ドリーム小説








towa 33













ごめんなさい、長

あなたのことを忘れてしまっていて

ごめんなさい、長

あなただけに幸村様を任せてしまって。


ごめんなさい、長


この想いをまだ持ったままで


ごめんなさい 佐助、さま



あたしはあなたのことが___








「おさ、おさ、っ、佐助、さまっ、あたし、はっ、」

胸に飛び込んで、溢れる涙をそのままに言葉をあふれさせる。



「あ、たしもっ忘れてたんですっ、ごめんなさいっ」

謝ってもあやまっても心の闇はあたしを責め立てて



「幸村様のこと、最後まで守りきれなくてっ、佐助さまと、最後までっいれなくてっ、ごめんなさいっ、」


何度も繰り返す謝罪の言葉。


「きいて、


きゅうと強く抱きしめられて耳元でささやかれた言葉。


突然のそれに、胸にじんとくるその声に、びっくりして顔をあげればふわり笑むあなたがいて


こつり


至近距離でおでこが合わさってそのままの姿勢で紡がれる言葉たち


「俺様こそ、忘れていてしまってごめん。」

少しだけ眉をひそめて。
 悔やんでいる時のあなたのくせ

「俺のこと思い出してくれてすごくうれしい。」

微笑みは、柔らかくとろけそうで
 あたしが好きな表情の一つ

「大丈夫。旦那は俺が最後まで守ったから」

少し誇らしげに
 守ってくれてありがとう

「むしろ俺が、を一人にしてしまって、ごめん。」
 
悲しげな瞳にあたしが移る
 ううん、あなたはずっとあたしのなかにいてくれた。

「一人でずっと怖かっただろ?一人でずっと悲しかったろ?」

でも、そうなったのは自分の失態で
 ほろり、止まっていた涙がまたあふれだして

「もう、大丈夫。俺様が、俺だけじゃなくて幸村もみんな一緒にいる」

今までで一番綺麗に笑った
 ほんとう?ほんとう?うそじゃ、ない?



「これからはずっと一緒にいるから。」


ぽとり再び零れだした涙が優しくぬぐわれる。

本当に目の前。

すぐそこの笑顔はあたしを見て

あたしを映して

きれいに

あのときよりもずっと綺麗な笑みで

「っ、う〜〜」

ぼたぼたと溢れる涙。

目の前でとても楽しげに笑う彼。




嬉しくて、嬉しくて、

もう一人じゃないことが

楽しみで、楽しみで

これからをこの人たちと作って行けることが。



ぬるり

瞑っていた目元が柔らかい何かでぬぐわれる。

生温かいそれに驚いて目を開ければ、

楽しげに、少し悪戯をしでかしたような笑み。

ぺろり微かに出ていた舌を引っ込めて佐助は笑う。

「涙、止まった?ちゃん」


そこでようやっと先ほどのが佐助の舌であると気づいて、かあと顔が赤くなるのがわかった。



「っ、さ、さすぇええええ!!そ、そのような、破廉恥、なことおおお!!??」



辺りに突然響いたのは大きな声。

それは主のもので。

驚いてそちらを見れば顔を真っ赤にした幸村。

その後ろにほっとした顔をしている小太郎。

呆れた顔をしているのは元就で、にかりと笑っている元親。

政宗はにやにやと楽しげに口を釣り上げていて。


「っ、!」

佐助に縋りついていることにいまさら気づいて慌てて距離を取ろうとしても、佐助の力は強く離れられなくて。


「逃げないでよ、ちゃん。」


耳元、先ほどとはまた違う声色。

まるで誘惑するかのようなそれ。


「っ、」


「そこまでにして置きたまえ。」


「松永、さんっ、」

「この子がここにいる間は私が保護者なのだよ。」

「そう簡単に手を出せると思わないことだな。」


あたしを後ろにかばいながら、話す彼はとても、とても、楽しげで。



「ちょ、松永せんせ、それはないんじゃ・・・」


「この子は大事な親戚なのだよ。」


「ええと・・・」

ちゃん、こっちおいで。」

手を差し出されて少しだけ戸惑って、でも松永さんは特に止める気はないようで。

、おいで。」

ふわり笑う佐助の顔に、

「こちらに

幸村の優しげな声に。

小太郎の眩しげな表情に


「「「おかえり」」」



みんなの声に




「っ、ただいまっ、」



全力で足を踏み出した。





「おさ、おさ、っ、佐助、さまっ、あたし、はっ、」


ぽろぽろと零れる滴が俺の服を濡らして。

、」

「あ、たしもっ忘れてたんですっ、ごめんなさいっ」

何度も謝る声はじんと胸に響いて。



「幸村様のこと、最後まで守りきれなくてっ、佐助さまと、最後までっいれなくてっ、ごめんなさいっ、」


名前を呼ぶたびにおびえるように体をすくませる君がいとおしくてたまらなくなった。

「きいて、


ぎゅう、とその体を抱きしめて、強く、でも痛くないように力を入れる。

耳元で囁くように言えば驚いたのだろう、顔が上がる。

俺と目が、交わる。

その表情が可愛くて、可愛くて思わず笑みが漏れる。

こつん

おでこを合わせて至近距離で話す。

「俺様こそ、忘れていてしまってごめん。」

大切な君のこと大好きな君のこと
 その瞳に映れることが、嬉しい。

「俺のこと思い出してくれてすごくうれしい。」

もう、逢えなかったのかもしれない。
 でも、逢えた。きみに。

「大丈夫。旦那は俺が最後まで守ったから」

思い出した記憶の中、大事な主。
 君と一緒に守った人。

「むしろ俺が、を一人にしてしまって、ごめん。」

一人を怖がる君なのに
 傍についてあげないといけなかったのに。

「一人でずっと怖かっただろ?一人でずっと悲しかったろ?」

君を一人にしてしまった。
 一人で逝かせてしまった。

「もう、大丈夫。俺様が、俺だけじゃなくて幸村もみんな一緒にいる」

そう、君をもう一人にはしない



「これからはずっと一緒にいるから。」


この命尽きるまで、君が許してくれる限り



ずっと、君と、君のそばに





※※※
次でラスト!







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