首を傾げれば、なぜか二人はまぶしそうに瞳を細めて。

そしてお互いに見合わせて肩をすくめた。

そっくりな動作に、少しだけ笑う。

「僕たち、決めたことがあるんだ」

「そうそう。にはちゃんと伝えておこうかと思ってね」

いつもとは違う、まじめな顔。

どことなく寂しそうに見えるのは、錯覚だろうか。



「僕たち、一足先に旅立つことにしたんだ」



その言葉に、うまく笑みを作れているのか、自信がなくなる。


くしゃり、頭をなでる手のひらは暖かくて。

ぽん、と肩におかれた手は大きくて。


これがなくなることを、おそれている自分に気づく。


がらり、がらりと足下が崩れるような錯覚。

怖い、と声には出さずにふるえる。



二人は淡く笑う。

寂しがらないでとつぶやく。

見た目よりも強くて

それなのに繊細で

強がりで、意地っ張りで、でもそれを努力で隠す他寮の友人に。



二人は、ごめん、と告げる。

最後まで一緒にいてあげられなくて。

最後まで守ってあげられなくて。

一足早くこの学び屋から旅立つことを、謝罪する。


かわいい妹のようだった。

時には頼りになる姉で。

僕らの学校生活は、なしにはなかった、と。



二人は笑う。

鮮やかに。

記憶に残るほど鮮明に。


ぎゅう、と両側からの温もり。


もう、これから先は遠くなる腕の中。



いかないで



口からでそうになった小さな言葉は、一滴の涙によって押し戻されて。



「・・・いって、らっしゃい」



変わりにこぼれた言葉に二人は互いを見合って苦笑する。





「いいんだよ、僕らの前では」

「素直に、なってよ。」

「もう、最後なんだから、さ。」


「「寂しいって、言って。」」


抱きつかれているこっちが、すがられている錯覚。

支えられているはずが、支えている錯覚。

泣いているのはのはずなのに、肩がぬれている。


寂しいのは、どちらも。

怖いのはきっと、二人も。


新しい世界に飛び出す二人。

古い世界に残る一人。


は涙に濡れた瞳で、笑う。


やっぱり、告げられる言葉は一つだけ。


寂しい、じゃない


怖い、でもない


それは、旅立ちにはふさわしくはない。





「行ってらっしゃい、フレッド、ジョージ」







いつだって、あなたたち二人を、信じているの。
























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