ドリーム小説
無色透明 22
「」
クザンさんを見送って戻ってきた宴の会場。
中心で騒ぐルフィさんたちを優しく見守る彼女のそばにそっと立つ。
柔らかい声で、名前を呼ばれて。
それがなんだかすごくくすぐったくって。
「ロビンさん」
見上げた先には綺麗な瞳。
私と同じ色彩の髪だけれども、それは私なんかよりずっと輝いて見えて。
「一つ、聞いてもいいですか?」
ゆるり、先を促すように首を傾けられたので、かまわずに言葉を紡いだ。
「私に言った言葉の意味を、聞いてもいいですか?」
そっと瞳が細められて、笑みが消える。
途端に冷たさを帯びる表情に、微かにふるえた足を叱咤して。
___あまりこの世界に長くいてはだめよ?___
その言葉の、意味を___
ロビンさんが、小さく息を吐いた。
悩ましげなそれは、同姓の私ですらどきりとさせて。
一度閉じられた瞳が、ゆっくりと開く。
そこにあったのは困ったような色。
「___本当は、この世界の綺麗なところだけを知っていてほしかったの」
ぽつり、つぶやかれた言葉。
理解を求めるためその瞳を見つめ続ける。
「すぐに帰ってほしかった。何にも汚れていないあなたに、この世界の汚いところを見せる前に」
ゆっくりと伸ばされた手が頬に触れる。
「綺麗なままの私を記憶に留めおいてほしかった。」
すべらかな肌が私をなぞって。
「ただ、それだけよ。」
少しだけ陰りを宿した瞳に、私は映っていて___
「ロビンさんは、きれいです」
その瞳も、声も、仕草も、たち振る舞いも、言葉選びも、姿も、すべてすべて
「私なんかよりも、ずっとずっと。」
自分のことしか考えなかった私。
この世界から逃げ出したい、と。
今生きているこの場所を否定して、戻りたいと思い続けて。
「あなたが言う”汚い”ところなんて、私にはわかりません」
この世界の常識を持たない私には正解不正解すらわからない。
それよりも、なによりも、ずっと不安だったのは___
「・・・私が嫌いだとか、そう言う訳じゃ、ないんですね?」
私のつぶやきに、ロビンさんの瞳がまるく開かれた。
早く帰りなさい。
案じるふりで、嫌われていたのかと、そう思っていたから。
その真意など、聞くまでもないのでは、ないのか。
ずっと、そう思っていたから。
彼女の瞳の中の私が、ゆれた。
「ばかね」
言葉と共に、ふわり、体が温もりに包まれて。
柔らかな匂いが胸一杯に広がる。
「あなたみたいに、かわいい子を嫌いになるわけないわ」
じわり、にじむ視界を隠すようにその豊満な胸に顔を押し当てる。
「よ、かった・・・」
小さな笑い声。
それが静まった後、そっと彼女は口を開いた。
「ねえ、。一つお願いをしてもいいかしら」
なんの脈絡もなく発されたそれ。
お願い
だなんて、彼女が使うのが不思議で。
でも、同時に少しうれしくて。
「私にできることなら、なんでも。」
ついつい安請負してしまう。
そうすれば、温もりは離れないまま、彼女は一度だけ躊躇して___
「___おかえりって、言ってくれないかしら」
少しだけ照れくさそうに、言った。
そんなかわいいお願いをされると思ってなくて。
今度は私が笑い声を漏らす番。
「おかえりなさい、ロビンさん」
「・・・ただいま、」
ぎゅう、とその温もりを強く抱きしめた。
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