ドリーム小説
11
「ハリー。」
魔法省に向けて出発しようとしたハリーたちにかけられる言葉。
ぴたり、動きを止めた皆が杖を相手へと向ける。
その先にいたのはドラコだ。
そうなるのも仕方がないだろう。
つかつかと音を立ててハリーへと詰め寄るドラコ。
止めようとした周りをロンとハーマイオニーが制する。
「無事に帰ってこい。」
がしり、胸元をつかんで引っ張り寄せられて。
ハリーを睨みつけるようにしてドラコは言葉を放つ。
「こっちのことは、まかせておけ。」
いつもとはまったくちがうドラコの様子に、周りは唖然とするだけで。
ロンは一つため息をはいて
ハーマイオニーは柔らかく笑って見せて。
「必ず。」
ハリーはまっすぐにドラコをみて、返事をした。
この数年。
ドラコと築いた友人関係は伊達ではない。
皆の前でおおっぴらに話せはしないけれど、絆は確かに存在していて。
いつだって、こちらが優位になるように、こちらに被害が少ないように、そう動いてくれたドラコ。
それは確かに、友と呼べる存在で。
「ドラコ。それくらいにして、さっさと行かせてあげなさい。」
ドラコの後ろ、再び聞こえてきた声。
それは、彼の姉のもの。
まっすぐに向けられる視線は今までみたことがないほどのまじめなもの。
笑みのかけらすらない。
ゆるやかに揺れる髪が、彼女を彩る。
柔らかな唇が、言葉を紡ぐ。
「ポッター。好きに動けばいい。」
でも忘れないで。
そっとドラコを押しやって、彼女は小さな声でつぶやいた。
「あなたのせいで、ドラコが犠牲になることは、許さないわ。」
ふわり、いつもと同じ笑みを浮かべて、いつもと同じ口調で、いつもと違う瞳で、彼女は告げた。
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