ドリーム小説
9
「確かに、私はあの人を尊敬してる。」
二人で歩く廊下。
かつり、かつり、響く足音。
足音に振り向いた生徒たちが、その発信源をみてあわてて視線を逸らす。
まるで理不尽な減点をおそれるかのように。
は緩やかな穏やかな視線でセブルスを見据えて。
「でも」
瞳は柔らかに眇められて、長い睫が陰を作り出す。
彼らの寮生がみれば感嘆のため息をつくような、そんな芸術的な、作りものの表情。
それらの裏を承知しているセブルスからみるとまた何か言い出したな、くらいの感覚しかないのだが。
周りが小さくこぼす声。
昨年のダンスパーティ辺りから囁かれるようになった二人の関係。
否定も肯定もしない二人に、噂は消えることがなく。
「同時に、この世界で一番嫌い。」
が、ほほえむ。
慈愛に満ちた笑みで、毒を吐き出す。
かつり
立ち止まることで音が消えて。
まっすぐと見据える瞳にようやっと向き合う。
「それを我が輩に告げる意味は?」
セブルスの言葉にはさらに笑みを深めて。
「知っていて、ほしかっただけ。」
そっと首を傾けて、セブルスを見上げて。
秘密をばらすように、声を潜める。
「この世界で一番尊敬すると同時に大嫌いな魔法使いのことを」
”偉大なる”その肩書きを持つ魔法使いを
すべてを知っているだろうに、なにもかもをわかっているだろうに。
必要最低限にしか、手を出さない。
救う相手を、自らの価値観で決めたひどい人。
たくさん、切り捨てることを決めた強い人。
尊敬している。
同時に、大嫌い。
私の望むものを救ってはくれないあの人。
だって、あの人は、ポッターを道具にして。
セブルスを、犠牲にしようとしている。
暖かな、でも、人よりも低い体温がの頬にふれる。
周りがざわめく。
「あれに何かを期待することは、おすすめしない。」
こちらもまた、小さな声。
の意見に同意するように。
温もりが愛しくて、そっとその手を重ねた。
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