ドリーム小説








13
















「我が君」


そっと、その腕に触れる。

柔らかな笑みで、愛しいと告げる仕草で。

視線は彼の人だけを写して。




誰よりも愛しい人を、大切な弟を。

その心だけで、はここに来た。

愛する人から習った開心術と閉心術だけを、携えて。



奥深く、逃れられないところまで、彼の人のもとへ入り込み。

同時に、自分の奥深く、大事な想いに鍵をかけてしまった。

のぞかれないように、大事に大事に、大切に。


だから、ここにいるのは、闇の帝王に忠誠を誓う、一人の女。


マルフォイ家の、長女。


「愛しの、君」


艶やかに、なんて知らないけれど。

艶やかに笑ってみせて。

偽りの言葉しかもたないけれど。

真実に変えてみせて。



引き寄せられる腕の中、身をゆだねて。

耳元の声に、耳を傾けて。

自分の心でさえも、偽りながら。







はやく、会いたい





その想いをかき消した。





















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