ドリーム小説








15
















こんな終わりを、誰が想像した?

否、私だけが、想像していた。




目の前、横たわる闇の帝王。

引き裂かれた大きな蛇。

驚きで目を見開く愛しいセブルス。

そして、呆然と立ち尽くすのは、獅子寮の三人と、大切な弟。


知っていた。

獅子寮の三人が、分霊箱を壊して回っていることを

知っていた。

大切な弟が、彼らのために闇に身を落としたことを

知っていた。

愛しい彼が、闇の帝王とダンブルドアの間で二重スパイをしていたことを





だから、私は闇の帝王に近づいた。

覚え高い、純血のマルフォイ家。

長女である私が、崇高するのは、闇の帝王。

すべてを、この人のために捧げて。

すべてが、この人のためにあると、


自分を、帝王を、世界を、すべてを偽った。


七年間、セブルス以外をだまし通した実力を、そのままに。

帝王のそばにあって、一年足らずで信頼を勝ち取って。

そして、分霊箱である、ナギニのそばにいることを許された。




そして、今、手を、下した。

セブルスに、愛しい人に、杖を向けた帝王に。


彼の命を宿す、その大蛇へと。





弟が、友のために闇に身を落とすのは予想ができた。

優しくて、一度内に入れたものは大事に、とても大事にする子だから。

自分を殺して、それでも決して自分を見失わない子。



だから、弟に関してはなにも心配はしていなかった。


ただ、無事に生きて言てさえくれたなら、と。




驚きで立ち尽くす、弟に、手を伸ばして抱きしめた。




ナギニを倒す方法を模索した獅子寮の三人。

彼らがここをのぞいているのも何となく感じ取っていた。

私のかわいい弟をつらい道にたたき込んだ彼ら。

それでも、そんな彼らを弟は慈しむものだから。


仕方がないと、笑ってみせる。




「姉上・・・?」


久方ぶりに聞いた弟の声。

それは、疲れた体をゆるりといやしてくれる。

懐かしい。

ぎゅう、と力を入れれば困ったように、でも確かに抱きしめ返してくれて。



。」

その温もりから引き離されたかと思えば、次いで、先ほどの抱擁なんかよりもずっとずっと強い力で抱きしめられる。

・・・!」

耳元、かすれるバリトンボイス。

それを聞いた瞬間、張りつめていたすべてが、ゆるんだ。

「っ、せぶ、るすっ、」

ぼろぼろとあふれだした涙。

決壊した感情は止まることなく。

怖かった

心細かった

うまくいく自信なんかなくて。

ただただ、弟の未来を明るいものにしたくて。

愛しいこの人を、帝王から解放したくて。

それだけのために、動いた。

二年もの間、ふれることも、声を聞くことも、姿を見ることすらできなくって。



寂しくて寂しくて。



ずっと、この腕にすがりたくて。



泣き出した私を、セブルスは強く、強く抱きしめてくれて。


弟が、一度だけ頭をなでて、獅子寮の三人をつれて、姿を消した。



セブルス、せぶるす、


何度も名前を呼ぶ私に答えてくれて


涙を拭ってくれて、抱きしめてくれて。


名前を、よんでくれて。






すべてが、ようやっと、終わったんだと、実感できた。
















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