ドリーム小説







無色透明 23




フランキーさんが作った船は大きくて、かっこよくて。

それを作った船大工たちは誇らしげに胸を張っていて。

船をみた仲間たちも喜びで表情は明るい。

仲間が増えて、仲間が戻ってきて。

海軍に追いかけられて、それを空を飛んで逃げて___



たくさんの人たちに見送られながら、私たちは水の都を後にした。


そして、今、船の上では___

「もっと肉ーー!!」

「うっせえ!レディが優先に決まってるだろうが!!」

「おいグル眉、酒」

「自分でとってこい!!」

「サンジくん、何か飲み物もらえるかしら?」

「よーろこんで!ナミさーん!」

宴会が開かれていた。

にぎやかに飛び交う会話。

打ちつけ合うジョッキの音。

色とりどりの食事たち

笑いあいながら、自らの夢を語る海賊たち。


きらきらと輝いて見える彼らを___私は一歩離れたところからみていた。


「___ちゃん」

そんな私に声をかけたのは、いつものようにコックさん。

両手にもつトレーに様々な料理を乗せて。

召し上がれ、とばかりに眼前に掲げる。

小さく笑って差し出された料理を手に取れば、彼は嬉しそうに笑みを返してくれて。

そのまま給仕中の彼には珍しいことながら、私の横に腰を下ろした。

ちゃん、”お帰り”の言葉をありがとう」

柔らかな仕草で、穏やかな声で、もたらされた言葉。

「私は、___皆の帰る場所になれますか?」

無意識に近いところでこぼれ落ちた言葉に、サンジさんは笑みを深めて。



ちゃんのところに戻らなきゃって思ってたから。だから、頑張れたんだよ。」




その言葉に、かたくなだった心が、ゆるんだ。


ぼとり

熱い滴が、頬を伝った。

「!ちゃ、んっ」

先ほどまでの笑顔とは違って、あわてたような表情になったサンジさん。

きょろきょろと惑う表情に、感情がひどく揺さぶられて。

「あら、サンジがを泣かせてるわね」

静かに響いたロビンの声。

とまった喧噪。

後、悲鳴。

!?どっかいたいのか!?」

船医があわてたようにすっとんできて。

「サンジくん!何言ったの?!」

航海士さんがコックさんに詰め寄って。

「ど、どうだ!!みてみろ!おもしろいぞ!」

狙撃主さんが笑わせようとしてくれて。

「なにしてやがる・・・」

剣士さんはあきれたように。

「ふふ」

考古学者さんは楽しそうに笑って

「お嬢ちゃん、大丈夫か??」

船大工さんは心配そうに声をかけてくれて。


そして___


「泣くな、

みょん、と延びてきた手のひら。

両側から頬を挟まれたと思った瞬間、目の前には船長さんの顔。

先ほどまでの笑顔は消えて、真剣なその表情。


「___、何が怖いんだ?」


真黒な瞳に見つめられれば、もう一つだけ滴を落として涙は止まる。


「言ってみろ」


その言葉は、あっさりと私の口を開かせた。


「・・・ずっと思ってた。ここにいるのは仮初めだって。この場所は仮宿だって。だから、いつだって皆から一歩引いて。皆から距離をとって。」

この場所にいるのは本当ではないと
この世界にいるのは今だけだからと

「自分から望んだ立ち位置を、侵しそうになる度、必死で足を止めて、後ずさって。そうやって自分を守る方法しかわからなかった。」

居場所じゃないと逃げて。
居場所じゃないからと拗ねて。

「いつだって、置いて行かれるのだからとあきらめてた。あのとき、エースさんに手を伸ばせば何か変わったかもしれないのに。私は何もしなかった」

できたはずなのに。
追いかけてその手をつかむことも。
おいすがって、行かないでということも。

「何もせずに、私はエースさんをあきらめた。」

あのときこうすれば。
あのときああしてれば。
思うのは易く、後悔は簡単で。

「あんな想いは、もうしたくない。」


止まったはずの滴が、また、落ちる。
目の前の黒色が滲んだ。


「お願い」

静かな船上に響くのは波の音。
それよりもずっと小さな私の声を、彼らはちゃんと聞いてくれている。

「置いていかないで、つれていって。」

こんな私を、

「足手まといでしかないし、なにもできない私だけれど」

お願い、どうか、どうか

「守られることでしか生きれないままでいるつもりは、ないから。」


みすてないで


「ゾロさん、体の動かし方を教えて

チョッパー、手当の方法が知りたい

ナミさん、私に昊の読み方を教えて

サンジさん、一緒に台所に立たせて

ウソップさん、道具の扱い方を学ばせて

フランキーさん、船についてしりたいの

ロビンさん、いろんな知識を、ちょうだい」


まだこの世界のスタートにも到達していない足りない私だけれど、
それでも、この思いは本物だから。



「ルフィさん、これから先、私も一緒に冒険したい」



だから、

「いつくるかわからないけれど、私が帰るその日まで、」


こないかもしれない、そんな日は。

それでも


「私に世界を教えて、海賊王」






未来の海賊王は、もちろんだ、そう言って太陽みたいな笑顔を浮かべた













※※※
やりたいところだけをやっていく連載です。
次はモリアさんたち通り越して、シャボンディに飛ぶ予定


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